リックテレコムWeb雑誌書籍展示会・セミナー 会社案内個人情報保護方針採用情報

テレコミュニケーションコンピューターテレフォニーCOMPASS

テレコミュニケーション

テレコミのご案内
TOPへ戻る
編集コンセプト
2012年発売号一覧
2011年発売号一覧
2010年発売号一覧
2009年発売号一覧
2008年発売号一覧
2007年発売号一覧
2006年発売号一覧
2005年発売号一覧
2004年発売号一覧
2003年発売号一覧
2002年発売号一覧
2001年発売号一覧
インタビュー集2012
インタビュー集2011
インタビュー集2010
インタビュー集2009
インタビュー集2008
インタビュー集2007
インタビュー集2006
インタビュー集2005
インタビュー集2004
インタビュー集2003
インタビュー集2002
インタビュー集2001
お問い合わせ先



広告掲載料金
広告掲載企業
2011・2012年記事広告一覧
連載記事広告一覧
2010年記事広告一覧
2009年記事広告一覧
2008年記事広告一覧
2007年記事広告一覧
2006年記事広告一覧
2005年記事広告一覧
2004年記事広告一覧
2003年記事広告一覧
2002年記事広告一覧
お問い合わせ先


セミナーのご案内
セミナースケジュール
お問い合わせ先



テレコミTOP編集コンセプト購読のご案内広告のご案内
 


2001年12月号

NTTコムウェア:松尾勇二 代表取締役社長
8000人の技術力で民需獲得を推進
VoIPテコに3年後売上高4500億円へ
プラットホーム事業にも勝算あり

昨年11月にNTTコミュニケーションウェアから社名変更してちょうど1年。同時に打ち出したキャッチフレーズ「Big IT」には、同社が提供するIT技術でユーザー企業のビジネスを大きくしたいとの思いが込められているという。9000人社員の8000人がSI技術者という巨大IT集団は、NTTの通信技術をテコに一般市場に打って出る構えだ。本格需要目前のVoIPソリューションを含む戦略システム商品の提案営業に注力し、3年後には売上高4500億円を目指す。「後発ゆえのチャレンジ精神で勝機をつかむ」と意欲を示すNTTコムウェアの松尾勇二社長に話を聞いた。

Profile

松尾勇二(まつお・ゆうじ)
1964年東京大学工学部卒業、電電公社入社。技術企画部長、ネットワーク高度化推進本部長、関東支社神奈川本部長を経て、94年取締役・資材調達部長。96年同九州支社長。同年常務取締役。99年NTT東日本副社長・法人営業本部長。2000年6月NTTコミュニケーションウェア社長。同年11月NTTコムウェアに社名変更、現在に至る。41年生まれ。岐阜県出身。

――まず最初に、ブロードバンドが進む通信市場の動向をどのようにみておられますか。

松尾 ちょうど今回のインタビューの3日前ですが、日本よりも高速インターネットが普及している韓国を訪問する機会があり、全人口の約5割がインターネットを利用しているうち、半数でADSLなどの高速インターネット接続が普及しているという様子を自分の目で確かめてきました。気になる利用方法ですが、若年層によるエンターテインメント系のオンラインゲーム利用だけではなく、オンラインバンキングやショッピングなどの活用が日常生活の中に浸透している状況です。特定のアプリケーションがヒットしてブロードバンド化するのではなく、回線もADSLだろうが、光ファイバーだろうが、スピードが速くて料金が安ければ堰を切ったように生活や経済活動での利用が行き渡ることは間違いないようです。早晩、日本でも同じような状況になると実感しました。

――日本では、まだインターネットのサービス品質やセキュリティ面での不安は拭えないようですが。

松尾 その点では、やはり韓国でもBtoBよりはBtoCでの普及の波が先行して押し寄せているのが現状のようですが、サービスプロバイダーやコンテンツプロバイダーのビジネスモデルの観点から学ぶべきものはありますね。

仕掛け作りがコアコンピタンス

――通信ビジネスの軸足がこれまでのインフラ提供から、今後はソフト系、端末系へとシフトしていくといわれていますが、御社におけるビジネスモデルの変化と基本スタンスをお聞かせ下さい。

松尾 当社としては、コンテンツそのものを制作したり提供するビジネスモデルは考えていません。むしろ、そうしたネットワークの仕組み作りに取り組んでいくことが基本です。
 10月に開催された総合通信展示会「CEATEC JAPAN 2001」で「ブロードバンド・ポータル・プラットホーム」や、ブロードバンド対応情報端末制御装置「L-Box」を出展しました。ブロードバンド・ポータル・プラットフォームは動画像に加え、コンテンツの登録・管理・検索機能やコミュニティ形成機能を備えたWebサービスサイト構築をサポートするソフトウエアプラットホームです。一方のL-Boxは、情報家電コンセント機能を有し、家庭やSOHO内の各種情報端末を統合して、携帯電話や電話による音声で家の外からでも家電製品への制御を実現するものです。
 これらはネットワークの仕組み作りの過程で生まれたものです。もともと当社にはこうしたネットワークの仕掛けを開発する体質が備わっているので、これらを含めブロードバンドを支える仕組みや技術を提供できることが強みだといえます。

――御社の現在の事業構成を教えて下さい。

松尾 顧客セグメントでみるとNTT関連が80数%、残り10数%がNTTグループ以外の事業売り上げとなっています。NTTグループ外でのビジネス開拓を経営課題に掲げており、売り上げ構成比も2003年度には40%まで拡大していきたいと考えています。
 というのも、NTTの電話交換機向け通信ソフトの事業は、IPネットワークへのシフトによって交換機投資が縮小していくのに伴い、ソフト開発の受注も少なくなっていきます。一方のNTT社内情報システム業務も、かつてのようなメーンフレーム中心のシステム構築から、分散処理型でいっそうコストダウンが可能になってきました。そうしたNTT業務自体の構造変化が当社の売り上げにも響いてくるわけです。

――需要の変化がコアコンピタンスの機軸に影響することはないですか。

松尾 当社の技術の強みは、IT業界すべての領域を幅広くカバーできる点にあります。多くのコンピューターソフト会社では、メーンフレームのOSからUNIX、Linux、Java、パッケージソフトなどオープン系の情報処理技術へ経営リソースをシフトしています。当社の場合、それらをすべてフォローできるうえに通信系ソフト技術を併せ持つ技術領域の広さが他社と大きく違う点です。社会のあらゆるシーンでネットワークが欠かせない状況からみて、今後のビジネスチャンスに即応できる差別化ポイントになるのです。情報通信技術そのものは新しくなっていますから、そのためのスキルアップは必要ですが、NTT業務で培った技術を一般市場に生かしていくというコアコンピタンスは変わらないのです。

連続するビジネスチャンスを追う

――今年のCEATECでは、L-Boxやモバイル活用技術などの個別アプリケーションをアピールしていましたが、今後の事業展開の方向性を示した展示なのでしょうか。

松尾 事業の方向性の一端ではあります。ただ、当社のビジネスの主流はそうしたアプリケーションやプロダクトではなく、ネットワークのソフト開発をベースとして広く提供できるプラットホームサービスのような汎用性に特徴があります。
 ブロードバンド時代というのは、ある日突然にネットワーク自体が変わるというものではなく、連続的な変化で高速・大容量化が進んでいくと思われます。その時々に必要なネットワークの仕組み作りを手がける需要が喚起されるわけです。
 かつては電話の64kbpsのナローバンドから、光ファイバーによる数十Mbpsのブロードバンドに一気に進むイメージを描いていた時期もありましたが、現実にはその間をADSLやCATVが段階的に満たす流れになりました。そのほうがビジネスチャンスとして恵まれているといえます。なぜなら、電話交換機による音声サービス中心の事業から、パケット交換機を導入しデータ通信サービス事業を立ち上げるには巨大な先行投資の大きなリスクが伴うため、NTTのような巨大資本に限定されるわけですが、その間を埋める連続的な需要が発生することで、小回りの利くベンチャー企業のチャレンジが可能な市場環境が創造されています。韓国のブロードバンドはその成功例ですね。

――NTT以外の顧客対象としてどの層に焦点を当てていくのですか。

松尾 その分野はまだベースが小さいわけですから、今の段階では特定の業種にウエートを置く状況にまでいたっていないのが率直なところです。今後、事業開拓の方法としては、@合弁事業として出資したうえで当社が開発した通信システムやソリューションを提供していく、Aパートナー企業と連携してエンドユーザーにシステムやサービスを提供する事業提携、BこれまでNTTからの受託形態と同様に、一般市場からもアウトソーシング事業として受注していく――の3形態で当面の市場開拓に取り組んでいく考えです。

モバイル市場に新技術を投入

――モバイル分野でも技術開発の成果をアピールされていますね。

松尾 はい。その1つは、個人が携帯するパソコンやモバイル端末から出される要求に対して、インターネット上のさまざまなサービスを組み合わせて、利用者の代理人(エージェント)となって自動的にフィードバックするJavaベースのミドルウエア「TeaTray」です。
 CEATECのデモでは、TeaTrayを実装したラジコンカー2台を利用し、携帯電話を自動車キーに仕立て、キーロック解除時の乗車者確認をしてみせました。また、自動車の衝突時、車載センサーと連動して破損箇所などの情報を自動収集し、その事故情報をカーディーラーや家族、代替交通手段手配先に自動的に通知したり、個人の利用履歴にあった交通手段を選択、手配する想定で紹介しました。
 このモバイル技術については、モバイルベンダーや自動車メーカーも含め、あらゆるサービスプロバイダーが当社の顧客対象になります。

――キャリア向けビジネスの中でも、特にVoIPへの関心が高まっていますが、御社の基本スタンスと具体的な取り組みをお聞かせ下さい。

松尾 VoIPについては、音声、画像、データの統合による大幅なコストダウンばかりでなく、アプリケーションの可能性も広げ、ビジネスユース、コンシューマー向け両面から次世代ネットワークの目玉になるビジネスだと期待しています。当社は自ら、国内外29拠点をIP網で接続し、社内通話のVoIP化で最大70%のコストダウンを実現したノウハウがあり、一般企業への導入実績もあげています。これに加え、通信キャリア向けVoIPソリューションとしては、開業以来好調にユーザーを獲得しているフュージョン・コミュニケーションズの事業展開にも寄与しています。
 さらに、今年9月にリリースした新たな取り組みとして、音声、電子メール、Webなどの顧客チャネルをIPネットワークに統合した「VoIPコンタクトセンタソリューション」において、離れた場所にあるサテライトコンタクトセンターを結んだ日本初のVoIPによるバーチャルコンタクトセンターを構築しました。その納入第1号がNTTグループのテレマーケティング会社のNTTダイナミックテレマで、実際に10月から稼働しています。

――その仕組みはCEATEC会場でも実演してアピールされていましたね。

松尾 ええ。来場者の注目を集めビジネス案件もいくつか出てきています。Webや電話で商品販売アウトソーシング事業を展開するメーンコンタクトセンターとサテライトコンタクトセンター、在宅オペレーターのホームコンタクトセンター間をVoIPで結び、あたかも同一のセンターで顧客対応している様子を実際にライブでデモンストレーションしました。これまでのような設備投資が不要で人材、場所などのリソースも合理的に活用でき、経営効率を格段に向上させる点がポイントです。
 今後はテレマーケティング会社をはじめ、金融、証券、生命・損害保険、通信会社、通販、製造業などあらゆる業種を対象にコンタクトセンターの設計、構築から保守・運用まで、顧客ニーズに最適なソリューションを提供します。

――VoIPは、コンタクトセンター以外にも企業によってさまざまな適用が見込まれますが、御社の提案する主なアプリケーションをご紹介ください。

松尾 例えば、公衆網/PBXの音声を融合したPCビデオ会議を実現するビデオカンファレンスがあります。会議参加メンバーは、互いの映像や会議資料を閲覧できるなど、充実したビジネスコラボレーションを低価格で提供するものです。
 その発展型としては、音声・画像・文書などの複数の情報をインターネット上で統合し、顧客間のコミュニケーション環境を提供するインターネットコラボレーションもあります。  また、受付システムでは、VoIP化されたイントラネット上で来訪者受付端末を統合することで、自席にいながら音声や映像による来訪者の応対が可能になります。

――キャリア向けではどんなVoIPソリューションメニューを揃えているのですか。

松尾 当社のキャリア向けソリューションの特徴は、一口でいえば通話時の音声品質の高さにあります。当面、主力システムとして力を入れているのは、@電話網とIP網の双方の接続機能を持ったソフトスイッチ「Class4 Softswitch」、A簡略版加入者交換機能を持ったソフトスイッチ「Pure IP Class5 Softswitch」、BIPネットワーク上の各種通信サーバーと連携し、VoIP、メール、チャット、映像配信、ファイル転送などの通信手段を複合的に組み合わせて高度なコミュニケーション環境を提供する「IP Communication Manager」、C国内外でのIPネットワークに関する豊富な知識と運用実績でテレコムビジネスを強力にサポートする「XCarrierPro for VoIP」(VoIP OSS ソリューション)――などがあります。

的確な提案営業力が命運分ける

――NTTグループ会社というブランドイメージが、逆にNTT以外のキャリアビジネスの妨げになることはありませんか。

松尾 確かに、顧客によってはNTTグループのライバルの立場にある場合もありますが、NTTコムウェアのシステムを選んでいただけるかどうかは顧客の選択だと思います。当社を選んでいただくための鍵は、1つは技術力、もう1つは的確にソリューションを提案できる営業力だと考えています。

――当面の営業力強化に向けた取り組みをお聞かせ下さい。

松尾 実は当社にとって営業体制の充実が大きな経営課題でもあるのです。もともとNTTの通信ソフト業務のエンジニアと情報システム担当SIが分社化して発足した会社ですから、社員9000人のうち8000人が技術者というのが実態です。NTTの技術力に裏打ちされたIT集団というのは大きな強みでもありますが、裏を返せばその技術力を広く売り込んでいくためには、今後いかに営業体制を確立するかに命運がかかっているといえます。
 具体的な取り組みとしては、今年までにようやく約1000人体制まで整備してきましたが、さらに今年度中には2000人規模にまで拡充する考えです。基本的にエンジニアが営業スキルアップに取り組む方法によって、他社にない技術ノウハウを持って提案営業ができる体制を固めるというわけです。その際にポイントとなるのは、従来のような単品売りの営業にとどまらず、顧客企業の経営戦略と事業内容を理解してニーズに応えられるITソリューションの提案です。昨年11月に顧客別営業体制を敷きましたが、まだまだ潜在ニーズを掘り起こすためにはコンサルティング機能を充実させる必要があります。
 他方、これまでハードベンダーとしてパートナーだった企業とのアライアンスで新規販売チャネルを開拓していく共同営業の方法も今後重要になってきます。

――中長期的な売り上げ見込みとしてはどのくらいの目標を掲げていますか。

松尾 先述したように、2003年度にはNTTグループ外の構成比を4割まで引き上げ、売り上げ規模として4500億円を目標に掲げています。そのうち一般市場では約2000億円を見込んでいます。
 一般市場でのビジネスということでは、当社は後発ですが、メーンフレームベンダーのような過去の資産や成功体験を引きずることなく顧客にとってのベストソリューションを提供できますから、勝算はあると思っています。そのためのソリューション群は整いつつありますが、急速に進化する市場ですから、最新のITをいち早く取り入れて商用サービスとして市場投入する迅速さが肝要だと思います。

(聞き手・小野憲男)
 

リックテレコムメール配信サービス


 
Copyright 2003-2008 RIC TELECOM,All Rights Reserved