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2010年1月号

シャープ 執行役員 通信システム事業本部長
大畠昌巳氏
携帯電話市場はこれから上向く
LTEで加速するクラウド化

携帯電話3キャリアに端末を供給し、国内シェア1位のシャープ。
市場が飽和するなか、Android端末やLTE端末、
さらにはIT製品の通信対応なども視野に入れている。
執行役員通信システム事業本部長の大畠昌巳氏に
携帯電話事業戦略を聞いた。

Profile

大畠昌巳氏
(おおばたけ・まさみ)
1955年12月18日生まれ。78年3月広島大学工学部卒業。同年4月シャープ入社。2003年2月通信システム事業本部 パーソナル通信第一事業部 事業部長。04年10月通信システム事業本部副本部長兼パーソナル通信第一事業部事業部長。06年4月情報通信事業本部本部長。08年9月海外営業本部 副本部長兼SESC(夏普商貿)情報通信分社総経理。09年4月通信システム事業本部執行役員本部長、現在に至る

国内の携帯電話市場が冷え込み、端末メーカーが厳しい状況にある中で、シャープはシェア1位と好調を維持しています。冬春モデルは3キャリアから14機種と過去最多の機種数を投入しますが、どのような特徴があるのですか。

大畠 今回のモデルでは、機能とデザインの両面を強化しています。
 まず、機能面では特にデジカメを強化しており、3キャリアから1210万画素のCCDカメラを搭載した“AQUOS SHOT”が揃い踏みになりました。単に画素数が高いだけでなく、高速100連写や、あらかじめ登録した人に優先的にピントを合わせる個人検出といった機能も充実しています。
 携帯電話とデジカメを別々に持つ方もいますが、携帯1台で十分という方は確実に増えています。そうしたユーザーの間では撮影した画像を加工・整理するアプリケーションに対する需要が高まっており、メーカーの間では画素数よりも、どちらかというとアプリケーションに競争が移っています。当社ではアルバムやフォトビューアー機能などを取り入れ、アプリケーションについてもキャッチアップしています。
 一方、デザイン面では、薄型化を進めるとともに、本体表面にイルミネーションを実装するなど高級感を演出しているのが特徴です。

以前はハイエンドモデルが中心でしたが、今回は14機種のうち8機種がミドルレンジとなっています。

大畠 この数年で状況は様変わりしており、当社の推計では09年度上期に出荷された端末はミドルレンジが55%を占める一方、07年度は50%を占めていたハイエンドが30%に減少しています。
 販売奨励金による販売方式の時代は、ハイエンドでも発売から半年も経たないうちに価格が下がり、場合によっては1円やゼロ円で購入できました。しかし新販売方式では、ハイエンドはいつまで経っても価格が高いままです。しかも不況の影響でお客様の財布の紐は固くなっています。「どうしても欲しい」という方は発売直後に購入されますが、1カ月もすると売れ行きが落ちてしまいます。
 これに対し、ミドルレンジは発売直後の勢いこそありませんが、コンスタントに売れ続けるので、結果的にはハイエンドより台数が多く出ます。
 数年前のミドルレンジは薄さやデザインが特徴でしたが、現在は800万画素カメラや3.4インチ液晶など少し前のハイエンド並みの機能を備えていながら、手頃な価格で手に入れられることが人気につながっています。

では、今後はミドルレンジが中心になっていくのですか。

大畠 端末メーカーにとって、ハイエンドはフラッグシップモデルとして欠かせません。しかも、ハイエンド向けに開発した機能が、ミドルレンジにシフトするという流れになっています。そのため、両方とも必要だと考えています。

マルチキャリアによるメリットも

これだけのラインナップを揃えようとすると、開発コストの負担増などのデメリットも出てくるのではありませんか。

大畠 日本は通信キャリア主導による販売方式で、キャリアによって通信規格もデザインも異なります。社内ではすべて共通というわけにいかず、キャリア別の縦割り組織になっているので非効率であることは否定できません。
 しかし、売れ行きには波があるし、すべての商品がヒットするわけではないので、3キャリアに端末を供給している方が経営上は有利です。また、カメラ技術や液晶、アプリケーション、ミドルウェアなどは横展開できます。このため、デメリットよりメリットの方が大きいといえます。
 たくさんのモデルがあるように見えますが、アクセサリーブランド「Q-pot.」とのコラボレーションで板チョコをイメージした「SH-04B」のように、ベースモデルに特長あるデザインを施したデザイン端末も増えています。

他の端末メーカーから見ると、シャープは「商品化が上手くて早い」そうです。以前、松本雅史副社長はシャープの商品作りの特徴を「半歩先を行く」と表現されていました。シャープの強さの源泉はどこにあるのですか。

大畠 当社の創業者である早川徳次は、「他社がまねをするような商品を作れ」と言っていました。他社にないものを先に出すことが、シャープのものづくりにおけるDNAといえます。しかし過去には先を行き過ぎて時代が追いつかず、失敗した商品もあったので、「一歩先」ではなく「半歩先」と言っています。
 携帯電話に関しても、他社が800万画素のときに1000万画素に対応したり、他社がCMOSカメラのときに、より画質の美しいCCDカメラを搭載するなど、ちょっとずつ先を行くようにしています。こうしたことができるのは、社内にデバイス部門があり、新しいデバイスをいち早く採用できるからです。
 当社は携帯電話では後発なので、他社と同じことをしていたのでは勝てません。この認識はいまだに変わっておらず、社員全員が危機感を持っているし、プライドもあるので、「リスクがあるからやめよう」と言う人はいません。そこが他社と違うところではないかと思います。

新しいエコシステムに貢献

先日の「携帯電話事業説明会」では、今後の動向としてスマートフォンの急速な台頭を指摘されていました。

大畠 通常の音声端末はこれからも続いていきますが、市場が飽和している中で、次の大きな動きがあるとにらんでいます。
 もともとスマートフォン的な端末は日本にもあり、アーリーアダプター層には受け入れられてそれなりにヒットしても、「一皮むける」ところまでは行きませんでした。
 ところがiPhoneはアップルのブランド力もあるのでしょうが、一般ユーザー層にまで裾野を広げています。ユーザーはiPhoneによってスマートフォンの楽しさを認識し始めていることから、iPhoneをきっかけに国内でもスマートフォン市場が盛り上がる可能性は十分にあると期待しています。

iPhoneの登場を契機に、通信キャリアに依存しないアプリストアなど新たなビジネスモデルが生まれています。端末メーカーの立場からどのように見ていますか。

大畠 iPhoneのようにアプリケーション市場が拡大すると、端末メーカーは、端末とアプリの両方で訴求することができます。端末とソフトウェアが充実すると新たなユーザーの獲得につながり、メーカーは端末の売上だけでなく、アプリの売上も確保できるようになります。
 日本は通信キャリア主導のビジネスモデルなので、どこまでできるかはわかりませんが、この新しいエコシステムの中で当社も貢献できることがあるのではないかと考えています。

スマートフォン市場の拡大をにらみ、Android OSを搭載した端末を2010年春に投入する計画ですが、具体的にどのような端末になるのですか。

大畠 すでにAndroid端末の開発に入っていますが、どのようなものになるかはノーコメントです。
 ただ、我々日本メーカーがスマートフォンを手がけるとなると、通信キャリアのサービスにも対応した端末でなければヒットしないだろうし、そこがミソになるだろうと思っています。

つまり、国内市場に合ったAndroid端末になるわけですね。

大畠 海外では通信キャリアに関係のないオープンなサービスがすんなり受け入れられます。これに対し、日本は通信キャリアの独自サービスの歴史があるので、それに対応していない端末はユーザーにとって使いづらいのではないでしょうか。

LTEで携帯のクラウド化が加速

2010年後半にはドコモがデータ通信分野でLTEサービスを開始します。どの時点でLTE端末を発売するのですか。

大畠 LTEは当初データ通信からスタートされますが、当社がLTEに対応する端末を投入するタイミングは未定です。データ通信専用になるのか、スマートフォンになるのか、高機能端末になるのかもこれからです。
 LTEで通信速度が高速化すると、ちょっとしたサービスでも通信キャリアのサーバーで管理するようになり、携帯電話のクラウド化が今よりさらに加速すると予想しています。そうなったときに、携帯電話は入出力装置としての重要性が高まっていきます。クラウド化に適した入力装置としてはカメラやタッチパネル、センサー、出力装置としては液晶があります。それらのデバイスを当社は内製できることが、LTEでは強みになります。

LTEは国内3キャリアとも採用を予定しています。共通化することで端末作りにおいて変化はあるのでしょうか。

大畠 現在、ドコモの「オートGPS」やソフトバンクのWi-Fiのように、キャリアごとに注力するサービスが異なっています。LTEで3キャリアの通信方式が共通になってもこの状況は変わらず、個々に特色のあるサービスを出していくと思うので、個別に対応していきます。それでも、ベースとなる通信方式が一緒になることで、端末メーカーとしての負担は軽くなります。

2010年の携帯電話市場は09年よりやや上向くとの見通しを立てられていますが、具体的にはどのような需要がありますか。

大畠 まず、最も加入者のいるドコモが2年間の継続利用を条件とする料金プランを開始してから丸2年が経過し、買い替えの時期を迎えることが大きいと見ています。
 もう1つはスマートフォンに代表される2台目需要です。いつまでもiPhoneの独壇場というわけにはいかないので、他社からもよい端末が出てくるでしょう。
 加えて、デジタルフォトフレームのように従来の電話機とは異なる新規市場が期待できます。当社でもコードレス電話やFAXの他にデジタルフォトフレームとしても利用できる「インテリアホン」を提供しています。また、モバイルインターネットツール「ネットウォーカー」や電子辞書などのIT商品も手がけていますが、それらに通信機能が搭載されるようになれば面白い市場になるし、当社もぜひ参入しなければなりません。市場調査をしながら可能性を模索しているところです。
 さらに、2011年以降はLTE端末が登場します。過渡期には現行の端末に上乗せされる形になるので、市場にはプラスになると見ています。
 景気動向にもよりますが、こうしたいろいろな流れが出てきていることから、09年が底ならこれ以上落ちることはなく、あとは上がっていくしかないと考えています。

(聞き手・土谷宜弘)

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