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Interviewインタビュー

2016年9月号

ビッグデータ、IoT、AIは一体で進化
「情報爆発」がイノベーションを生む

喜連川 優 氏

喜連川 優 氏
(きつれがわ・まさる)
1983年東京大学工学系研究科情報工学専攻博士課程修了、工学博士。情報処理学会前会長、日本学術会議情報学委員会委員長。データ工学研究に従事。内閣府最先端研究開発支援プログラム中心研究者。ACM、IEEE、電子情報通信学会ならびに情報処理学会フェロー。国立情報学研究所所長。東京大学生産技術研究所教授

国立情報学研究所所長
東京大学教授
喜連川 優 氏

日本のビッグデータ研究を牽引してきた、国立情報学研究所(NII)の喜連川優所長に、IoT(Internet of Things)、AI(人口知能)の最近の新たな展開と、今後の研究の方向性を訊ねた。国の研究所としては先を見据えた基礎的な研究を進めながら、同時に産学連携もバランスよく推進したいという。

IoT、AI、ビッグデータが注目を集めていますが、どうお考えですか。

喜連川 最近のITのキーワードは、ビッグデータとIoTとAIの3つです。ただ、この3つは、遠目から見るとほとんど同じことを微妙に異なる視点で表現している言葉とも言えます。IoTはビッグデータを生み出す生成源であり、AIはビッグデータを食べて価値を出すところを担当すると見なせます。2012年ごろにはAIとは呼ばずデータアナリティクス(Data Analytics)という言葉が頻繁に利用されておりました。いずれにしましても、この3つのキーワードはビッグデータを中心に据えた、互いに強く関連する言葉と考えております。
 米国は2012年「ビッグデータ研究開発イニシアチブ」を発表した際、「ビッグデータが科学を、産業を、そして社会を変える」というメッセージを発出しました。それから4年後、今年5月にNSF(アメリカ国立科学財団)はアメリカの研究開発における次のビジョンを発表しましたが、そこでも「harnessing data for science and engineering」という言い方をしており、データの利活用が科学においても工学おいても一丁目一番地、スタート地点だという見方をしているわけです。
 我々も2004年から「情報爆発」という言葉を作り出して、最大規模の文科省特定領域研究を推進致しましたが、そこでのポイントは今までにない大量の情報をうまく活用していくのが次の時代のITだという言い方をしてきました。それから8年後に米国が「ビッグデータ」と言いだしたわけです。目指す方向感は同じです。今後の大きな流れは「データ」に向かっていると考えています。
 IoTというのは任意のものにコンピューターを付けようという発想です。何のためにそんなことをするのかといいますと、多くは周辺環境情報をセンシングすることが最大の目的です。莫大なデータをかき集める、データを収集するというファンクションがIoTの主たる役割になっているわけです。
 もちろん、IoTを利用してアクチュエイトする、つまりIoTデバイスに向けて「こうしろ」という命令を出せなくてはいけないわけですが、先般のテスラのハッキングに見られるように、まだまだセキュア基盤が完璧に安定しているわけではないので、現状ではセンシングデバイスとしての位置付けになっていると言えましょう。

AIは最近、大きく進歩を遂げているといわれています。

喜連川 碁で勝利を飾って以来、急にAIという言葉が利用されるようになりましたが、その前までは機械学習(マシンラーニング)という言葉が利用されていました。そもそもデータのないAIはあり得ません。データを与えることによりAIは勉強して賢くなるわけです。勉強する対象がなくて賢くなる人が居ないのと同じで、データとAIというのは切っても切れない関係にあります。即ち、ビッグデータはAIの食糧源です。データを集め、それを解析し、解析結果を実世界にフィードバックする、これはまさに不可分な一連のプロセスです。

ここにきてAIが注目されているのは、大きな技術進化があったからでは。

喜連川 一番大きな変化点は、従来に比べて圧倒的に大量の学習データを使うことが出来るようになったこと、つまりビッグデータの登場です。最近、流行になりましたディープラーニング(深層学習)による画像解析も、昔は学習のための画像データはほんの小さなものでしたが、今は膨大なイメージがFlickr等で利用できるわけです。CGM/UGC(コンシューマーが作り出すコンテンツ)を利活用可能になった世界が生まれました。大量データが大きな差別化を与えており、この状況が一番大きなドライバーになっていると言えます。逆に言いますと大量のデータを得ることが困難な分野はなかなか最新のテクノロジーが活躍出来るとは言えません。

データ量が桁違いに圧倒的な量で増えたということですね。

(聞き手・土谷宜弘)
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