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Interviewインタビュー

2017年12月号

IoTの幻滅期をいち早く経験した
シスコは他社の1年先を行く

鈴木和洋 氏

鈴木和洋 氏
(すずき・かずひろ)
シスコシステムズ 専務執行役員 戦略ソリューション・事業開発 兼 東京2020オリンピック・パラリンピック推進本部担当。1983年、慶應義塾大学 経済学部卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。通信事業者向けの営業部長などを経て、日本チボリシステムズに出向し代表取締役社長に就任、その後ダブルクリック 代表取締役社長 兼 CEOを務める。その後、日本マイクロソフト 執行役を経て、シスコシステムズに入社。趣味はゴルフと音楽鑑賞

シスコシステムズ
専務執行役員
鈴木和洋 氏

シスコシステムズでIoT事業を統括する鈴木和洋専務は、IoTは“幻滅期”に突入したと見る。ただ、これは新しいテクノロジーが必ず通らなければならないプロセスだ。鈴木氏は、IoTがこの壁を乗り越え、“本物”になるためには、2つの課題を突破する必要があると説く。3本柱でIoTに取り組むシスコの鈴木氏にビジネス戦略を聞いた。

国内のIoTの動向について、どのように見ていますか。

鈴木 新しいテクノロジーの成熟度や採用率を示すガートナーの「ハイプ・サイクル」があります。IoTは、昨年ぐらいまで“「過度な期待」のピーク期”にありましたが、ガートナーの方と先日お会いしたとき、「IoTは“幻滅期”に入ったかな」と話していました。私もまさに、そうした状況にあると思っています。
 特にここ2〜3年、IoTの実証実験が数多く行われ、メディアを賑わせてきました。バラ色の世界を期待して、皆さんIoTに取り組み始めたわけです。しかし実際にやってみた結果、「そんなに簡単ではない。実用化までは、まだまだ距離がある」と、課題が浮き彫りになってきたのが今の状況だと考えています。

具体的には、どんな課題に直面しているのでしょうか。

鈴木 大きく2つの課題があると思っています。
 1つは、データを取ってくる部分における課題です。
 いろいろなモノをネットワークにつなぎ、様々なデータを収集。それを分析して、予防保守などを実現するのがIoTです。このうち、分析のためのAIなど、華々しいアプリケーションの部分については、しっかり出来るようになってきています。
 ところが、そのアプリケーションまで、データをきれいに持ってくることが、意外と大変なことに皆さん気付き始めました。
 IoTでは、データを効率的に、しかもセキュアに取得しなければなりません。また、汚いローデータのままでは処理できませんから、データを正規化する必要もあります。さらに、エッジで処理すべきデータもあれば、クラウドで処理すべきデータもあり、必要な場所に必要なデータを移動させなくてはいけません。
 ユーザーから見たとき、あくまで欲しいのは、AIから出てくるビューティフルなアウトプットですが、こうした地味な縁の下の力持ち的な部分に、思った以上の工数とコストが掛かることが分かってきました。

IoTの最も基礎となるコネクティビティの部分が課題となっているのですね。何か良い解決策はありますか。

鈴木 手前味噌になるのですが、シスコは2017年6月、「Cisco Kinetic」というIoTプラットフォームを発表しました。Kineticはまさに、データを効率的に取得し、集めたデータを正規化し、正しい場所に運ぶ大変さを軽減できるソリューションです。国内でも年内に提供開始します。

IoTは1社ではできない

2つめの課題は何でしょうか。

鈴木 「IoTは、1社では何もできない」と言いますが、これを裏返すと、いろいろなところとお付き合いする必要があるということです。その大変さが、2つめの課題だと思います。
 利益の配分はどうするのか、役割分担はどうするのか……。関係者が多ければ多いほど、そうした整理に時間を要します。各社各様の狙いや意図があるなか、それをまとめていくことの難しさが、2つめの大きな課題です。

実証実験の数の割には、商用化が進んでいない背景には、こうした課題があったのですね。

鈴木 想像以上に大変なため、頓挫してしまったケースも結構多いと思います。
 ただ、これは当たり前の話なのですね。どんな新しいテクノロジーも、“黎明期”から“本物”になっていくためには、このサイクルを経る必要があります。当然、中には駄目になるものもあります。課題を克服したものだけが“本物”になっていくのだと思います。

“幻滅期”を迎えているIoTですが、その一方で鈴木専務は、10月に行われた事業戦略説明会で、「IoTは商用化に向けて大きく動き出した」とも発言されています。

鈴木 実は我々は、皆さんよりも早く“幻滅期”を体験していると思っています。IoTに着手したのが早かったこともあり、2年ぐらい前から、先ほどの課題意識を持って、IoTに取り組んできました。
 そのため他社と比べると、我々は1年〜1年半ぐらい前に進んでいると考えています。

一足先に“幻滅期”を抜け出そうとしているということですね。どんな商用化の事例がありますか。

(聞き手・太田智晴)
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