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Interviewインタビュー

2018年1月号

Wi-SUN FANが海外で人気
LPWA市場で世界第3位へ

原田博司 氏

原田博司 氏
(はらだ・ひろし)
1995年、現在の情報通信研究機構(NICT)である郵政省通信総合研究所に入所し、2011年にNICT スマートワイヤレス研究室室長。2014年から京都大学大学院 情報学研究科 通信情報システム専攻 教授(現任)。Wi-SUNアライアンスの共同創業者・理事会共同議長(Board co-chair)であるほか、米IEEE802.15.4g標準化委員会副議長も務める。文部科学大臣表彰 科学技術賞、内閣府 産学官連携功労者表彰 総務大臣賞など受賞歴多数。工学博士

京都大学 教授
Wi-SUNアライアンス 共同創業者
原田博司 氏

全国の電力会社のスマートメーターに採用されている“日本発”のIoT向け無線「Wi-SUN」。あまり知られていないが、海外でも最近、Wi-SUNの採用が加速している。なかでも脚光を浴びているのが、“Wi-SUN版LPWA”といえる「Wi-SUN FAN」だ。なぜ、Wi-SUNはグローバルでも成功の階段を上り始めたのか。Wi-SUNの生みの親である原田博司教授に直撃した。

IoTに注目が集まるなか、様々なLPWAの方式が登場し、マーケットを盛り上げていますが、この現状をどう見ていますか。

原田 いろいろな方式が出てくることは悪い話ではないのですが、なかなか“理想”と“現実”がかみ合っていないとは思っています。実証実験は多く行われていますが、商用化され、ビジネスになっているケースはあまりありません。
 なぜ、このような現状になっているのか。理由をしっかりサーベイし、IoTが次に進むべき道を予測できているかというと、十分とは言えないのではないでしょうか。

あまり深く考えていない人が多いということですか。

原田 長期的な視点で、ビジネスを計画しきれていない気がするのです。
 携帯電話の世代が10年ごとに変わってきたように、通信システムの実用化、商用化は10年が基本です。まず絶対に10年はじっくりと取り組む必要があります。Wi-Fiにしても1999年に始まり、18年掛かって、ここまで来ました。LPWAだけが、3年で済むということはありません。
 また、今まで成功した通信システムは、すべて1000万台以上のユーザーがいる市場がベースになっています。なぜなら、日本のメーカーは1000万台以上のデバイスが出始めて、初めて「ビジネス」だと考えるからです。
 国内で1000万台以上というと、携帯電話が1億台以上、自動車がおよそ5000万台、ゲームが数千万台です。「コンシューマー用の“モノ”に無線機を付ける」といった話は一見華やかに見えるのですが、大体これらに絡まないと1000万台には届きません。現在のIoTの実証はこのような“目先だけの”“見た目のよいもの”が多く、そのため残念ながら、根のあるビジネスとはならないのです。

「過去の歴史に学んでいない」と。

原田 そうです。私が2012年に創業者としてWi-SUNを立ち上げる際は、1000万台導入できる市場からスタートしないと絶対に成功しないと考えました。
 では、1000万台のユーザーを必ず確保できる市場はどこにあるのか。最初はコンシューマーではなくインフラのほうが手堅いと、目を付けたのがスマートメーターでした。スマートメーターの市場がどれくらいあるかというと、東京電力管内だけで約2700万台です。しかも、8〜10年周期で必ず交換需要が発生するので、安定的なビジネスが成り立ちます。
 これだけの市場規模があると、大手メーカーが最初から動き始めます。Wi-SUNの場合、テキサス・インスツルメンツ、ラピスセミコンダクタ、アナログ・デバイセズ、シリコンラボの4社が当初からチップを供給しました。複数のチップベンダーによる競争がなければ、コストは安くなりません。また、2700万台のスマートメーターを1社で作ることはないですから、相互接続が絶対に必要になります。異なるメーカーの製品が相互接続できるようになると、ビジネスに広がりが出てきます。
 さらに、スマートメーターには、99.5%以上の接続率という高信頼性が求められます。この要件を満たせれば、まずコンシューマー用で問題が出ることはありません。
 スマートメーターで成功すれば、基盤となるビジネスモデルを確立できるため、Wi-SUNはまずこの市場を狙ったのです。“あらゆるモノをつなぐ”では結局何もできません。やはり、得意な領域があって、そこから発展させていくことが必要です。

ホームエリアは完成形へ

狙い通り、Wi-SUNは全国の電力会社のスマートメーターに採用されましたが、背景にこんな戦略があったとは知りませんでした。さて、スマートメーターの次のステップの1つとして期待されるのが、スマートホームへの展開です。Wi-SUNは用途ごとにプロファイルを策定していますが、宅内用のプロファイルが「Wi-SUN ECHONET Profile for HAN(Home Area Network)」です。

原田 今までのHANは、電力会社が「Bルート」と呼ぶスマートメーターとHEMS(Home Energy Management System)コントローラー間、そしてHEMSコントローラーと家電間の1対Nの通信をサポートする「Single hop HAN」でした。
 しかし、まもなく1回のマルチホップに対応した「enhanced HAN」もリリースされます。これにより、例えば屋外設置された家庭用蓄電池を経由してEV(電気自動車)と通信するといったことが可能になります。
 また、スリープ状態のバッテリー稼働デバイスを起動するための機能も加わります。このenhanced HANで、ホームエリアはほぼ完成形となります。

スマートホーム市場を本格的に開拓していく準備が完全に整うと。

(聞き手・太田智晴)
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