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Interviewインタビュー

2018年5月号

B2B2Xで広がる可能性
「ミドルB」に価値ある技術を

篠原 弘道 氏

篠原 弘道 氏
(しのはら・ひろみち)
1954年3月生まれ、福岡県出身。78年3月に早稲田大学大学院 理工学研究科 電気工学専攻 修士課程を修了、同年4月に日本電信電話公社に入社。2003年6月にNTT 情報流通基盤総合研究所 アクセスサービスシステム研究所長、07年6月に情報流通基盤総合研究所長。09年6月、取締役 研究企画部門長に就任し、12年6月に常務取締役 研究企画部門長、14年6月に代表取締役副社長 研究企画部門長(現職)

NTT
副会長 代表取締役副社長 研究企画部門長
篠原 弘道 氏

様々な業界のサービス提供者、いわゆる「ミドルB」の“触媒”として、新しい価値の創出を目指す「B2B2Xモデル」への転換に取り組むNTTグループ──。その重要なカギを握るのが、約2500人の研究員を擁する研究所の技術だ。B2B2Xモデル推進のため、NTTのR&D戦略はどう変化し、どんな成果が出ているのか。研究企画部門のトップを務める篠原弘道副社長に聞いた。

IoTやAIなどのテクノロジーが世の中を大きく変革しようとしていますが、社会は今後どうなっていくとお考えですか。

篠原 技術の進展が速いので予測は困難ですが、「こんな社会になって欲しい」という思いは持っています。人間として豊かな生活が送れる社会を作っていくこと──。それが我々の最終目標です。
 そのためには1つ前の段階として、少子高齢化などの様々な社会的課題を解決しなければなりません。また、日本の国力をしっかり維持していくための産業競争力強化も重要ですが、IoTやAIはかなり貢献できると思っています。
 農業を例にとると、IoTでデータを収集することで、ノウハウの形式知化が可能になります。もっと高く売れる農作物を、もっと効率的に作れるようになっていくでしょう。
 世の中に存在する様々なバリアをなくしたいとも考えています。例えば、ハンディキャップをお持ちの方や高齢者の方が、いろいろな活動に参加できるようになる。あるいは、これはAIが中心になると思いますが、訪日外国人や外国人労働者の方の言語や習慣に関するバリアを低くする。
 世の中では「AIと人間、どっちが優れているか」といった話題への関心が高いようですが、我々はあまり興味がありません。人間の生活をもっと豊かにしていくのが、AIをはじめとするICTだと捉えているからです。
 しかも、技術に詳しい人だけが恩恵にあずかるのではない。NTTは「アンコンシャス」をキーワードの1つにしていますが、誰もがあまり意識することなく、上手に使えるようにしていく必要があります。

昔なら「NTTの本業ではない」

そうしたビジョンの下、様々な研究開発を行っていますが、その成果を用いたサービスを提供するのは、NTTグループだけではありませんね。NTTは、「ミドルB」と呼ぶサービス提供者の“触媒”として、新しい価値の創造をサポートするB2B2Xモデルへの転換を図っています。

篠原 昔は“電話”の会社でしたから、人と人とをつなげることを目標としていました。その目標の達成に向けて、例えばテレビ電話で使われる映像符号化の研究開発で「高品質と低ビットレート」を目指した研究があったとしましょう。昔は全く新しい技術がどこかで開発されたとしても、「NTTの本業ではない」と棚に乗せてしまったり、途中でやめてしまうことが多くありました。
 ところがB2B2Xとなると、できた技術はNTTのみならず、通信業界とは関係ない「ミドルB」の方々にご提供することになります。今まで自ら設定していた目標が、「ミドルB」の方々にとって価値ある技術に「目標が変更」されるわけです。それに加え、研究開発の適用先はずいぶんと広がりました。最近はスポーツ脳科学などにも取り組んでいますが、我々の可能性を広げるため、さらに適用先を広げていきたいと思っています。

B2B2Xで、R&D戦略も大きく変わったわけですね。

篠原 「コ・イノベーション」と言っていますが、いろいろな産業界の方々と一緒に研究開発に取り組み、新しい価値を作っていこうとマインドが変化したことは大きなポイントです。結局、各業界のことをよく知っているのは、それぞれの業界の方々。我々だけで研究開発をして産業界の新しい価値を作ることは無理なのです。

「普及を狙え」と口酸っぱく

ここ半年間でもクボタ、日本郵船、日本ソフトボール協会、松竹など、研究所の技術を活用したB2B2XのPoC(コンセプト実証)の事例がかなり増えてきました。だいぶ手応えを感じているのではないですか。

篠原 そうですね。ただ、日ごろから口酸っぱく「PoCだけで終わらせず商用化し、普及を狙え」と言っています。PoCだけでは実証しかできませんが、普及にはコスト感覚や信頼性、運用の問題等への対処が必要となってきます。PoCを目標としている限り絶対に普及しません。
 とはいえ、研究者だけで“ビジネス”はできません。そこでB2B2Xで大きく変わった点としては、早い段階から事業会社と一緒に取り組むようになったことも挙げられます。パートナーの方とコ・イノベーションする段階で、事業会社に参加してもらいます。
 さらに、我々R&Dの力だけではなく、NTTグループにある様々なアセットをうまく組み合わせ、より高い価値を生み出すようにもしています。例えばクボタとは、AIを活用した農業・水環境分野の省力化に取り組んでいますが、NTTグループのハレックスという気象情報会社も一緒にやることで大きな価値の創出を目指しています。

東レと開発した機能素材「hitoe」やファナック等との製造業向けプラットフォーム「FIELD system」と、商用フェーズに入った取り組みも出始めていますが、さらにB2B2Xを加速させていくうえでのポイントは何ですか。

(聞き手・太田智晴)
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