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Interviewインタビュー

2018年2月号

5Gきっかけに“不連続な進化”
自動化が各産業で一気に拡大

中島康之 氏

中島康之 氏
(なかじま・やすゆき)
1982年、国際電信電話(現KDDI)に入社。1987年から同研究所にてMPEG標準化や動画検索・編集技術の研究開発に従事。2007年からKDDI メディアサービス企画部部長としてLISMOなどの音楽・映像サービスの企画・開発に従事した後、2010年 にKDDI研究所 副所長、2011年 にKDDI研究所 代表取締役所長に就任、現在に至る。工学博士

KDDI総合研究所
代表取締役所長
中島康之 氏

デジタル変革の先には、どんな未来がやってくるのだろうのか。「バーチャルとリアルの進化」と「自動化の拡大」の2つの大きな流れがあるとKDDI総合研究所の中島康之所長は指摘する。「KDDIが今後進むべき道に関して、先にいろいろと見ていくのが我々のミッション」という中島所長に、5G時代のデジタル変革と最新の研究開発について聞いた。

デジタル技術が社会に与えるインパクトが、かつてなく大きくなっています。KDDIグループの研究開発をリードする中島所長の目には、デジタル変革によって今後、世の中はどう変化していくと映っていますか。

中島 大きく2つの方向性があると考えています。1つは、バーチャルとリアルが相互に進化していくのではないかということです。
 例えばモバイル決済サービスのAlipayやWeChat Payが普及する中国では、今までの現金から「電子マネーが簡単で便利でいいよね」という社会に急速に変わってきています。リアルでなくても済むものがバーチャル化していく“リアルのバーチャル化”が進展しています。
 また、“バーチャルのリアル化”も進んでいます。ネットショッピングを例にとると、現在は多くの場合、画像とテキストがあるだけです。しかし今後は、バーチャルでも店員と話しながら買い物できたり、VR的な世界も含め、どんどんリアルに近付いていきます。

もう1つの方向性は何ですか。

中島 自動化の拡大です。自動運転車で培われた技術が、農業や漁業、建設業など様々な領域に波及していくでしょう。
 自動運転に何が必要かというと、(1)画像やセンサーによる状況認識と位置の把握、(2)障害物を避けるなどの判断、(3)それに合わせて運転制御するという3つぐらいのステップがあります。
 こうした一連のステップは、別の用途にも使えます。例えば、農業において障害物を避けながら畑を耕して種を蒔くなど、今まで人手でやっていた3K的な仕事がどんどん楽になるでしょう。従来なかなか実現できなかった世界が、自動運転車を1つのきっかけに、一気に広がると見たほうがいいと思っています。
 AIスピーカーもそうです。現在のAIスピーカーはQ&A型ですが、今後は双方向の対話ができるようになります。すると、生活・介護支援ロボットなどにもつながっていきます。

未来を逆算して研究開発

そうしたデジタル変革を支える基盤の1つが5Gですが、5G時代の進化は従来の延長線上にあるのか、それともギアが変わるような不連続的な進化が起こるのか、どちらだとお考えですか。

中島 私は後者だと思っています。これまでのデジタル変革は、人の利用が中心。ビデオが高画質で観られるといった話だったり、シェアリングエコノミーにしてもネット上でのマッチングであり、Webの世界からあまり出ていませんでした。
 しかし、5G時代には不連続な進化が起こり、無人工場や無人店舗など、今までなかったユースケースが本当に可能になるでしょう。
 また、低遅延の5Gとエッジコンピューティングを活用すれば、トータルに遅延時間を短くできますから、工場やロボットなどのリモートオペレーションもミリ秒単位でリアルタイムに行えるようになります。

今後はWebの世界にとどまらず、製造業や農業など、リアルの世界の変革が進むということですね。その5G時代に、KDDI総合研究所はどのような姿勢で臨みますか。

中島 KDDIは通信事業からライフデザイン事業へとビジネスを広げようと、すでにeコマースや保険業務などに取り組んでいます。このように新規分野の開拓を進めていくときには、研究開発にもビジネス目線と技術目線の両方が必要です。
 そこで2016年10月、KDDIグループの研究開発の中核を担ってきたKDDI研究所とシンクタンクのKDDI総研が合併し、KDDI総合研究所ができました。新しい事業領域の調査分析から技術の研究開発まで、一貫してできる仕掛けにしたほうが、スピード感を出せると合併したわけです。
 合併の際には、「Challenge for the future」(豊かな未来への挑戦)というビジョンを定めました。新たな価値の創造により、人に優しい豊かな社会を創っていこうというビジョンです。合併以前、KDDI研究所のビジョンは「Challenge for innovation」だったのですが、もっと“幅広”で行こうということですね。
 具体的に今、注力している主な領域としては、5G、ネットワーク仮想化、コネクティッドカー、IoTセキュリティ、レイヤー横断的なビッグデータ分析技術などが挙げられますが、未来がどうなるかを見て、そこから逆算して何に取り組むかを考えないといけません。
 通信事業者を取り巻く環境が激変するなか、KDDIが今後進むべき道に関して、先にいろいろと見ていくのが我々のミッションと言えます。

5Gと光ファイバーの高速化

5Gの商用化時期が近付いてきましたが、5G時代に期待される世界は、無線技術の進化だけでは実現できません。様々な周辺技術の進化が必要ですが、例えば5Gで無線が高速大容量化すると、それを支えるコアネットワークが「パンクするのでは」という懸念の声も聞こえます。

(聞き手・太田智晴)
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