2013年4月号
初のCATV向けスマートTVに手応え
auショップと連携し地域密着進める
藤本勇治氏
(ふじもと・ゆうじ)
東京大学法学部卒業。1989年2月日本移動通信(現KDDI)入社。2003年4月KDDI執行役員au事業本部au営業本部長。05年4月執行役員モバイルソリューション事業本部モバイルソリューション事業企画本部長。06年4月理事コンシューマ事業統括本部ケーブル事業推進室長、ジャパンケーブルネット取締役。2010年4月 KDDI理事コンシューマ事業本部ケーブル事業推進本部長。2011年4月ジャパンケーブルネット特別理事。2011年6月同社代表取締役社長、ジャパンケーブルネットホールディングス代表取締役社長、現在に至る
ジャパンケーブルネット(JCN)
代表取締役社長
藤本勇治氏
KDDI傘下でCATV業界2位のジャパンケーブルネット(JCN)は、昨年12月から本格的な「スマートテレビ」サービスをスタートした。藤本勇治社長は、出足に強い手応えを感じている。業界トップのジュピターテレコム(J:COM)との経営統合を機に、さらに攻勢をかける意気込みだ。
●近年CATV事業者は、インターネットや電話などの通信サービスに力を入れてきましたが、この分野では光アクセスを中心に通信事業者も交えて競争が激しくなっています。現状をどう捉えていますか。
藤本 私どもが基幹サービスとしてきたCS多チャンネル放送サービスは伸び悩んでいるのですが、インターネットサービスはまだ伸びています。JCNの場合、CS多チャンネル放送の加入者もわずかながら増えていますが、業界全体を見ると純減している会社もあります。そこで、各社ともインターネットサービスにはさらに力を入れ収益の拡大、解約防止を図ろうとしています。
この分野では激しいチャーン合戦が繰り広げられていますが、この中で我々にはまだ伸びる余地があると考えています。
●CATV事業での差別化ポイントはどこにあるのでしょう。
藤本 今までは「安さ」を前面に出して勝負してきました。しかし、昨年末にNTT東西がフレッツ光で「思いっきり割」を始めるなど、価格での差別化が難しくなっています。こうした中で、我々の大きな強みになっているのがお客様サポートなのです。
例えばJCNの各局では、接続方法が分からない、リモコンの使い方が分からないなどのご連絡をいただくと、お客様宅に直接おうかがいする「安心かけつけサポート」というサービスを導入しています。夕方5時までにご連絡いただくと必ずその日の内にうかがうようにしている局や、1時間以内に飛んでいくと宣言している局もあります。Wi-Fiなど、インターネットの接続設定はユーザーにとって難しいものになっています。お客様のご自宅に駆けつける体制を整えて丁寧に対応することで、CATVが通信事業者に対して有利に闘えています。これをさらに拡充していこうとしているのです。
●同軸ケーブルを使うCATVのインターネットサービスは光に比べ性能面で見劣りすると見る向きもあります。
藤本 決してサービス面で劣るということはありません。私どものケーブルの伝送能力は、下り160Mbpsで光と遜色はありません。むしろ実効速度は我々の方が速いことが多い。恐らくツリーにつながっている戸数が少ないのだと思います。公称30Mbpsのプランで15Mbpsくらいは出ています。この点をしっかり訴求していこうと思っています。
もっとも、光にはパススルーによってBSデジタル放送を宅内複数台のテレビで受信できる利点があり、この点はCATVがやや不利になります。そこで我々も設備の更新を機に、順次設備を光に切り替えていこうとしています。
●CATVの光ネットワークは通信事業者とは異なるのですか。
藤本 通信事業者のFTTHと基本的には同じものです。ただ、PONからお客様に直接光ケーブルを引き込むと宅内設備を変更しなければならないので、まず幹線を光にして、RFoG(RF over Glass)というサービスに切り替えます。これにより、BSパススルーで再送信できるようになります。また、お客様が望めばいつでもFTTHに変えられるようになります。
●逆に、通信事業者は光を使ってテレビに進出しています。この分野でも通信事業者との競争になっているのではありませんか。
藤本 ひと月682.5円の追加料金で地デジとBSが受信できるNTT東西の「フレッツ・テレビ」は、CSをあまり見ないお客様に一定の影響はあると思います。BSだけでも31チャンネルあり、有力コンテンツがそこに入ってきていますから。また、CS多チャンネル放送を提供している「ひかりTV」などのサービスの契約者は、恐らく光加入者の10%程度だと思いますので、我々と同様に、苦労をされているのではないでしょうか。
●コンテンツでの通信事業者との差別化は考えていますか。
(聞き手・土谷宜弘)
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