2014年11月号
「垂直統合モデル」のMVNO
サードウェーブキャリアを目指す
石田宏樹氏
(いしだ・あつき)
1972年佐賀県生まれ。1998年3月 慶應義塾大学総合政策学部卒。在学中に、有限会社リセットを設立。三菱電機よりISP立ち上げの依頼を受け、ドリーム・トレイン・インターネット(DTI)設立に参画。2000年5月 株式会社フリービット・ドットコム(現フリービット株式会社)を設立、2007年3月 東証マザーズに上場。2013年12月、freebit mobileを開始。2012年5月より、新経済連盟監査役に就任。
フリービット
代表取締役社長 CEO
石田 宏樹 氏
MVNO参入が相次ぎ携帯電話市場が活性化するなか、「freebit mobile」は自らスマートフォンを開発し直営店舗を展開するなどユニークな路線を歩んでいる。自己のISPの経験とISP300社のサポートで15年の実績を持つフリービット石田宏樹社長は「垂直統合モデル」を強調し、事業の成算を語る。
●昨年11月、自社開発のスマートフォン「PandA」と端末代を含めて月額2000円という低料金で衝撃デビューしました。freebit mobileのMVNOサービスを始めて1年になりますが、手応えはいかがですか。
石田 3年間で携帯電話市場の1%、120万加入を目標にしていますが、順調に推移しています。freebit mobileの認知度はだいたい20%ぐらいに上がっています。携帯電話キャリアと同じ100%に近いところに持っていけば販売が5倍になりますから、余裕で100万ユーザーに届くと考えています。
昨年末、直営店舗「ATELIER」を福岡・天神に開設しましたが、先ごろ渋谷スペイン坂に4店舗目をオープンしたところです。1時間で開店可能な移動型の店舗形態「STAND freebit」も開発し、アウトレットモールなどで稼働を始めています。
●様々なタイプのMVNOサービスが登場していますが、自前の店舗展開に踏み切るのは珍しい。
石田 携帯電話キャリアと同じような、販売代理店を活用してショップを全国展開する気持ちはありません。私たちは、インターネットがベースですから、シンプルで分かりやすくコストのかからないオープンな展開を目指しています。得意とするオンライン販売を軸にしています。しかし、オンラインだけというのはやはり一部に限られますし、O2Oといわれるように、オンライン+オフラインによる立体的なマーケティングを目指しており、リアル店舗の展開も必要だと考えています。
●MVNOの弱点は端末調達が難しいことだといわれてきましたが、端末も自社で開発しました。
石田 ユーザーに本当によいサービスを提供し、事業を継続していくため利益を確保するには「垂直統合型」でないと難しいです。端末からプラットフォーム、販売、サービスまで一元的にコントロール出来てこそ細やかなところに手が届くサービスの提供が可能です。
iPhoneは優れていますが不満足の大半はキャリアにあります。我々はAndroidを使いますが、我々自身でそれをコントロールし、ハードウェアも自分たちで作っています。ネットワークまで統合したら、Appleよりもシンプルなものが理論的にできるわけです。
例えば機能も、端末サイドで処理するものとネットワークサイドで処理するものとを、我々の特許技術によって分散しています。
ISPの経験からMVNOを
●フリービットは創業以来、サービスプロバイダーをサポートするいわば裏方の事業者だったわけですが、ここに来てなぜ直接ユーザーを相手にするMVNO事業に参入したわけですか。
石田 MVNOは3年ぐらいずっとやっています。最初はBtoBでSIMの提供を手掛けU-NEXT U-mobileやヤマダSIMなどが我々の事業です。BtoCでは、ISPの子会社DTI(ドリーム・トレイン・インターネット)で最安値490円のSIMを提供してきました。
しかし、こうしたSIM提供によるMVNOないしMVNEの限界も見えてきました。MNOのドコモの卸条件は同一でボリュームディスカウントも効かない状態になり、差別化が難しくなります。今は「MVNOブーム」の状況ですが、いずれ淘汰され数社に収斂されていくと見ています。
これは、かつてのISPの世界とまったく同じです。私たちは1994年からずっとプロバイダー業界でやっています。インターネット時代の幕開けで一斉にプロバイダーが登場し2500社くらいISPができ、それが数社に収斂されてしまいました。それと同じような状況が、今のMVNOではないかと思います。
我々は、ISPのバックヤードに入って、ネットワークとプラットフォームをサポートするという事業戦略に転換しました。今、約300社のISPのブロードバンドインフラをフリービットが提供させていただいています。
●ISPと同じ道を辿るとなると、MVNO事業も険しいことになる。
(聞き手・土谷宜弘)
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