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Interviewインタビュー

2024年2月号

2030年へ革新的ネットワーク
光無線100ギガ超、災害時も低遅延

原井洋明 氏

原井洋明 氏
(はらい・ひろあき)
1998年、郵政省通信総合研究所(現NICT)に入所し、統合通信網研究室に配属。網構成・光・モバイル等ネットワーク分野の研究開発と推進に従事。2011年NICT ネットワークアーキテクチャ研究室 室長、2016年ネットワーク基盤研究室 室長、2018年総合テストベッド研究開発推進センター 研究開発推進センター長を経て、2021年にネットワーク研究所 研究所長に就任(ソーシャルイノベーションユニット 主管研究員兼務)。博士(工学)

情報通信研究機構(NICT) ネットワーク研究所
研究所長
原井洋明 氏

生成AIをはじめテクノロジーの発展が目覚ましいが、通信ネットワークはどうか──。2030年代に向けて「革新的ネットワーク」の実現をターゲットに掲げているのが、情報通信研究機構(NICT) ネットワーク研究所だ。世界を革新する、一体どんなネットワーク技術の研究開発が進んでいるのか。原井研究所長に、光ファイバー通信や光衛星通信などの最新動向を聞いた。

NICT ネットワーク研究所は「革新的ネットワーク」の実現をターゲットに研究開発に取り組んでいますね。

原井 我々の目指す革新的ネットワークとは、SDGsなど2030年代に期待される社会を実現するために、Beyond 5Gで望まれるネットワークのことです。そのために必要な要素としては、広帯域、低遅延、高信頼があり、これらを叶えるべく、光、地上系・衛星系の無線、ネットワーク管理などに関する研究開発を行っています。

ネットワーク研究所の中には、フォトニックICT研究センター、ワイヤレスネットワーク研究センター、レジリエントICT研究センター、ネットワークアーキテクチャ研究室、先端ICTデバイスラボといった組織があり、多岐にわたる研究開発が進められています。まず光ファイバー通信への取り組みについて教えてもらえますか。

原井 2030年に今の100倍、2040年に向けては今の1000倍の容量の光ファイバー通信を実現していこうと研究開発を進めています。
 東名阪をつなぐネットワークの通信速度は現状、毎秒10テラ〜30テラビットというところです。また、日本の固定系ブロードバンドの総トラフィックも2020年時点で毎秒20テラビットくらいと大体同じような数字です。10テラの100倍が1ペタですから、1ペタの社会実装ができるどうかが1つのポイントになると考えています。

1ペタといえば、NICTらは2022年5月、世界で初めて標準外径の125マイクロメートルの4コア光ファイバーで毎秒1ペタビットを超える伝送実験に成功しました。さらに2023年3月には、今度は標準外径の19コア光ファイバーで毎秒1.7ペタビットの伝送実験に成功しています。

原井 現在敷設されている光ファイバーと同じ細さですから実用に向いています。こうした技術の社会実装が、まず1つめのターゲットになると考えています。
 また、ここしばらく、標準外径のマルチコアを中心に取り組んできましたが、並行して標準より大口径のマルチコアにも改めて力を入れています。社会実装に向けてはまだまだ課題がある一方、何十コアというマルチコアを実現でき、将来を見据えると両方をターゲットにしておく必要があるからです。
 2023年秋には、38コアの光ファイバーで毎秒22.9ペタビットの通信が可能であることを実証しました。これまでの世界記録の毎秒10.66ペタビットの2倍以上です。

マルチコア光ファイバーは、いよいよ社会実装フェーズに入りつつあります。2023年9月には、グーグルが海底ケーブルに標準外径のマルチコア光ファイバーを採用すると明らかにしました。NECがパートナーで、日本の光ファイバー通信技術が使われています。

原井 NICTがベンダー各社と共に取り組んできた一連の研究成果の1つです。住友電工さんが2023年9月に、極低損失マルチコア光ファイバーの量産化に世界で初めて成功し、10月から販売開始すると発表されましたが、これも私たちが一緒にやってきた研究開発の成果と考えています。

光ファイバーの伝送容量を上げる代表的方法としては、1つのコア内に複数のモード(経路・パターン)を用意するマルチモード、複数の周波数帯を同時に利用するマルチバンドなどもありますね。

原井 毎秒22.9ペタビットの実現にあたっては、38コアに加えて、3モード多重、S帯/C帯/L帯によるマルチバンド多重も用いています。1つのコア当たりの容量を増やすことで、掛け算で伝送容量を拡大していくことができます。

NICTをはじめ、NTT、KDDIなど、日本発の光ファイバー通信関連のニュースには「世界初」という言葉がよく踊ります。日本はこの分野で世界をリードしていると自負していいのでしょうか。

(聞き手・太田智晴)
続きは本誌をご覧下さい

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