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Interviewインタビュー

2015年4月号

光卸の拡大で多様なICT化を推進
クラウドでストック収入を確保

山村雅之氏

山村雅之氏
(やまむら・まさゆき)
1978年3月東京工業大学大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程修了、同年4月日本電信電話公社入社。2005年5月日本電信電話株式会社中期経営戦略推進室担当部長。同年6月東日本電信電話株式会社取締役東京支店長ビジネスユーザ事業推進本部副本部長兼務。08年6月同常務取締役東京支店長。09年6月同常務取締役ネットワーク事業推進本部長ネットワーク事業推進本部設備部長兼務ネットワーク事業推進本部研究開発センタ所長兼務ネットワーク事業推進本部企画部長兼務。2012年6月同代表取締役社長(現職)

NTT東日本
代表取締役社長
山村 雅之 氏

NTT東日本の「フレッツ光」の卸売を利用して、すでに50社が光サービスを提供している。今後は教育や農業など通信以外の分野に強みを持つ企業の参入も促すことで、「これまで届かなかった領域におけるICT化を進めたい」と山村雅之社長は意気込みを見せる。

「フレッツ光」の卸売サービスによる「光コラボレーションモデル」(以下、光コラボ)が始まりました。すでに多数のISPや携帯電話事業者がサービスを開始していますが、どのように評価していますか。

山村 NTT東日本の光卸を利用した光コラボ事業者は、3月上旬時点で約50社に上ります。問い合わせ状況などからそれなりの数が出てくるだろうと予想してはいましたが、これほど多くの企業が早期にサービスを始めるとは想定以上でした。事業者の数という点では、順調なスタートを切ったと見ています。
 光卸を始めたのは、我々が提供できずにいた多様なサービスを光コラボ事業者の方々に提供していただくことで、できるだけ多くの方に光アクセスサービスを使ってもらいたいとの狙いからです。いち早く開始したISPなどのサービスの契約は「転用」がほとんどですが、3月からスタートした携帯電話事業者のサービスの契約には新規も一定数含まれています。これから通信事業者だけではない非通信系の一般企業など多様な事業者が参入してくれば、新規契約がもっと増えてくると思います。

卸売は初めての取り組みですが、課題はありますか。

山村 3月上旬時点で約15万件の申込があり、そのうち実際に開通したのは約5万件です。光コラボ事業者にとっても初めての経験だけに、本人性確認などの手続きでどうしても手間取っています。開通工事は当社が担当しているのですが、光コラボ事業者からお客様への工事日確認の周知をめぐるトラブルなども発生しており、バックオーダー(開通工事に行ったものの開通できなかった工事)の件数もやや多めです。慣れてくれば、これらの問題もやがて解決すると見ています。

利益重視の方向に転換

フレッツ光の販売が伸び悩んでいたとはいえ、卸売への移行を決断するまでには試行錯誤があったのではないですか。

山村 NTT東日本の場合、フレッツ光のピーク時は年間150万以上の純増がありました。その頃は、7カ月程度で100万契約を突破したこともあります。ところが、契約者数が800万から900万になるのに1年ちょっと、900万から1000万に到達するまでに25カ月もかかるなど、純増のペースが次第に落ちてきていました。
 純増に勢いがあったのは、積極的にエリアを拡大したりマンションに設備を入れていた時期です。しかし、光が一通り行き渡ってからは、割引キャンペーンによる安売り競争と代理店手数料の積み増しでユーザーを獲得するような形になっていました。
 当社の事業計画としては、フレッツ光の販売で収益を上げ、メタル回線の収入減をカバーしていこうという大きな流れで来ていました。実際、2010年度末決算ではフレッツ光などのIP関連収入の伸びが音声系収入の減を上回り合計が初めてプラスになりました。しかし、翌年以降は割引キャンペーン競争による値下げの影響を受けて再びマイナスの状況が続いています。

IPで音声の落ち込みを埋めるという基本戦略通りにはならなかったということですね。

山村 以前から「このままのビジネスモデルでは厳しい」との認識に立ち、「数を追う」のではなく「事業としての利益を追求する」方向にビジネスモデルを変えようとしていました。その結果、現場が苦しくなるが、割引キャンペーンを見直すなど、利益重視の方向に舵を切っていました。
 ところが、利益重視に変更しても、せっかく作った設備が利用されないという問題は解決できません。従来の販売方法のままでは安定した経営に戻すことは難しく、持株とも議論を重ねた結果、事業の転換が必要と考え、卸売の開始を決めました。
 電話の時代には、我々がすべてのお客様にリーチすることができていたかもしれません。ところがITの時代になると、顧客接点にはSIerやISPといった新たなプレイヤーが登場しています。我々がリーチできているというのは錯覚にすぎず、今までのような「自前主義」は難しいと言わざるをえません。卸売によって、我々ではカバーしきれない需要を発掘し拡大できるようになると期待しています。

光コラボでは、フレッツ光とNTTドコモのモバイルサービスとの「セット割」にどうしても注目が集まりがちです。

(聞き手・土谷宜弘)
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