2026年1月号
光電融合は「技術力×仲間作り」で勝負
NTTグループ総力でAI需要に応える

星野理彰 氏
(ほしの・りあき)
1966年3月生まれ。90年4月にNTT入社。2018年4月にNTT東日本 取締役 ネットワーク事業推進本部 設備企画部長、20年5月にNTT-ME代表取締役社長に就任。21年6月にNTT東日本 取締役執行役員 ネットワーク事業推進本部長、22年6月にNTT e-Drone Technology代表取締役社長、NTT東日本 代表取締役副社長 副社長執行役員を経て、25年6月より現職
NTT
代表取締役副社長 副社長執行役員 CTO
星野理彰 氏
「2027年度のEBITDA4兆円」を目指し、次世代分野への積極投資を進めるNTT。同社の星野副社長は、その成長戦略の中核にIOWNと光電融合を位置づける。約30年にわたって磨き続けてきた光に関する技術力や、国内外のベンダーらと形成したエコシステムを武器に、競争力の強化を図る。また、tsuzumi 2をフックに、生成AI関連事業の売上5000億円を目指す。
●2025年6月、NTT東日本の副社長を退任し、NTTの副社長に就任されました。
星野 NTT東日本に長く在籍していたこともあり、NTT持株に来てまず感じたのは、グループ各社の存在感の大きさでした。NTTドコモやNTTドコモビジネス、NTTデータをはじめ、各社がそれぞれの領域で強みを発揮し、事業を展開しています。
だからこそ、これまで以上にNTTグループの総合力を発揮していかなければいけないと感じています。グループ内に閉じるのではなく、各社が他業界と積極的につながり、日本が抱える社会課題に向き合っていく。そのフィールドに身を置けることを、とても嬉しく思います。
NTTグループは、ここ数年でグローバル体制を大きく拡充してきました。そして海外で着実に成果を上げると同時に、世界の最新動向や優れた技術をいち早く事業に取り入れてきました。あわせて、研究所で培ってきた技術力も社会やお客様のお役に立てるよう、より一層磨きをかけていきたいと考えています。
●新中期経営戦略(2022-2027年度)では、「成長分野への約8兆円の投資」を掲げています。具体的に、どのような領域に注力していますか。
星野 AIやロボットなどを活用した社会・産業DXを支援するデジタルビジネスと、データセンターの拡張・高度化に、約4兆円を投じてきました。これが、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)を押し上げる大きな要因になっています。
また、IOWNへの設備投資に加え、災害に強い通信インフラの整備や、NTTドコモのネットワーク品質の改善にも継続的に取り組んでいます。これらは新規投資というよりも、NTTがお客様からの信頼を得るための“土台”となる取り組みであり、最優先で進めるべきテーマです。その基盤をしっかり固めたうえで、AIをはじめとする今後の事業拡大に直結する領域にチャレンジしていきたいと考えています。
●NTTでは、2027年度のEBITDAを2022年度比20%増の4兆円規模に引き上げることを目指しています。2025年度のEBITDAは、約3.4兆円に達する見通しです。
星野 デジタルビジネスやデータセンターの分野は、世の中の成長トレンドに乗って今後も大きく拡大していく領域であり、我々もその流れを追いながら、事業の可能性を広げていきます。また、NTTグループ各社は各業界・地域に密接につながり、地場に根ざした強固なポジショニングを築いています。その強みとこれまで培ってきた技術力を融合させることで、より大きな成長が期待できると考えています。
APNで仕事のあり方を変える
●大阪・関西万博などを中心に、IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク)の導入実績も増えてきています。手応えはいかがですか。
星野 放送や不動産などの分野で先行的に導入を進めており、2025年9月には、TBSテレビとリモートプロダクションセンターを構築し、APNを活用した大規模スポーツイベントの地上波生放送向け映像制作を実施しました。中継先に中継車などの大掛かりな機材を持ち込んだり、限られたスペースで作業しなくても、リモートプロダクションセンターでスイッチングなどの番組制作を快適に行えるようになりました。
APNという新しい技術を活用することで、これまでの前提に縛られず、仕事の進め方を大きく変えられると実感しています。建設業においても、これまで人が危険な場所に立ち入って行っていた作業を、遠隔の安全な場所から実施できるようになるでしょう。
●2025年11月に開催されたITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)主催の国際会議「CxO Roundtable」では、IOWN APNを活用したワット・ビット連携技術の標準化に向けた提案を行われました。その狙いについてお聞かせください。
星野 これからのAI時代、トラフィックの増加に伴い電力消費も増大していく中で、APNを活用してデータ処理をより効果的かつ省エネな方向へと転換していくことが重要になります。国が旗振り役となって議論を深めているこのタイミングで、日本発のワット・ビット連携の取り組みを先行的に推進し、その知見や経験を海外にも展開していきたいという思いから、今回の提案に至りました。
APNにはネットワークそのものを省電力化できるという特徴がありますが、分散配置されたデータセンターをAPNでつなぐことで、再エネを活用しやすい場所へデータ処理を移すことができます。これにより、新たな発電設備を作らずに済むかもしれません。
●今後、IOWN APNをどのような業界・領域に展開していきますか。
(聞き手・津野篤)
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