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Interviewインタビュー

2016年12月号

主力のブラウザ事業がIoTで再起
NW仮想化も新生ACCESSの柱に

兼子孝夫 氏

兼子孝夫 氏
(かねこ・たかお)
1971年3月早稲田大学政治経済学部政経学科卒業、同年4月富士通入社。90年12月同社システム本部第5システム統括部自治体システム部長、97年6月同社システム本部情報出版システム統括部長、2001年6月同社システム本部主席部長、02年6月富士通テクノシステム代表取締役社長、04年6月富士通ビー・エス・シー代表取締役社長。15年3月ACCESS顧問、同年4月代表取締役社長に就任、現在に至る

ACCESS
代表取締役社長
兼子孝夫 氏

携帯電話向けブラウザで2000年代に急成長を遂げながらスマートフォン普及後の事業転換、新規ビジネス開拓が遅れ2014年度には赤字に転落したACCESS。そうしたなか、再建を託されたのが兼子孝夫社長だ。「17年は新たな成長を始める年にしたい」と語る同氏に、成長戦略を聞いた。

2015年4月に社長に就任されましたが、その経緯を教えてください。

兼子 経営の立て直し役を任されました。それまでACCESSとの縁はなかったのですが、社外取締役である宮内義彦氏(オリックス シニアチェアマン)と、当時社外取締役であった新浪剛史氏(元ローソン取締役社長及び会長、現サントリーホールディングス代表取締役社長)から依頼されたのがきっかけです。
 当社の業績は売上が300億円超の09年をピークに下降し、私が就任する直前の15年1月期には、売上高は75億円まで落ちていました。営業損は10億円、純損失が25億円という状況でした。
 ACCESSは、1998年にNTTドコモのiモードに携帯電話用ブラウザ「NetFront Browser」が採用されたことで急成長した会社です。07年に時価総額は4600億円と最高額を記録しましたが、まさにその絶頂期にアップルがiPhoneを発表しました。
 そこから携帯電話市場の競争原理が激変するわけですが、スマートフォンが急速に普及するなか、当社の携帯電話向けブラウザの収入は急速に減少しました。11年1月期に約85億円あったライセンス収入は、昨期(16年1月期)1割ほどになりました。

就任2年目で黒字体質へ

社長就任後これまで、どのような取り組みを行ってきたのですか。

兼子 この1年半の最大の眼目は、営業利益を黒字にすること。黒字体質に転換し、次の成長戦略を進める土台を作ることでした。
 具体的には、販管費と言われる管理部門や営業部門のコストを落とし、それから仕損、いわゆるトラブルプロジェクトを徹底的に見直しました。
 その結果、営業損は16年1月期に1億1400万円に縮小しており、今期(17年1月期)は1億5000万円の黒字を目標にしています。

前職、富士通ビー・エス・シーの社長(04年6月〜11年6月)を務められたときも経営の立て直しに成功していますが、経営再建の秘訣は何だとお考えですか。

兼子 赤字会社というのは、やはり無駄なカネをたくさん使っているものです。そのコストを落とすだけで随分変わります。
 ACCESSの体制も、売上減少に合わせて規模の縮小に取り組んできましたが、それでもまだ無駄がありました。幕張と水道橋に分散していたオフィスの統合や、管理部門の退職者を補充せず人数を減らしたり、営業の一部を開発部門に移すといったかたちで適正化しました。
 もう1つの問題はトラブルプロジェクトです。
 これがあると資源がみな後ろ向きになり、新しい仕事をやる余裕がなくなります。トラブルプロジェクト自体のロスと同時に、新しいビジネスチャンスも失っているわけで、これを無くすことは二重の効果があります。
 昨年度はひたすらトラブルプロジェクトの整理に努めました。随分といろいろ止めさせて、伸びる可能性のある分野に資源を集中させました。
 この1年半で贅肉が削げて筋肉質になりました。来年度は新規事業で売上を伸ばすフェーズに入ります。

今期で黒字化を果たして、来年は売上増に本格的に取り組むと。

兼子 今期の売上高の計画は71億円で、前期の68億3700万円より売上を伸ばす計画です。来期からは新しい収益を作って“攻め”に転じます。

IoT向けブラウザで新需要

新生ACCESSとして今後、どのように新たな収益を作っていきますか。

兼子 1つがIoTです。IoTの要素技術として、主力事業であるブラウザのビジネスが伸びてきています。
 当社では一時期、ブラウザは主力事業ではなく、非ブラウザ分野で新しい事業を作っていこうという議論もありました。
 ところが最近、流れが変わってきました。PCやスマートフォンのブラウザはアップルとグーグルが席巻していますが、PC/スマホ以外の分野で我々の出番が出てきています。
 非PC/スマホ分野、つまりIoT向けで特に伸びているのが、グーグルのBlink(HTMLレンダリングエンジン)対応ブラウザです。これまではアップルが中心となって開発しているWebKitが優勢でしたが、ここに来てBlink対応の商売が増えています。今期の売上が伸びている要因の1つが、これです。
 グーグルとアップルはBlink、WebKitをオープンソースとして公開し、これに準拠したブラウザのみ自社のサービスを利用できるといった制限を設けています。当社はBlink版の「NetFront Browser BE」、WebKit版の「NetFront Browser NX」、そしてもっと小さな家電やホームゲートウェイ、センサー向けに省メモリ性を追求した独自エンジンのブラウザも手掛けています。

どのような用途で使われるのですか。

(聞き手・太田智晴)
続きは本誌をご覧下さい

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