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Interviewインタビュー

2017年3月号

IoTとAIで圧倒的な社会価値
尖った技術を安心とセットで

望月康則 氏

望月康則 氏
(もちづき・やすのり)
1987年にNEC入社、半導体とナノテクノロジーの研究開発に従事。研究部門長として先端LSI、メディア情報処理、ビッグデータ分析関係の情報科学等の研究成果の事業化を推進し、2011年に中央研究所理事に就任。2013年には全社の新事業強化のために新設されたビジネスイノベーション統括ユニットに参画し、全社技術戦略を担当。2015年、NECのIoT事業を推進するIoT戦略室 室長に就任、2016年、執行役員就任、現在に至る。東京大学工学系研究科博士課程卒

NEC 執行役員 兼 IoT戦略室長
望月康則 氏

超少子高齢化社会に突入し、人手不足などの深刻な課題に突き当たる日本。その一方、世界の人口は急増を続けており、エネルギーや食糧、水などの需要が爆発的に増加する見込みだ。そこでNECでIoT戦略室長を務める望月康則氏は言う。「ケタ違いの圧倒的な効率化が、社会全体に求められている」IoTとAIによる社会価値の創造に取り組むNECのビジョンと強みを聞いた。

IoTをめぐる動きが大変活発になっていますが、IoTの現状についてどう見ていますか。

望月 製造業など、IoTで業務プロセスを改善することにより、定量的なコスト効果が出るところから、IoTが導入され始めたと感じています。単なるコスト削減にとどまらず、顧客体験の向上や経営変革につながるIoTの事例もいくつか見え始めてきました。
 ただ、やはり現在はまだ黎明期です。産業構造や人々の暮らしそのものが変わるような、IoTによる本当の変化はこれから本格的に始まると考えています。

今から大変革が起こると。

望月 スケールの大きい話になりますが、地球の人口は2050年に現在の3割増し、90億人を突破すると予想されています。特に、都市の人口増加ペースは急激で、2050年には現在の1.8倍の63億人に達します。その結果、エネルギー需要は1.8倍、水需要は1.6倍、食料需要は1.7倍になると言われています。要するに、地球をもう1つ分支える必要が出てくるわけです。他方、高齢化が進む日本では、労働人口が今後急速に減少していきます。
 つまり、個々の企業におけるビジネスの効率化といったことを超え、ケタ違いの圧倒的な効率化が、社会全体に求められているわけです。そして、この課題に対して、解をもたらすことができるのがIoTです。

他社にはない尖ったAI技術

IoTに対する非常に高い期待が分かりましたが、NECの経営戦略におけるIoTの位置づけはどうなっていますか。

望月 半導体事業や携帯端末事業、コンシューマ向けインターネットプロバイダー事業をスピンアウトするなど、NECの経営ポートフォリオが変わるなか、我々は2014年に7つの社会価値創造テーマを策定し、社会ソリューション事業に取り組むと全社で決めました。「地球との共生」「安全・安心な都市・行政基盤」「安全・高効率なライフライン」などの7テーマがありますが、これらの社会価値創造を従業員全員で目指していくうえで、IoTは“ど真ん中”の価値出しのメカニズムだと捉えています。

IoTを基盤に、社会価値を創造していこうというわけですね。

望月 そうです。加えて、「鶏が先か、卵が先か」みたいな話かもしれませんが、IoTに注目が集まり始めた時期は、NECの直接のお客様を、情報システム部門から事業部門、いわゆるLoB(Line of Business)の方へ広げていく時期とも重なっていました。LoBのお客様に、どうやって価値を提供していくか。まさに、IoTはそこに向けた重要なビジネスのやり方だと認識しています。

IoTに注力しているのはNECだけではありません。多くの競合他社が取り組んでいますが、NECのIoTソリューションの強みは何ですか。

望月 まずはIoTで価値を創出するために重要なAI技術です。我々は「NEC the WISE」というブランドで最先端のAI技術群を体系化しており、他社にはない尖った技術を数多く持っています。

NECのAI技術というと、米NISTのベンチマークテストで3年連続の世界一にもなった顔認証技術が特に有名です。

望月 「NEC the WISE」では、AI技術を「見える化」「分析」「対処」の3領域に分類しており、顔認証技術は「見える化」にあたります。
 アルゼンチンのティグレ市では、街中の監視システムにNECの顔認識技術を導入することで、車の盗難率を80%減らすことができました。また、ティグレ市では、ひったくりなどの犯罪につながりやすいバイクの2人乗りの検知などにも、NECの画像認識技術を使っています。

トマト栽培を最適化

「分析」の領域では、どんなAI技術を有しているのですか。

望月 我々の非常に特徴的なAI技術として、「異種混合学習」があります。多種多様なデータから自動的に規則性を見つけ、高精度に未来を予測できるAI技術です。
 例えば、グループ会社のNECフィールディングは、日本全国の拠点にある保守部品の在庫最適化に異種混合学習を活用しており、欠品を防ぎながら在庫量を20%削減できました。他にも食品スーパーで無駄のない発注を実現できたり、電力需要の高精度な予測が行えたり、本当に幅広いオペレーションに適用できます。

NEC独自のAI技術が活かされたIoTの事例としては、他にどんなものがありますか。

(聞き手・太田智晴)
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