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Interviewインタビュー

2017年4月号

売上は5年間ずっと右肩上がり
IoT時代を「自動化」で支える

望月康則 氏

古屋知弘 氏
(ふるや・ともひろ)
2015年5月にジュニパーネットワークス代表取締役社長に就任。ジュニパー入社以前は、2010年にテラブス・ジャパンの代表取締役社長に就任し、その後、2013年12月テラブス社とコリアント社の合併に伴い、コリアント・ジャパンの代表取締役社長を務めた。また、それ以前は、日本アルカテル・ルーセント IP事業部 ジェネラル・マネージャー兼ソリューション・ディレクター、リバーストーン・ネットワークス代表取締役社長などを歴任している。米チャップマン大学においてファイナンス専攻で学士号を取得

ジュニパーネットワークス
代表取締役社長
古屋知弘 氏

クラウド化の進展、ホワイトボックススイッチの台頭、国内通信事業者の投資抑制など、様々な動きがネットワーク業界の勢力図に変革をもたらすなか、ジュニパーネットワークスが堅調に業績を伸ばしている。これから本格化するIoT時代に向けては「Self-Driving Networks」というビジョンを掲げ、AIの研究開発にも注力する同社日本法人の古屋知弘社長に話を聞いた。

ネットワーク業界の歴史を振り返ると、様々な浮き沈みもありましたが、そうしたなか長年にわたりトップベンダーの一角を担ってきたのがジュニパーネットワークスです。最近のビジネスの状況はいかがですか。

古屋 ジュニパーは昨年20周年を迎えましたが、2016年は設立以来、最も好調な年でした。2016年のワールドワイドでの売上は約50億ドル。実はこの5年間、売上はずっと右肩上がりで成長しており、2012年と比較すると約6億ドルも売上は増えています。
 営業利益率もかなり堅調で、2012年に15.6%だった営業利益率が、2016年は23.4%まで伸びています。

日本の製造業からすると、驚くような営業利益率ですね。国内でのビジネスの状況はどうですか。

古屋 国内についても、2年ほど前から順調にビジネスが拡大しています。具体的な数字は言えませんが、成長市場であるAPACのビジネスを最も牽引しているのが日本です。

グローバル、国内ともに好調ということですが、何が要因ですか。

古屋 好調の背景には、2014年11月にCEOに就任したラミ・ラヒムが打ち出した戦略があります。
 ジュニパーは元々ルーター、スイッチ、セキュリティの3分野に特化してきたベンダーですが、ラミがCEOに就任した当時は、多様なソリューションにポートフォリオが広がっていました。例えば、無線LANアクセスポイントやエンドポイントセキュリティなども提供していました。
 しかし、ラミが「ネットワークベンダーとしてのフォーカスをもう一度見直そう」と、ルーター、スイッチ、セキュリティの3分野に再度フォーカスすることに決めたのです。これが功を奏して、売上が回復してきたという背景があります。

ライバルのシスコが、サーバーにも手を広げているのとは対照的です。

古屋 そうですね。我々はネットワーク専業メーカーとしての強みを最大限伸ばそうとしています。

以前のジュニパーには「特に通信事業者に強い」というイメージがありました。しかし、先日読んだ海外の記事には、現在の上位顧客10社のうち、5社がクラウド事業者、3社が通信事業者、2社がエンタープライズと書かれていました。売上が伸びるなか、顧客構成にも変化が起きているのですか。

古屋 ジュニパーの売上全体の約7割は、サービスプロバイダーが占めています。以前はこのサービスプロバイダーの上位ほとんどを通信事業者が占めていましたが、この3〜4年でかなりシフトしました。今はハイパースケールのクラウド事業者も、我々のとても重要な顧客になっています。

クラウドの波にしっかり乗ったわけですね。

古屋 はい、国内でもクラウド関連のビジネスは非常に伸びています。

よいソフトにはよいハード

クラウド化が進むなか、ネットワークのソフトウェア化の動きも加速しています。ジュニパーもSDNコントローラーの「Contrail」を提供するなど、力を注いでいます。

古屋 Contrailの実績は大変伸びており、グローバルでは主要顧客の多くがContrailを導入しています。特にOpenStack環境にContrailを導入しているユーザーが多いですね。ソフトウェアは我々の重要な注力分野です。特に長年こだわってきたソフトウェアがネットワークOSの「Junos」であり、コアルーターからブランチオフィス用のセキュリティルーターまで全製品が一元的にJunosで動いています。
 しかも、単純にソフトウェアを作っているわけではありません。「よいソフトウェアを動かすには、よいハードウェアが必要だ」──。これはジュニパーの創業者で現在もCTOを務めるプラディープ・シンドゥの思想であり、この思想は今も堅く守られています。

ジュニパーは、ネットワーク機器に搭載するシリコンを独自開発し続けてきました。

古屋 よいソフトウェアを動かすうえで、一番重要なのがシリコンだからです。だから我々は、用途ごとに全部シリコンを作り分けてもいます。
 例えばコアルーター用のシリコンには大容量のトラフィック処理性能が特に求められます。これに対して、コアエッジルーターは、どちらかというとサービスの拡張性のほうが重視されます。また、スイッチなら、いかに効率よくトラフィックをさばけるかが最も重要といった具合に、シリコンに要求される特性は用途によって違うからです。
 このように用途ごとに開発したシリコンを搭載するメリットとしては、機能性も当然あるのですが、一番は消費電力なんです。競合他社に比べると、消費電力をかなり抑えられる点が、ジュニパーの大きな優位性になっています。

そこでいう競合他社とは、シリコンを独自開発しておらず、ブロードコムなどが開発した汎用チップ、いわゆるマーチャントシリコンのみを採用しているネットワーク機器ベンダーのことですか。

(聞き手・太田智晴)
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