2017年5月号
光伝送も基地局もオープン化時代
このチャンスを逃して、いつやる
妹尾雅之 氏
(せのお・まさゆき)
1961年2月生まれ。83年3月名古屋工業大学工学部電子工学科を卒業後、同年4月に富士通入社。2007年12月ネットワークソリューション事業本部 IPコアテクノロジー事業部長、13年5月ネットワークインテグレーション事業本部長などを経て、15年4月に執行役員。現在、執行役員 デジタルサービス部門 ネットワークビジネスグループ ネットワークプロダクト事業本部長(兼)共通開発本部担当を務める
富士通
執行役員 ネットワークビジネスグループ
ネットワークプロダクト事業本部長
妹尾雅之 氏
通信事業者向けの光伝送システムと携帯電話基地局──。この2つのプロダクトを主力とする富士通のネットワークプロダクト事業本部を 率いる妹尾雅之氏は、「このチャンスを逃したら、いつやるんだ」と意気込む。チャンスをもたらしているのは、光伝送システムと基地局の世界で始まったオープン化、そして5Gだ。
●妹尾さんが本部長を務めるネットワークプロダクト事業本部は通信事業者向けの事業を展開していますが、長年この分野を歩んでこられたのですか。
妹尾 富士通に入社してだいぶ経ちますが、その半分くらいはエンタープライズをやっていました。通信事業者向けの装置開発を担当するようになったのは2000年からです。だから、まだ“若者”ですよ(笑)。
●2000年というと、IP化の流れが本格的なうねりとなりだした頃です。通信事業者が大きな変革期に突入するなか、通信事業者向けビジネスを担当され始めたのですね。
妹尾 逆に言うと、だから呼ばれたのだと思っています。少し言葉は悪いかもしれませんが、「言う通りに作れ」というのが以前の通信事業者向けビジネスでした。しかし、IP化以降は、「提案してくれ」というふうに変わっていきました。エンタープライズと通信事業者のお客様の意識がだんだん似てきたわけです。特にここ数年、その変化が激しくなっています。
IP化という1つの大きな錦の御旗の下、全世界の通信事業者が同じ方向に進んでいた頃は、まだよかったのです。しかし、今は違います。「その次、何するの?」とお客様は求められます。
例えば、米AT&Tは「グーグルのようになる」といろいろな変革に取り組んでいますが、こうした状況を見ても、変わってきたなと実感しますね。
DCIでの負けをキャッチアップ
●通信事業者の変革が進むなか、富士通は通信事業者向けビジネスにどのように取り組んでいるのですか。まずはネットワークプロダクト事業本部の事業領域について教えてください。
妹尾 我々は、主に通信事業者向けのプロダクトビジネスを担当しています。通信事業者向けのSIやサービス、ソフトウェアについては、ネットワークソリューション事業本部という別の組織がメインに担当しています。
●主力のプロダクトは何ですか。
妹尾 ざっくり言うと、光伝送システムと携帯電話基地局の2つが主力です。光伝送システムについては、お客様の仕様書に沿って開発するNTTの仕様化品を古くからやっているほか、北米向けに「FLASHWAVE」というシリーズを提供しています。また、2年前からは「1FINITY」という新しいプロダクトも販売しています。
基地局に関しては、NTTドコモ向けにいろいろとやらせて頂いてい
ます。
●最初に、光伝送システムのほうから詳しく教えてください。最近の光伝送システム市場はどうですか。
妹尾 市場環境はフラットで、極端な変化はありません。通信事業者の需要が漸減傾向にある一方、データセンター事業者の需要は少し増えてきているので、全体としては若干の増加傾向にあると感じています。
●データセンター事業者の需要とは、いわゆるデータセンター相互接続(DCI:Data Center Interconnect)市場のことですか。
妹尾 そうです。データセンターを持っているお客様が、自前でデータセンター間をダークファイバーで接続する案件が北米を中心に増えています。
以上が全体の市場感ですが、こうしたなか富士通のビジネスはどうなっているかというと、今シェアを少し落としています。
競合はデータセンター間のビジネスを堅調に伸ばしており、そこで負けてしまっているのです。富士通は少し開発に出遅れてしまいました。コストインセンティブなデータセンター間の市場では、いかに安くできるかが重要で、今後どうキャッチアップしていくかが課題です。
富士通は元々、Tier1の大きな通信事業者には強いんです。ですから、通信事業者以外のビジネスをどのように伸ばしていくかが最大のポイントだと考えています。
●主として日本と北米で光伝送システム事業を行っていますが、それぞれの売上の割合はどうなっているので すか。
(聞き手・太田智晴)
続きは本誌をご覧下さい