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Interviewインタビュー

2017年9月号

5Gは4Gまでとは根本的に違う
ベストエフォートは時代遅れに

三瓶政一 氏

三瓶政一 氏
(さんぺい・せいいち)
大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 教授。1980年、東京工業大学 工学部を卒業。82年、同大学大学院 総合理工学系研究科 修士課程を修了後、郵政省 電波研究所(現在の情報通信研究機構)に入所。91年に工学博士取得。カリフォルニア大学 デービス校 客員研究員を経て、1993年に大阪大学 助教授。2004年、同 教授に就任し、現在に至る。第5世代モバイル推進フォーラム(5GMF) 技術委員会 委員長、総務省 情報通信審議会 委員も務める

大阪大学教授
三瓶政一 氏

「5Gの最も大切な点は“ユーザーオリエンテッド”なネットワークであること」。大阪大学大学院 工学研究科 電気電子情報工学専攻 教授の三瓶政一氏はこう話したうえで、「ベストエフォートは時代遅れになる」と予見する。日本の5G推進団体「5GMF」の技術委員会委員長も務める三瓶教授に、5Gの本質と課題、そしてビジネスチャンスについて聞いた。

5G(第5世代移動通信システム)の実用化に向けた動きが慌ただしくなってきました。特に注目したいのが、“バーティカル”と呼ばれる通信業界以外の様々な産業界と連携した実証実験が活発化していることです。

三瓶 「4Gまでとは根本的に違う」。そう言っていいぐらい、5Gは違うものですが、一番の違いはバーティカルコネクションを意図していることです。
 情報通信ネットワークの歴史をたどると、いろいろなブレークスルーがありました。私が認識している最初のブレークスルーはグローバル化、次はオールIP化です。この流れは4Gでほぼ完結し、世界中で統一方式に基づくグローバルネットワークが構築されるに至りました。また、「無線だから伝送品質が悪い」という時代も4Gまでで終わっています。
 では、次のブレークスルーは何なのか。
 通信業界は今、右肩上がりの状態ではなく、安定成長状態に入っています。すでに世界の人口に匹敵する携帯電話加入者がおり、スマートフォンはほぼ買い替え需要しかありません。再び右肩上がりにするためには、新たなマーケットをつくるしかないのです。
 そこで次のブレークスルーとして、通信業界が5Gで仕掛けたのが、バーティカルコネクションです。飽和状態となった通信業界がマーケットを拡大していくうえで、大変重要な意味を持っています。

ALSOKやコマツ、大林組、東武鉄道など、様々なバーティカルが5Gの実証実験に取り組み始めているのは、通信業界からの働きかけが功を奏し、5Gへの関心が高まった結果ともいえるわけですね。

三瓶 その背景には、AIやビッグデータ、ロボットといった新たな技術分野の発展があり、そうした流れの中に5Gがあります。
 また、少子高齢化による労働人口の減少も、バーティカルからの関心が高まっている要因の1つです。今後減っていく労働人口をどう補うかを考えたとき、例えば自動運転は非常に大きなインパクトがあります。

自動運転をはじめとした、様々な新しいサービスを支える通信インフラとして、バーティカルの5Gへの期待が高まっていると。

三瓶 そういうことだと思います。

ベストエフォートの理由が消える

5Gの特徴というと、高速大容量・低遅延・多接続の3つがまず挙がりますが、その本質的特徴は何だとお考えですか。

三瓶 そうした性能向上は確かに5Gの重要な要素ですが、最も大切な点は、ユーザーの要求にできるだけ応えることを目指した“ユーザーオリエンテッド”のネットワークを構築することが5Gの最大の目的ということです。
 これまでは「帯域が足りないから、ベストエフォート」というロジックでした。ところが5Gではミリ波帯の利用も視野に入っており、これが利用されるようになると、無線帯域は「足りない」から「あります」へと変わります。現在、携帯電話事業者1社に割り当てられている電波は100メガヘルツのオーダーですが、5Gではギガヘルツのオーダーに変わるからです。今までの数十倍の帯域が最終的には利用可能になるかもしれません。
 ベストエフォートという考え方は時代遅れになるでしょう。

飛躍的に拡大する電波資源を活用することで、ベストエフォートからの脱却が可能になるのですね。

三瓶 そのため、今までのフェアネスの概念は、必ずしも適切でなくなると思います。
 従来は、「限られた無線リソースをみんなで均等に共用しましょう」という考え方でした。しかし、数十倍の帯域がある5G時代は、ユーザーオリエンテッドのサービスが提供可能であるという観点からフェアであればいい。要するに、帯域幅がフェアである必要はなく、ユーザーの希望に沿うことができればいいわけです。たくさんの帯域が必要なユーザーもいれば、少しで構わないユーザーもいるのですから。
 また、5Gでは、セルエッジの問題もかなり解消されます。4Gまでは、どの基地局からも遠い場所にいるユーザーの通信速度は、どうしても遅くなりました。しかし、5Gの場合、ビームフォーミング技術により、セルエッジの通信速度も高められます。
 ベストエフォートでなければならない理由は、どんどん消えていきます。

では、例えば「100Mbps以上のスループットを99%保証する」といったサービスが今後登場する可能性もありますか。

(聞き手・太田智晴)
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