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Interviewインタビュー

2019年3月号

IoT時代へインフラの抜本改革
4兆円市場にアドレスできる

田中 泰光 氏

田中 泰光 氏
(たなか・やすてる)
1971年3月生まれ、大阪府出身。アメリカンパワーコンバージョン(APC)、シスコシステムズ、ノキア・ジャパンを経て、2004年にアルバネットワークスに入社。2010年に通信事業開発本部長、2013年に社長代行 兼 営業統括部長、2014年にカントリージェネラルマネージャー。HPのAruba買収に伴い、2016年から現職

日本ヒューレット・パッカード
執行役員 Aruba事業統括本部長
田中 泰光 氏

HPによる買収から3年以上。かつての「無線LANベンダー」というイメージとはうって変わり、Arubaは有線LANからSD-WAN、ネットワークセキュリティまで、企業ネットワーク全般をカバーしている。そして今、Arubaが新たに狙っているのが、IoT時代到来で注目を集める「インテリジェントエッジ」の世界だ。Arubaの「ロールベース」のネットワークが真価を発揮するという。

デジタル変革が加速しているなか、HPE Arubaは今、どういった方向に進もうとしているのでしょうか。

田中 HPE全体として狙っているのは、昨今注目の「インテリジェントエッジ」の世界です。
 元々メインフレームという集中型だったコンピューティングアーキテクチャは、次にクライアント-サーバーの分散型となり、それからモバイルの台頭とともにクラウドが登場して集中型に戻りました。それが今、再びエッジにインテリジェントが移行されようとしています。
 クルマの自動運転が一番分かりやすい例ですが、エッジからデータをクラウドに送信して解析し、その結果をまたエッジに戻すのでは、リアルタイム分析が必要な自動運転は困難です。なるべくエッジに近いところでコンピューティングする必要があります。
 HPEは、企業内でもIoT環境においては、自動運転に近いエッジコンピューティングが必要と考えています。そこで重要になるのが、従来型の有線LAN、無線LAN、ネットワークセキュリティといった「企業インフラ」の在り方に対する抜本的な改革です。
 ただ、我々のソリューションは、煩わしい論理設計や物理設計の見直しをお客様に要求しません。「抜本的な改革」と言っておきながら、何も見直さないというのは一見矛盾しているようですが、それこそが我々のコアテクノロジーである、ロール(役割)ベースのネットワークアーキテクチャです。HPは今後の企業インフラではArubaのロールベースアーキテクチャが最も重要と感じ、Arubaを買収したのです。

HPがArubaの買収を発表したのは2015年3月のことでした。HPはその後2015年11月にPC・プリンター事業のHPとエンタープライズ事業のHewlett Packard Enterprise(HPE)に分社し、ArubaはHPE傘下となっています。

田中 HPとArubaはIoT時代の企業インフラの在り方について同じビジョンを共有していましたが、買収の際、「Arubaの文化は貫き通す」という合意も得ることができました。これは単にArubaブランドを残すだけでなく、製品やソリューションの開発はArubaの経営陣が引き続きリードしていくという合意になります。
 一緒になって変わったのは、やはりビジネスのスケールです。買収当時、Arubaはすでに黒字化していましたし、キャッシュフローも潤沢でした。しかし、そうは言ってもHPが持っているような従来型の大手顧客はなかなか獲得できていませんでした。以前のArubaの顧客は、大学やIT企業などが中心。それが今ではボーイングやマクドナルド、シェル石油など、伝統的な大企業にも採用されています。
 また、IoT時代の企業インフラでは、スイッチやセキュリティ用のサーバー、AIなども必要になると考えていましたが、Aruba単体ではそこまで開発資金は豊富ではありませんでした。

Wi-Fi以外の売上が50%

実際、新生Arubaとなって、製品ラインナップは大きく広がりました。

田中 Arubaが元々持っていたワイヤレスアクセスのTotal Addressable Market(TAM:実現できる最大の市場規模)は、60億ドルといわれています。そこに旧HPのスイッチ製品が加わり、Arubaブランド製品のTAMは160億ドルへと拡大しました。
 また、我々はキャンパスコアスイッチの開発に投資し、2017年にリリースしています。これからの時代はデータが重要なカギを握りますが、コアスイッチにはすべてのデータが集まります。我々が開発したのは、「ネットワーク上で今どんなことが行われているのか」という情報を吸い上げ、自動分析し活用することに力を入れたコアスイッチです。コアスイッチのTAMは40億ドルあります。
 SD-WANの市場にも着目しています。日本では今一つSD-WANは盛り上がっていないと認識していますが、「パケットをデータセンターに送信するのか、パブリッククラウドに送るのか」「マルチクラウドやハイブリッドクラウド環境でパケットをどう処理するのか」といった点をアプリケーションベースで考えるSD-WANの重要性は今後ますます高まっていきます。現在SD-WANのTAMは50億ドルあり、SD-WANベンダーも様々存在しますが、我々は差別化のため、単なるSD-WAN機器は提供しません。WANだけでなく、LANも含めた拠点インフラの全体管理・最適化を考えています。
 さらに、これからエッジデータセンターやIoTインフラの市場にも進出します。これらも合わせると、Arubaの前には合計で400億ドル、約4兆円ものアドレス可能な市場が広がっています。

「無線LANベンダー」というイメージは過去の話というわけですね。

(聞き手・太田智晴)
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