• トップページ
  • テレコミュニケーションとは
  • バックナンバー
  • 定期購読申込
  • 広告出稿の案内
  • 取り扱い書店
  • お問い合わせ

Interviewインタビュー

2019年8月号

情報・通信の事業統合は必然
ローカル5Gには多くの可能性

荒木 誠 氏

荒木 誠 氏
(あらき・まこと)
1963年2月生まれ。87年3月 京都大学大学院 工学研究科情報工学専攻を修了後、同年4月に関西電力入社。2011年12月 関電システムソリューションズ 経営改革推進本部 企画経理部長、12年6月 同社 取締役 経営改革推進本部 副本部長、13年6月 関西電力 経営改革・IT本部 副本部長、15年6月 同社 グループ経営推進本部 副本部長 併任 ケイ・オプティコム 取締役(非常勤)、16年6月 関西電力 執行役員 IT戦略室長、17年6月 ケイ・オプティコム 代表取締役副社長執行役員などを経て、18年6月から現職

オプテージ
代表取締役社長
荒木 誠 氏

関西電力グループの「情報」事業を統合したケイ・オプティコムは、 「オプテージ」として新たなスタートを切った。経営戦略の策定などの上流工程から コンサル部隊が関わり、「情報」と「通信」を一体提供することにより、 「マストなソリューションとして横展開できる成功事例を増やしていく」と語る荒木社長。 ローカル5Gをはじめとした5G関連ビジネスにも意欲を燃やす。

ケイ・オプティコムは今年4月1日、「オプテージ」へと社名変更。関西電力グループのSI会社、関電システムソリューションズ(KSSOL)の情報通信インフラ事業と一般企業・自治体向けのシステム開発事業、さらに関西電力が保有する社内LANなどの通信サービス提供機能も統合し、「情報」と「通信」を一体提供できる組織へ生まれ変わりましたね。

荒木 我々は回線ビジネスを中心にやってきましたが、関西のFTTH市場はほぼ飽和し、現在は伸び率が緩やかになっている状態です。さらなる成長を目指すためには、もっと高いレイヤーへビジネスを広げていかなければならないという思いが元々ありました。
 今回の組織再編には、2つの目的があります。1つは、グループ全体の設備コスト低減と競争力強化です。グループ全体を見渡すと、従来は各社がそれぞれ大量のサーバーファームを持っているという状態でした。ネットワークもそうです。電力保安通信といいますが、関西電力には電力設備を安定運用するため、独自仕様のネットワークがあります。この電力保安通信も独自仕様からIPへの移行が進んでおり、これも別々に保有するのは「ナンセンスだよね」と。そこでオプテージが全部引き受け、グループ全体に提供する体制に変えました。
 こうすることで、関西電力からすれば資産をオフバランスでき、サーバーやネットワークなどを安く利用できるようになります。我々からしても、関西電力というユーザーが乗ることで、グループ外へ販売する際の原価を下げることができ、競争力強化につながります。

2つめの目的は、情報通信事業のさらなる発展ですね。

荒木 オプテージにとって、より重要なのがこの2つめの目的になります。
 オンプレからクラウドへの移行、AIやIoTなどのデジタル技術の進展、そして企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)ニーズの高まりといった法人市場の動きを考えると、SIとネットワークを別々に提供するというのは、時代に合っていません。今回の事業統合は必然でした。「情報」と「通信」を一体的に提供し、お客さまのDXを支援していくことで、さらなる成長を遂げられると考えています。
 統合により、KSSOLからは外販のSI部隊、サーバーをはじめとする基盤系部隊、セキュリティ部隊などが来ましたが、例えばセキュリティ部隊には技術力がかなり高いメンバーが揃っています。電力会社は国から重要インフラ事業者に指定されていますが、彼らは関西電力のセキュリティをしっかり守ってきました。
 従業員規模で言いますと、従来約1450名だったのが、約2600名まで増えました。KSSOLから約850名、関西電力からも約300名が加わっています。

スローガンも一新しました。

荒木 ケイ・オプティコム時代は「光をもっと、あなたのそばに。」だったコーポレートスローガンを、オプテージでは「What’s next?」へ変えました。
 FTTHは「eo光」、MVNOは「mineo」とコンシューマー向けにはサービスブランドのほうを強く打ち出してきましたから、会社名が変わっても大きな影響はありません。しかし法人向けは違います。「オプテージ」に変わったことで、お客さまにとっては何が変わるのか──。ケイ・オプティコムやKSSOLではなく、オプテージが目指すものを社員1人ひとりがお客さまにしっかり答えられるよう、企業理念等を刷新するとともに、社員の意識を変えるインナーブランディングの意味も込めて、「What’s next?」をスローガンに掲げました。
 社名変更には、Webサイトのドメイン変更だったり、メールアドレスの変更だったり、結構大変なオーバーヘッドがかかります。それでも社名変更に踏み込んだのは、従来の回線ビジネスから一皮むいて、「我々は次の時代、次のステージに向け挑戦する」という意思をお客さまに示すと同時に、社員にも新たなスタート地点に立ってほしかったからです。

ベターではなくマストを

具体的に今、法人向けにどんな「What’s next?」が進行していますか。

荒木 まず取り組んだのが「クロスセル営業」です。統合の話は昨年から検討されていましたので、昨年暮れから互いの商材を勉強して一緒に提案に行く活動をスタートしています。
 中堅企業の場合、システム担当とネットワーク担当が同じというケースが多いですから、「ワンストップで話ができて、ありがたい」といった声をいただいています。
 2つめに取り組んだのが、互いの商材を組み合わせた新商品の開発です。一例がセキュリティです。KSSOLは、セキュリティのコンサルティングや標的型メール訓練、脆弱性診断などが得意です。一方、ケイ・オプティコムには関西2府4県のうち、3つの自治体のセキュリティクラウドをお引き受けしている実績があります。こうした互いの強みを掛け算して、企業内のセキュリティをフルサポートするソリューションの提案を始めており、すでに多くの商談が進んでいます。
 このほかにもKSSOLが提供していたOffice 365やPCの運用管理と、mineoの閉域接続サービスを組み合わせたテレワークパッケージサービスだったり、互いが持っていた商材をパッケージングするだけでも「使いたい」という声をお客さまから頂戴します。「いろいろできるね」という実感を掴み始めているのが最近の状況です。

「情報」と「通信」の一体提供という成長戦略に、確かな手応えを得ているわけですね。

(聞き手・太田智晴)
続きは本誌をご覧下さい

定期購読申込ページへ

単部買いページへ

テレコミュニケーション定期購読のご案内

TOPICS注目の記事

インタビュー

丹康雄 氏
北陸先端科学技術
大学院大学
副学長 教授

スマートホームを「公共財」に
震災きっかけに新しい地方の形