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Interviewインタビュー

2019年10月号

5G時代の新価値をトータル提供
インフラだけでは投資回収できない

松本 端午 氏

松本 端午 氏
(まつもと・たんご)
1956年5月生まれ。80年4月に富士通入社。2006年6月経営戦略室長、09年4月ネットワークビジネスグループ事業企画本部長、12年4月執行役員、14年4月執行役員常務、15年4月執行役員常務/CTO&CIO、16年4月 執行役員常務(現在に至る)。テクノロジーソリューション部門サービスプラットフォームビジネスグループ副グループ長(ネットワーク事業改革担当) 兼 ネットワークソリューション事業本部、共通開発本部担当

富士通
執行役員常務
松本 端午 氏

「歯を食いしばってでも、国家の基盤であるネットワークインフラを支えていく。しかし、それだけでは一企業としては投資を十分に回収できない」──。富士通の「ネットワーク事業改革」の指揮を執る松本端午常務はこう語る。では、富士通はどんなネットワーク事業戦略を描いているのか。エリクソンとの提携、 ローカル5G、キャリア網のオープン化などについて聞いた。

5Gによって、どんな社会が到来すると期待していますか。

松本 技術の在りようが、今までとは大きく変わると期待しています。
 どういうことかと言うと、従来はAIはAI、サーバーはサーバー、OSはOSと、それぞれの技術が個別のクロック(時間)で独自に進化してきました。
 しかし、5Gになると、これらが高速大容量かつ低遅延のネットワークでつながることになります。
 これまで個別に進化してきたものが、5Gというビッグバンによって、新しい価値を綜合的に生み出す時代がやってくると期待しているのです。

それは具体的にはどんな時代なのでしょうか。

松本 本当の分散コンピューティングの時代が初めてやってきます。
 その1つ前の段階として登場したクラウドは、1つの固まりからサービスを取り出すようなイメージです。これに対して、分散コンピューティングでは、ネットワーク上に散在しているコンピューティングリソースを、利用シーンに合わせて最適な形で使えるようになります。
 これにより、時間と空間の概念も大きく変わるのではないかと思っています。高精細映像による臨場感あふれる遠隔コミュニケーションといった話だけではありません。
 従来は、デジタルはデジタルの世界、フィジカルはフィジカルの世界と区分されていました。しかし近頃は、リアルワールドとバーチャルワールドとあまり言わなくなりましたよね。私たちにとっては、どちらも「リアル」になっているからです。
 例えば、私が心臓を病んだとします。心臓はアナログなものですが、デジタルの世界でシミュレートすることで、リアルの世界での安全性も高めることもできます。5Gという仕組みを使うことで、今まで実現できなかったことが可能になります。

5Gを介してデジタルとフィジカルの世界、分散する様々なコンピューティングリソースやテクノロジーが超高速で結び付き、これまでにない現実が誕生するということですか。

松本 そうです。一気に新しい価値を生み出せるようになると考えています。

NW事業改革の柱は?

そうしたなか、富士通はどんなネットワーク事業戦略を描いているのでしょうか。松本常務のリードの下、ネットワーク事業改革に取り組んでいますね。

松本 私どもが一番支えなければならないのはネットワークインフラです。キャリアのお客様のインフラを支えていくことが、富士通の最も大事な責務であります。
 ただし、そこだけのビジネスでは、大きな価値に直接つながりにくくなっています。これはキャリアの悩みと似ているところがあります。今はインフラを使って新たな価値を生み出してナンボの世界です。つなげるだけで対価がもらえた“黒電話”の時代のモデルとは全く異なっています。
 つまり、キャリアのインフラを支えるだけでは、我々としては投資を十分に回収できません。ネットワークインフラ事業を続けるためには、巨額の先行投資が必要であり、一企業としては投資の回収が厳しい状況にあります。
 ネットワークインフラの世界は標準化が進んでおり、海外製品でも当然使えます。昔のように「国家の基盤であるネットワークインフラは日の丸でもって守ろう」という気持ちが仮に残っていても、経済活動としてはそうなりにくいです。
 富士通は、歯を食いしばってでも、日本の基盤であるネットワークインフラを支えていきます。しかし、そこで終わってしまっては経営的に厳しい。ですから、ネットワークインフラの上の業種向けサービスまで一気通貫で提供することで、新しい価値を組み上げていかなければなりません。

投資の効率化・最適化に向けては、2018年10月にエリクソンとの戦略的パートナーシップを発表しています。日本市場向け5G基地局の共同開発をはじめ、様々な協力を進めていく方針ですね。

(聞き手・太田智晴)
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