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Interviewインタビュー

2019年11月号

「社会インフラ×IoT」は新段階へ
ディープラーニングをエッジに実装

坪井 正志 氏

坪井 正志 氏
(つぼい・まさし)
1983年3月慶應義塾大学工学部管理工学科卒業後、同年4月OKI入社。2002年4月マルチメディアメッセージングカンパニー・プレジデント。05年4月情報通信事業グループIPシステムカンパニー・プレジデント。08年4月グローバルビジネス本部長。09年4月OKIネットワークス取締役。11年4月通信システム事業本部企業ネットワークシステム事業部長。15年4月執行役員、16年4月情報通信事業本部副本部長兼企業ソリューション事業部長。17年4月常務執行役員、情報通信事業本部長(現)、19年6月取締役常務執行役員(現)

OKI
取締役常務執行役員 情報通信事業本部長
坪井 正志 氏

「社会インフラ×IoT」を旗印にした成長路線を軌道に乗せたOKIが、次のフェーズに突入する。カギを握るのは、「これからのOKIを引っ張っていく戦略的商品」だというAIエッジコンピューター「AE2100」。ディープラーニングの推論がエッジで容易に実現できるようになり、IoT/AIの社会実装がいよいよ本格化すると坪井正志常務は意気込む。

情報通信事業本部長に就任して3年目を迎えましたが、情報通信事業は業績好調ですね。昨年度は増収増益、今年度はそれをさらに大きく上回る勢いです。

坪井 我々は2016年、それまで別々だった情報系と通信系、公共系の組織を1つの事業本部にまとめた現在の組織体制に移行しました。そして、私が事業本部長に就任した翌年の5月に発表した「中期経営計画2019」において、成長戦略の柱として打ち出したのがIoTです。
 OKIという会社は従来からICTによる社会課題の解決に取り組んできましたが、デジタルトランスフォーメーション(DX)の時代になり、IoTなどの技術のレベルも非常に上がってきました。そこで「社会インフラ×IoT」という軸で注力分野を決めて、ビジネスをどんどん成長させていこうと考えたわけです。
 今年度は中期経営計画の最終年度ですが、計画以上に進んでいるという認識を持っています。

「社会インフラ×IoT」路線は、しっかり軌道に乗ったと。

坪井 そうですね。中期経営計画を発表した当時は、まだSociety 5.0やSDGsへの関心はそれほど高くありませんでした。しかし、今やグローバルでも日本でも、ICTで社会課題を解決しようという動きが各業種で加速しています。
 そうしたなか、「ベース事業」と呼んでいる既存ビジネスは大変好調ですし、IoTを軸とした「成長事業」での新しい取り組みも順調に進んでいます。

10月3日には「成長事業」における新たな打ち手として、AIエッジコンピューター「AE2100」を発表しました。狙いは何ですか。

坪井 IoTのPoC(コンセプト実証)に数多く取り組むなか、解決しなければならない課題が明確になりました。エッジ側でAIをしっかりと動かせるコンピューターが「どこにもない」という課題です。

そうなのですか。

坪井 ここで言っているAIとは、分かりやすく説明すると、ディープラーニングの推論です。

機械学習/ディープラーニングは、AIの性能を向上させる「学習」と、それで出来た学習済みモデルを用いて結果を出す「推論」の大きく2つのプロセスに分かれています。

坪井 さすがに学習は、クラウド側で行えばいいと思います。しかし、推論はデバイスに近いエッジ側で実行した方が、よりリアルタイムに結果をフィードバックできますし、ネットワークの負荷も少なくできます。さらにセキュリティのため、外部にデータを出したくないというニーズもあります。エッジ側の業務特化型システムを強みにしているOKIとしては、そのためエッジコンピューティングが非常に重要であると考えてきました。
 ところが、現在ある産業用コンピューターなどでは、パワーが足りないのです。

ディープラーニングの推論を行うのに十分な処理能力を有したエッジコンピューターが存在しないということですか。

坪井 そうです。これまであったのはIoTゲートウェイ的な発想の製品で、AIを動かすためのエッジコンピューターはありませんでした。
 もちろんGPUをたくさん搭載したサーバーであれば、AIはしっかり動きます。しかし、そんなものをエッジにばら撒くわけにはいきません。エッジでは、コストパフォーマンスが重要だからです。
 工場をはじめ、いろいろな産業用途での活用を考えますと、インターフェースも重要です。ノートPCは、RS-232CやRS-485といったレガシーなシリアルインターフェースを搭載していません。また、耐環境性も当然ながら必要です。
 ディープラーニングは非常に強力な技術であり、データさえあれば、いろいろなAI処理が実現できる時代になっています。しかし、エッジで推論を行うためのハードウェアプラットフォームだけがなかったのです。
 ただ、それも無理はありません。「AIエッジ」という市場自体がこれまで存在しなかったのですから。

そこで自ら作ることにしたというわけですね。

坪井 そうです。「市場になかったから」というのが一番の動機です。私たちはこの3年間、数多くの顧客とDXに関する共創に取り組むなか、AIエッジコンピューターの必要性を強く感じてきました。現場の本当のニーズを把握していたからこそ、AE2100を開発したのです。

ディープラーニング性能は25倍

それではAE2100の特徴を教えてください。

坪井 まずAIの処理性能に関しては、AI専用のアクセラレーター「インテル Movidius Myriad X VPU」を搭載しました。AE2100は、エッジ向けAIアクセラレーターとして最高レベルの推論性能を持っているMyriad Xを2枚搭載しており、そのディープラーニング推論性能は、CPU単体での処理と比較すると当社の実測で25倍です。
 ハードウェアだけではなく、ソフトウェアの部分でもインテルさんとは密に連携しています。ディープラーニングの推論環境を提供するインテルの「OpenVINO ツールキット」も搭載しており、これらのアーキテクチャーを持ったAIエッジコンピューターは国内では初めてとなります。
 TensorFlowやCaffe、MXNetといった一般的なディープラーニングフレームワークで作成したAIの学習済みモデルをOpenVINOのオプティマイザーで変換すれば、AE2100上でMyriad Xを活用したAI推論処理が実行できます。

既存の学習済みモデルも簡単に有効活用できるのですね。

(聞き手・太田智晴)
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