2020年12月号
人の打率上げるのがデジタル
リモートを価値に変える
手島主税 氏
(てしま・ちから)
1998年日本ヒューレット・パッカード入社。Hewlett-Packard Company 米国カリフォルニア州赴任 グローバルアライアンスプログラムマネージャー、ビジネスクリティカルシステム事業本部長、HPサーバー事業統括本部長などを経て、2014年に執行役員 HPサーバー事業統括本部長。2015年セールスフォース・ドットコムに入社し執行役員 アライアンス副本部長、2016年常務執行役員 アライアンス本部長。2017年12月、日本マイクロソフトに入社し、執行役員 常務 クラウド&ソリューション事業本部長に就任
日本マイクロソフト 執行役員 常務
クラウド&ソリューション事業本部長 兼
ワークスタイル変革推進担当役員
手島主税 氏
「お客様との接し方のレベルが劇的に向上した」──。以前から当たり前のようにリモートワークを実践してきた日本マイクロソフトだが、コロナ禍の中、社員の生産性がさらに向上する「大きな行動の変化があった」と手島常務は明かす。社員1人ひとりのイノベーションの「打率」を上げるのがデジタルの役割と言う同氏。デジタルトランスフォーメーションの次のカギは「3つの軸に収まる」と語る。
●「2年分のデジタルトランスフォーメーションが2カ月で起きた」とサティア・ナデラCEOが言った通り、新型コロナウイルスは世の中の変化を大きく加速させるきっかけとなりました。
手島 コロナ以前から当たり前のようにリモートワークを行ってきた我々でさえも、新たな気付きや大きな行動の変化がありました。
どういうことかと言うと、圧倒的に生産性が上がっています。コロナ以前から、これだけデジタルを活用して鍛錬してきた我々日本マイクロソフトがです。
緊急事態宣言直後の4月中旬の我々の出社率は約0.5%です。日本マイクロソフトの中にも、オフィスへ出社するのが当たり前だった職種はあったのです。典型的なのがサポート部門です。しかし、そうしたメンバーも圧倒的なスピードで、在宅で業務に従事するようになりました。デジタルだと当然、無駄な移動時間はなくなります。隙間なくスケジュールを入れることができ、稼働率は非常に高まります。お客様との打ち合わせ時間は、約3倍に増えました。
ただその一方、1つひとつのアウトプットはどうなのか。例えば、全員がどれだけ高い意識、自らのオーナーシップを持って、会議に参加しているのか。今回のコロナで大きな学びがあったのは、この点です。
●リモートワークの拡大により、時間が効率化しただけでなく、質的にも大きな成長があったということですか。
手島 その通りです。お客様との接し方のレベルが劇的に向上したと思っています。
従来のお客様との接し方は、まず提案のためにお客様を訪問し、その後はMicrosoft Teamsやメールなどで情報共有しながら、また対面で会議して、といった形が多かったのですが、今は全部デジタルでこなす必要があるわけです。そうした中、どうやって継続的にコラボレーションし、お客様と一緒にアウトプットを生み出していくのか。Teamsを活用したお客様との有機的なコラボレーションのやり方に関して、これまで以上にいろいろな工夫を行い、我々自身も大きく成長しました。
仕事の「型」が変わり、「打率」が変わり、お客様との関係性も変わったということです。
Teamsは打率向上手段
●どのような工夫によって成長を実現したのですか。
手島 まず1つめとして、会議を行う前に届けるべき情報があると思います。
我々はCRMを活用し、お客様が興味を持たれているコンテンツを自動的にお客様と共有するトライアルを始めています。事前に興味を持たれているコンテンツをお渡しし、会議の前に議論する内容をお互いに整理しています。
もう1つは、お客様の要望にタイムリーに応えるためのプロジェクト体制の部分です。お客様を支援するにあたって、社内の様々な部門が関わります。日本マイクロソフトであれば、アカウント営業の部隊、クラウドの営業と技術の部隊、お客様におけるクラウド利用の定着化を専門にするカスタマーサクセスの部隊、サポートとデリバリーの部隊などが一緒になってお客様を支援しています。
その際、アカウント営業だけではなく、関係する社内の仲間全員がお客様の視点に立って課題を共有し、オーナーシップを持って能動的にアイデアなどを出していく──。そのための仲間づくりのため、Teamsの仕組みを活用し、例えばアカウント営業とお客様のTeams上での議論内容を仲間全員へ自動的にシェアしたり、ワークフローの工夫をしたりしながら、お客様とのつながり方を発展させてきました。
●多くの企業は今回、リモートワークでも「仕事は回る」と実感したと思いますが、それにとどまらず、顧客との関係性を進化させることも可能ということですね。他方、リモートワークが定着するなか、その負の側面も見えてきています。
(聞き手・太田智晴)
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