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Interviewインタビュー

2021年6月号

2030年に向けて新ビジョン
「CATV」から「地域DX」へ

渡辺克也氏

渡辺克也 氏
(わたなべ・かつや)
1961年12月生まれ。84年3月に慶應義塾大学 工学部を卒業後、4月に郵政省(現総務省)に入省。2015年7月総合通信基盤局 電波部長、2017年7月総合通信基盤局長、2018年7月総務審議官などを歴任。2020年6月に日本ケーブルテレビ連盟 理事長に就任

日本ケーブルテレビ連盟
理事長
渡辺克也 氏

昨年6月、日本ケーブルテレビ連盟の理事長に就任した渡辺克也氏は今、2030年に向けたビジョン作りに注力する。目指すのは、「CATV」から「地域DXの担い手」への変革だ。ローカル5Gという新しい強力な武器も活用しながら、地域のスマートシティ化などに貢献していくと意気込む。

ケーブルテレビの名前の通り、「有線放送」からスタートしたCATV事業者ですが、世の中が変化していくなか、様々な変革を遂げてきました。

渡辺 ご承知の通り、ケーブルテレビは難視聴対策として始まりました。最初に起きた大きな変化は1980年代のスペース・ケーブルネット、都市型ケーブルテレビ等による多チャンネルサービスでしたが、最も大きな変化はインターネットです。1990年代のインターネットの登場を受けて、ケーブルテレビでもインターネットサービスの提供を開始しました。当時は、放送・インターネット・固定電話の3つを合わせて「トリプルプレイ」と言っていましたね。
 今、ケーブルテレビの産業規模は、約1兆3000億円ありますが、その約半分が「通信関係」となっています。
 さらに現在は、地域BWA、ローカル5G、MVNOなどの無線通信事業にも取り組んでおり、「ケーブルテレビ」だけにとどまることなく、無線を含めた総合通信事業者としての色彩がいっそう強まっています。

時代の変化とともに、その役割を拡大してきたと言えますが、今後はさらにどこを目指すのでしょうか。

渡辺 私が日本ケーブルテレビ連盟の理事長に着任したのは昨年6月、新型コロナの感染拡大の真っ只中のことでした。着任後訪れた地域ではケーブルテレビへの期待はこれまで以上に高まっており、実際、CATV事業者への引き合いは増えています。
 1つは、遠隔教育向けのインフラをはじめとする教育分野のニーズです。地元密着の事業者であること、第三セクターの事業者が多いこと、といったケーブルテレビの強みを活かし、自治体向けに多くのサービスを提供しています。
 もう1つの要因は、巣ごもり需要です。CATV事業者は、Netflix等のOTTと提携してサービス提供を行っており、家庭でケーブルテレビやネット配信動画を楽しむ方の増加に対応しています。また、テレワークやリモート授業等が進んだことにより家庭内のネット環境整備の需要も増えました。
 コロナ禍の現在、「移動できない社会」を強いられていますが、これを契機にまさに今、移動しなくても様々なことが行える「移動しなくていい社会」が実現しようとしています。この「移動しなくていい社会」の到来は、ある意味、私達にとって大きなチャンスであり、CATV事業者に期待される役割も変わってくると考えています。
 そこで今、日本ケーブルテレビ連盟では、「10年先を見据えてケーブルテレビの将来について議論しよう」と、2030年に向けたビジョンの策定作業を進めており、6月にまとめる予定です。

2030年へ6つの柱

2030年のCATV事業者の姿をどう描いているのですか。

渡辺 地域のDXを誰が担うのか──。大手ベンダーの役割だと思われている方も少なくないと思います。しかし、今回のコロナ禍でケーブルテレビが果たしてきた役割や、これまでのケーブルテレビと自治体との関係を踏まえると、CATV事業者が地域DXで重要な役割を果たしていくべきです。
 CATV事業者が持っているのは、ケーブルテレビだけではありません。インターネットも提供していますし、無線という武器もあります。これらを活かして、「地域DXの担い手」になろうと議論しています。
 具体的には大きく6つの柱を考えています。
 1つ目は、私たちの本丸である「放送」です。テレビのネット配信サービス「NHKオンデマンド」と「TVer」がすでに始まっています。また、テレビ番組の著作権手続きが簡素化される著作権法の改正が国会に提出されています。こうなるとケーブルテレビとしても、ネット配信の仕組みを提供することが1つの役割になっていきます。コミュニティチャンネル(コミチャン)のネット配信など、ローカル版のネット配信サービスです。
 2つ目は「コンテンツ」です。4Kの自主放送にコミチャンと、これまでも独自コンテンツを提供してきましたが、もっと積極的にやるべきです。例えば、地元の大学と組んだ教育コンテンツ配信などが考えられるでしょう。
 今回のコロナ関連でも、自治体や地元企業などから「コンテンツを作りたい」というニーズは多くありました。一般的な映像制作会社に依頼した場合、かなり高くなりますが、CATV事業者ならリーズナブルなコストで制作できます。加えて、ただコンテンツを作るだけではなく、地元のケーブルテレビでの放送から配信のアセットまで対応することもできます。
 感染拡大防止のため、卒業式に保護者の方が参加できないといった事例もありましたが、CATV事業者が式の模様を撮影して放送することで、参列できない保護者の方に卒業式の様子をご覧いただくこともできました。
 コンテンツを制作して放送する。コンテンツとインフラの両方を持っていることは、CATV事業者の強みです。

確かに、この両方を持っている事業者は限られていますね。

(聞き手・太田智晴)
続きは本誌をご覧下さい

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