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Interviewインタビュー

2023年10月号

6Gはテレコム会社のみではない
クロスインダストリーの形へ

寳迫巌 氏

寳迫巌 氏
(ほうさこ・いわお)
1993年東京大学大学院理学系研究科修了、博士(理学)。同年日本鋼管(現JFE)入社。1996年郵政省通信総合研究所(現NICT)入所。2013年NICT 未来ICT研究所長、2020年ワイヤレスネットワーク総合研究センター長を経て、2021年4月よりBeyond5G研究開発推進ユニット長(現職)。第10回産学官連携功労者表彰総務大臣賞(2011年)。テラヘルツ帯の半導体デバイス・カメラ・ワイヤレスシステム等の研究開発に従事

情報通信研究機構(NICT)
Beyond5G研究開発推進ユニット長
テラヘルツ研究センター長(兼務)
寳迫巌 氏

「Beyond 5G/6Gを1つの会社、1つの組織、1つの国だけで作り切ることは難しい」。そこで日本の6G研究開発をリードするNICTの寳迫氏が唱えるのが、様々な産業に跨ったクロスインダストリーなオーケストレーターの必要性だ。無線通信の進化のカギを握るミリ波・テラヘルツ波については、「使い方の“正解”をしっかり考え直すべき時期に来ている」と話す。

Beyond 5G/6Gではどんな変化が起きますか。

寳迫 4Gや5Gまでは基本的にテレコム会社のみでやってきました。
 しかし、Beyond 5G/6Gでは、いろいろなところにあるリソースを上手に協調動作させるための仕組みを導入する必要があり、1つの会社、1つの組織、1つの国といった形だけでは作り切ることが難しいと考えています。
 NICTが今年3月に発行した「Beyond 5G/6G ホワイトペーパー 第3版」では、Beyond 5G/6Gの機能アーキテクチャを図表のように示しています。
 Beyond 5G/6Gの時代には、様々なリソースがサイバー空間にもフィジカル空間にも存在します。こうしたリソースを調整する機能がオーケストレーターです。
 現在の通信システムにもオーケストレーターは入っていますが、Beyond 5G/6Gで求められるのは、そうした狭い意味でのオーケストレーターではありません。我々は「クロスインダストリーなオーケストレーター」と呼んでいますが、様々な産業に跨って張り巡らされるオーケストレーターです。
 オーケストレーターの上には、さらにサービスイネーブラーがあります。これはある種のミドルウェアとして働く共通機能群です。
 もう1つBeyond 5G/6Gの大きな特徴としては、フィジカル空間が挙げられます。宇宙や海洋を含んだ全地球的/多層的なネットワークがBeyond 5G/6Gです。5Gを単に拡張した、テレコム会社中心のネットワークではありません。
 価値の形成はフィジカル空間のみで決まらず、サイバー空間も加えたサイバーフィジカルシステム(CPS)が重要になることも意識する必要があります。

Beyond 5G/6GがCPSを支える役割を担うには、アーキテクチャから変わる必要があるのですね。

寳迫 なかでも非常に重要なのが、クロスインダストリーのオーケストレーターです。これにより、余っているリソースの多種多様な組み合わせが生じて、今は実現できていない“先の世界”へと進むことができます。
 例えば、夜間の活動量は通常下がるため、ピークとなる昼間の活動量に合わせて用意された様々なリソースが余ります。
 しかし、地球の裏側は、活動量の多い昼間です。国を跨いで、余ったリソースを上手に使えるようになる、といったことを考えています。
 また、アメリカなどでは、スタジアムには大体クルマで行きます。クルマには電源、CPU、メモリー、センサーといったリソースが載っていて通信もできますが、今はこうしたリソースが駐車場に放っておかれています。  最近のスタジアムでは、直前のプレイを手元で別角度から観られるサービスなどが提供されていますが、そのためのサーバー設備をスタジアムに用意しておくのではなく、駐車場にあるリソースを活用するといったことも実現できるかもしれません。
 他にも、今の基地局はずっと電源が入りっ放しだと思いますが、人の分布に応じて、必要な基地局の電源だけをオンにすることもできるのではないかなどと考えています。

確かに、こうなるとテレコムだけの世界ではありません。

(聞き手・太田智晴)
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