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Interviewインタビュー

2023年11月号

ロードバランサーだけじゃない
「New F5」はSaaSベンダーへ

大野欽司 氏

大野欽司 氏
(おおの・きんじ)
1992年、日本国際通信(現ソフトバンク)に入社、ニューブリッジネットワークス(現ノキア)、MCIワールドコム(現ベライゾン)、データクラフトジャパン(現NTTグループ)、ブロケード コミュニケーションズ システムズなどを経て、2017年にエクストリームネットワークスに入社し、執行役員社長、アジア地域サービスプロバイダー担当バイスプレジデント等を務めた。2023年3月より現職

F5ネットワークスジャパン
代表執行役員社長
大野欽司 氏

アプライアンスベンダーからSaaSベンダーへの転換を成長戦略として進めるADC/ロードバランサー市場のリーダー、F5ネットワークス。海外と比べて出遅れている国内の変革を加速させるため、今年3月に日本法人社長に就任した大野欽司氏に、「New F5」が目指す姿を聞いた。

F5ネットワークスジャパンの社長に2023年3月に就任してから、半年あまりが経過しました。

大野 F5に入社したきっかけは、アジア太平洋・中国・日本担当のシニアバイスプレジデントであるアダム・ジュッドからの直接の誘いです。私はF5に入社する前はエクストリームネットワークスの日本法人社長、その前はブロケード コミュニケーションズ システムズで営業本部長を務めていましたが、アダムはブロケード時代の上司です。
 「F5はアプライアンスビジネスからソフトウェアビジネス、ネットワークベンダーからSaaSベンダーへの変革を推し進めているが、なかなか日本ではうまくいっていない。やってくれないか」と誘われたのです。
 エクストリームでも直近、SaaSやソフトウェアビジネスの展開に力を入れており、ある程度の成功を収めてきました。その実績が買われたのだと思っています。

海外ではすでに50%超

F5のグローバルでのビジネス状況について教えてください。

大野 今年8月に発表した2023年度第3四半期決算では、マーケットの予想を上回る売上と利益を達成するなど、F5の業績は順調に伸びています。
 特筆すべきは、グローバルではソフトウェア/SaaSビジネスがしっかりと拡大していることです。売上比率50%が1つの目標になっていたのですが、すでに50%を超えました。いろいろなネットワークベンダーがソフトウェア/SaaSビジネスへの転換にチャレンジしていますが、現時点で50%以上を達成できているのは、おそらく我々くらいではないでしょうか。
 ソフトウェア/SaaSビジネスの拡大は、F5の成長戦略そのものです。その実現のために近年、Volterra、NGINX(エンジンエックス)、Shape Securityと様々な企業を買収しており、その結果、ソフトウェア/SaaSビジネスの基礎ができ上がっています。

現在、F5のソリューションはどのようなラインナップで構成されているのですか。

大野 大きく3つの柱からポートフォリオが構成されています。
 1つは、昔ながらのロードバランサーを中心としたBIG-IPシリーズです。2つめは、モダンアプリケーション向けのNGINXです。

NGINXは、コンテナやマイクロサービスとの相性にも優れたオープンソースのWebサーバーソフトウェアですね。リバースプロキシー、ロードバランサーなどの機能を提供することもでき、商用版のNGINX Plusもあります。

大野 そして3つめは、SaaSであるF5 Distributed Cloud Servicesです。これはVolterraのソリューションが中心となっており、WAAP(Web Application and API Protection)、マルチクラウドネットワーキング(MCN)、Kubernetesのアプリケーション実行基盤という大きく3つのユースケースが現状あります。
 F5 Distributed Cloud Servicesを利用すると、マルチクラウドを物理的に接続しながら、その上でWAF(Webアプリケーションファイアウォール)やAPIを攻撃から守るAPIセキュリティを展開したり、コンテナやマイクロサービスベースのアプリケーション間の接続性を一元的に管理することなどができます。

買収によってポートフォリオの拡充を急いで進めてきた背景には、どういったアプリケーション側の変化があるのでしょうか。

(聞き手・太田智晴)
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