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Interviewインタビュー

2023年11月号

正解のないIoT/DX時代、
アジャイルが全領域で重要に

鷲﨑弘宜 氏

鷲﨑弘宜 氏
(わしざき・ひろのり)
1976年生まれ。99年早稲田大学理工学部情報学科卒業、2001年同大学院理工学研究科情報科学専攻修士前期課程修了、03年博士後期課程修了、博士(情報科学)。04年国立情報学研究所 助手、08年4月早稲田大学 基幹理工学部 准教授、同年10月同大 グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所 所長、16年4月早稲田大学 基幹理工学部 教授。現在IEEE Computer Societyの第一副会長を務めており、2025年に会長就任予定

早稲田大学 教授
IEEE Computer Society 2025年会長
鷲﨑弘宜 氏

ソフトウェア工学の第一人者であり、IoT/DX人材の育成にも力を注ぐ鷲﨑早大教授が、IEEE Computer Societyの会長選挙に当選した。IEEEの中でも最大のソサエティであるComputer Societyの最重要テーマは、気候変動問題をはじめとする社会課題解決──。デジタルテクノロジーによって、サステナブルな社会を実現していくうえで大切なこととは何か。鷲﨑教授に話を聞いた。

IEEEのComputer Societyの2025年会長に選出されました。

鷲﨑 米国に本部を置くIEEEは、電気、電子、情報などに関する学術研究団体です。他の分野を見渡しても世界最大級と言っていい学会であり、IEEEの中には電力、通信など様々な技術分野を扱う約40のソサエティがあります。「学会の中の学会」のようなものですが、Computer SocietyはIEEEにおいて最も大きなソサエティであり、コンピューティングと情報処理に関する研究や教育、さらには標準化などを含めた社会展開までを扱っています。

IEEE Computer Societyは様々な重要テーマに取り組んでいると思いますが、なかでも重視されていることは何でしょうか。

鷲﨑 それは社会課題の解決であることに間違いありません。例えば気候変動をはじめとした持続的社会の実現が挙げられます。コンピューティングそのもののグリーン化と、コンピューティングを活用した社会のグリーン化の両方を加速させていくことが、IEEE Computer Societyの重要なミッションの1つとなっています。
 そうした社会課題の解決を推進していくにあたって、私が強く意識していることはクロスディシプリン、さらにはトランスディシプリンです。ハードウェアやソフトウェア、通信といったようにディシプリン(専門領域)に分けてではなく、ディシプリンを組み合わせた、あるいはディシプリンを超えた取り組みが、複雑に問題が絡み合う社会課題の解決には欠かせないからです。
 気候変動への取り組み1つをとっても、ハードウェア、ソフトウェア、AI、通信、エネルギー、社会との関係など、いろいろな領域を融合的にクロスして見ていかなければなりません。

不確実性を許容する

サステナビリティな社会の実現に向けて、現実世界の状況をサイバー空間で分析・フィードバックして最適化を図るCPS(サイバーフィジカルシステム)などの検討が進んでいます。CPSのようなシステムは自ずと複雑化・大規模化していくかと思いますが、システム障害が発生した際の影響も今まで以上に甚大です。システムの品質、信頼性、開発・運用の効率をどう担保していくかが一層重要になっていきますが、鷲﨑先生の専門であるソフトウェア工学は、まさにこうしたことを扱う学問ですね。CPS時代、システムの開発・運用はどう変わっていくべきでしょうか。

鷲﨑 私の見立ては2つあります。
 1つは不確実性を許容できる、あるいは不確実性を前提とした品質保証の必要性です。
 例えば広義のIoTシステムではAI/機械学習が基本要素の1つとなっていますが、それは不確実なことを扱うからです。逆に言うと、不確実だからAI/機械学習が役立つのであって、不確実性がなければルールベースで決定的に処理すればいいわけです。
 しかし、自動運転のように、不確実性に伴う不具合が許されない側面を持つクリティカルなシステムもあります。こうしたシステムには、明確に検証可能な形で、決定的なルールを定めておかなければならない領域があります。
 つまり、これからは不確実で非決定的なものと、決定的なルールベースのものをきちんと組み合わせていくことが必要です。そうした組み合わせは、不具合や問題の影響伝搬を防ぐモジュール化がきちんとなされていてこそ成立します。そうした従来からの設計の原則と、不確実な時代の考え方とを併用したアーキテクチャの研究が今後重要になっていきます。
 もう1つは、そのためのプロセスやマネジメントは、ますますアジャイルになっていく必要があるということです。問題をいかに早くビジブルにしていくか、そして問題を他になるべく影響しない形でいかに素早く修正していくかが大切です。
 長時間かけて、決めた通りに硬直的に開発し、最後の最後に世に出すという時代ではもうありません。俊敏かつ柔軟に開発し、フェイルファストで核となる価値を世に早く出し、フィードバックを受けながら小刻みに変えていく。アジャイルは、システムのあらゆる領域において重要なキーワードです。

学術の世界では、どんな取り組みが行われているのですか。

(聞き手・太田智晴)
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