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Interviewインタビュー

2024年6月号

生成AIでオンプレミス加速
これから景色が変わり始める

江﨑浩 氏

江﨑浩 氏
(えさき・ひろし)
東京大学大学院情報理工学系研究科教授。1987年九州大学工学部電子工学科修士過程修了。同年4月東芝に入社。1990年米国ベルコア社、1994年コロンビア大学にて客員研究員。1998年10月東京大学大型計算機センター助教授、2001年4月東京大学情報理工学系研究科助教授などを経て現職。WIDEプロジェクト代表、東大グリーンICTプロジェクト代表、MPLS-JAPAN代表、JPNIC理事長、日本データセンター協会 副理事長兼運営委員長などを務める。工学博士(東京大学)

東京大学 教授
江﨑浩 氏

生成AIの普及が加速するなか、データセンターはどこへ向かうのか。インターネット業界やデータセンター業界を長年リードしてきた東京大学の江﨑教授は、「ここ5年くらいで状況は大変ドラスティックに変化していく」と見通す。オンプレミス向けデータセンターの復権、データセンターの地方分散、IOWNまで、縦横無尽に江﨑教授が語った。

生成AIが登場し、データセンターの重要性がますます高まっています。

江﨑 生成AIは2つのディレクションを持っています。ものすごく大規模なデータセンターで動かしていく方向と、エッジで動かしていく方向の2つです。
 これからはエッジ、つまりオンプレミスが大変な勢いで加速していくことになるでしょう。
 なぜなら、パブリッククラウドに企業の機密情報を置くことは、残念ながら難しいからです。生成AIの有効性の高さが広く認識され、センシティブなデータを生成AIに学習させたいというニーズが急拡大しています。ジャイアントプレイヤーは「ユーザーから預かった情報は読みません」と言いますが、事故もありますから信用するわけにはいきません。
 加えて、OpenAIやグーグルなどが開発する巨大なLLMを利用しなくても、比較的小さなサイズのLLMを自前で開発できることも分かってきました。
 そこで、オンプレミスで生成AIを動かそうという方向へ振れてきたと観測しています。

米マイクロソフトが今年4月、日本国内のAIおよびクラウド基盤の増強に今後2年間で約4400億円の投資を行うと明らかにするなど、パブリッククラウド事業者による大規模投資が相次いで発表されていますが、そうした方向性だけではないということですね。

江﨑 もちろんジャイアントプレイヤーのクラウドは今後も増えていきます。ただその一方で、クリティカルな情報に関してはプライベートクラウドと、ハイブリッドな使い方になっていくでしょう。
 パブリッククラウドの利用を積極的に進めていくなか、多くの企業は価格面や可用性などで課題も経験しました。そこで「オンプレミスに戻ろう」という動きが起きていたところに、ちょうど登場したのが生成AIです。
 さらに、インテルが生成AIの能力をPCにどんどん搭載していくなど、本当のエッジステーションでも生成AIを活用した軽めのアプリケーションが動いていきますから、ここ5年くらいで状況は大変ドラスティックに変化していくと思っています。

コンテナ型DCでデジタルツイン

とすると、ハイパースケールデータセンター以外の領域でも様々なチャンスが生まれそうです。

江﨑 日本のデータセンター産業は今、巨大なプレイヤーにどんどん浸食されていますが、ホスティングに近いクラウドサービスもこれから堅調に伸びていくでしょう。
 ここ最近、データセンターの建設コストは大変高騰しています。かつては数億円だったのが、今は100億円、場合によっては1000億円といった話になっています。
 1億円投資の30年償却だったら普通にできますけど、1000億円投資の30年償却は痺れますよね。
 したがってプレイヤーが変わってきています。一例が不動産デベロッパーです。数億円のデータセンターには見向きもしませんが、社会インフラに占めるデータセンターの比重が高まるなか、不動産デベロッパーのポートフォリオにデータセンターが入り出しています。
 そのため、小さなデータセンター事業者はなかなか大変でしたが、生成AIのおかげで、オンプレミスのニーズが高まりました。
 オンプレミス向けのデータセンターは規模が小さく、まだまだ空白地帯です。しかも、空冷ではGPUサーバーはもう厳しいため、実は古い施設を活かしやすくもなります。空調をいじって、古いデータセンターの冷却効率を向上させるのは大変ですが、水冷は単純に水を流せばいいので、床荷重が合えば導入できるのです。

古いデータセンターでも、水冷を導入することで、生成AI需要を取り込んでいくことが可能なのですね。

江﨑 初期投資があまり要らず、小さなスペースでもいけます。
 もう1つデータセンターの建物関連で注目しているのが、モジュール化です。日本でもIIJなどが始めていますが、中国では大変多くなっています。
 なぜモジュール化されたコンテナ型データセンターがいいかというと、職人が要らないのです。ラックから会議室、階段などまで入ったコンテナ型データセンターを、ロボットを使って工場で製造します。

データセンターの建設コストが高くなった理由の1つが、人手不足による人件費高騰ですが、コンテナ型なら省人化できますね。

(聞き手・太田智晴)
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