• トップページ
  • テレコミュニケーションとは
  • バックナンバー
  • 定期購読申込
  • 広告出稿の案内
  • 取り扱い書店
  • お問い合わせ

Interviewインタビュー

2024年11月号

AIの余剰でRANが動く世界へ
仲間と一緒に世の中を前進

湧川隆次 氏

湧川隆次 氏
(わきかわ・りゅうじ)
政策・メディア博士(慶應義塾大学・2004年取得)。2013年にソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)に入社。日米で活躍し、2016年より先端技術開発本部 本部長を経て、2022年より現職。先端技術研究所を率いて、5G/6G、自動運転、HAPS、AI、量子技術など、ソフトバンクの新規技術検証や新規事業開発を担当。著書に「アンワイアード デジタル社会基盤としての6Gへ」「ITの正体」「MobileIP教科書」など

ソフトバンク
執行役員 先端技術研究所 所長
湧川隆次 氏

「『出来上がった技術を買ってくる』では遅い」。ソフトバンクが先端技術研究所を立ち上げた大きな理由の1つだ。今、グローバルの主要プレイヤーと一緒に注力するのがAI-RANアライアンスの取り組み。湧川所長は、AI-RANで目指す世界が実現すれば、「我々の設備投資の考え方が大きく変わることになる」と話す。

ソフトバンク 先端技術研究所が2022年4月に設立されて約2年半が経ちました。あらためて設立目的を教えていただけますか。

湧川 ソフトバンクは事業会社ですので、事業のための技術開発を行う部署は以前からありましたが、「研究所文化」はありませんでした。「10年かけて新しい技術を作るのだったら、今その技術を持っている会社を探して買ってこい」というのがソフトバンクです。
 しかし、ソフトバンクも、企業規模が大きくなるにつれ、「未来への投資のため、やはり研究開発はすごく重要」と考えるようになりました。
 加えて、世の中の技術発展のスピードがものすごく速くなったこともあります。箱物のハードウェアからデジタルのソフトウェアの時代になって、イノベーションのサイクルがこれほど速くなると、「出来上がった技術を買ってくる」では遅いのです。新しい技術を自前で作ったり、自ら切り拓いて発掘していく必要があります。
 そこで研究所を立ち上げたのですが、他と違うのは、我々の活動のゴールは「技術を使って収益を上げること」であることです。そこは研究所になっても変わっていません。

では、研究所になって大きく変化したことは何ですか。

湧川 途轍もなく変わったのですが、それはなぜかと言うと、以前は事業開発の工程の中で研究開発していたので、できた技術を外部に出すことは、あまりやらなくてよかったのです。事業が世に出れば開発した技術も世に出ますし、事業がなくればなかったことになります。
 ところが研究所になると、ソフトバンクの“顔”として、「どんな未来を描いているのか」を外部へ発信することが新しいミッションとして加わります。アライアンスなど、外部の方をグローバルに巻き込みながら活動することも研究所になってから増えました。

HAPS商用化へのプライド

「未来への投資」という言葉がありましたが、どんな未来の実現に力を注いでいますか。

湧川 日本の労働人口は減少していきますから、AIを軸にしたデジタル技術で補完し、競争力を高めていくことが大変重要です。では、AIを活かすための基盤は誰が作るのか。それは、モバイルや固定通信のインフラを持つ我々のミッションだと考えています。今後、AIを活用した新しい事業がいろいろ出てくるでしょう。デジタルデバイドを拡大させないためにも、AIを東京だけではなく、日本全国へしっかり展開できるデジタル基盤を実現していきます。
 もう1つは耐障害性です。人が作った技術ですし、自然災害も増えていますから、「落としません」とは宣言できません。しかし、なくては困るインフラです。壊れても早期に復旧する、あるいはHAPS(成層圏通信プラットフォーム)等を使って別の方法でインフラを提供するなど、耐障害性の向上にも注力しています。

ソフトバンクはHAPSに早くから取り組み、HAPS用周波数の拡大などにも大きく貢献してきました。NTTグループは2026年中にHAPSを商用化予定ですが、ソフトバンクの最近の状況を教えてください。

湧川 商用化に向けては、モーター、バッテリー、ソーラーパネルの“三種の神器”となるコンポーネントや、機体の開発にフォーカスしています。何をもって「商用」なのかの定義は様々ですが、我々には「24時間365日提供しなければテレコムではないだろう」というプライドがあります。日照時間の長い夏季だけ、災害時だけであれば、すぐに提供できますが、24時間365日飛ばすとなると機体も大きくなり、なかなか大変です。しかし、できるだけ早く商用化しようと一生懸命取り組んでいます。

AI-RANで30%の性能向上

6G関連の動きが活発化してきましたが、6G時代、何が大切ですか。

湧川 今の無線インフラをどうやって高度化していくかを考えたとき、活用できるのがAIです。しかも、別に6Gでなくてもいいのです。今の5Gも高度化できます。
 無線インフラは10年ごとにジェネレーションを刻んできました。従来は箱物の無線機を入れ替えていましたが、今はソフトウェアの時代ですから、5Gから6Gへの橋渡しでは、機器を入れ替えずに済む形へ変えていきたいです。5G時代はまだ10年の真ん中にも届いていません。AIを使って5Gをどんどん進化させながら、6Gへ辿り着きたいと思っています。

AIによりRAN(Radio Access Network)を高度化するため、「AI-RANアライアンス」が2024年2月に設立されました。ソフトバンク、エヌビディア、Arm、エリクソン、ノキア、サムスン電子、T-Mobile USAらが参加していますが、どのような狙いで立ち上げたのでしょうか。

(聞き手・太田智晴)
続きは本誌をご覧下さい

定期購読申込ページへ

単部買いページへ

テレコミュニケーション定期購読のご案内

TOPICS注目の記事

インタビュー

丹康雄 氏
北陸先端科学技術
大学院大学
副学長 教授

スマートホームを「公共財」に
震災きっかけに新しい地方の形