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2002年11月号
NTTドコモ 代表取締役社長:立川 敬二氏
FOMA普及へ流れは変わる
ターゲットはやはり法人利用
NTTドコモの第3世代携帯電話FOMAの加入者は
開業1年を経た9月末で14万にとどまる。
普及戦略のどこに誤算があったのか。
立川社長がFOMAの不振の要因と展望を語った。
Profile
立川敬二(たちかわ・けいじ)
1962年東京大学工学部電気工学科卒業。同年、日本電信電話公社(現NTT)入社。85年NTT企画室担当部長。87年NTTアメリカ社長。95年常務取締役サービス生産本部長。96年代表取締役副社長法人営業本部長。97年代表取締役副社長モバイルコンピューティング推進本部長を経て、98年NTTドコモ代表取締役社長に就任。1939年岐阜県生まれ
携帯電話の加入者数が9月末までに人口の6割近い7200万に達しました。すでに加入者の伸びも頭打ちになってきています。マーケットはもう飽和状態に近づいていると考えてよいのでしょうか。
立川
確かに今年は市場全体の純増数が600万いくかどうかという状況です。仮に600万増えたとしても伸び率は10%以下ですから、伸びが鈍化していることは事実です。
しかし、7〜8割という欧州の普及率を参考にすれば少なくとも8000万から9000万加入までは伸びていくはずです。まだ飽和という状況ではないでしょう。ただし、これもあくまでも音声通信に限ってのことです。移動体通信は音声だけではありません。さまざまな非音声通信、特にインターネットアクセスに代表されるデータ通信には、非常に大きな潜在需要があると思います。これをどうやって開拓していくかがこれからの課題なのです。
データ通信では人だけでなく、さまざまな装置も対象にするわけですから、非常に多くの数が出る可能性がある。例えばテレビのセットトップボックスに無線機が付くと考えて下さい。1世帯に1個ということではなくテレビのあるところ全部に普及すれば9000万台、人間だけを対象にしていた時に比べ圧倒的な数になります。われわれは、こうした対象物が人口の5倍、6億くらいはあると考えているのです。
就任当初から言われている「ペットにも通信端末を付ける時代が来る」というお話しですね。非音声のマーケットはまったくこれからですから非常に大きな可能性があると……。
立川
まったくといってもゼロではないのですよ。当社の場合はすでに収入の20%はiモードなどのデータ通信なのです。欧州のオペレーターの中にはそんなに市場はないという声もあるのですが、われわれはすでにこの数字を実現しているからこそ、少し強気に市場を考えることができるのです。
デュアル端末には反対
FOMAは、まさにこのデータ通信市場の開拓を目指して開始されたものだと思いますが、出足はかなり苦戦されていますね。低迷の要因としてサービスエリアの狭さ、バッテリーの持ち時間が短いこと、端末が高価でまた大きく重いことなどが指摘されています。とはいっても、これらは当初からある程度織り込み済みだったはずです。何か誤算が生じたのですか。
立川
誤算はありました。バッテリーの持ち時間にしてもそれほどお客様が神経質だとは思っていませんでした。外国では、いまだに毎日充電して使うのが当たり前だと思っている。こんなにバッテリーの持ち時間を気にされるのは日本のお客様だけですよ。待ち受け50時間では不足だと言われればその通りなのですがね。
エリアもまったく新しいサービスですから順次拡大していくことなります。だから最初は狭いのが常識なのですが、既存のPDCが良すぎるがゆえに、使えないと言われてしまったのもわれわれとしては誤算でした。当然そういうものであるとお考えいただけると思っていたのです。米国ではニューヨークでさえ2Gがつながらないこともあります。使えるところで使えればいいというのが彼らの発想なのです。
エリアの問題を解消するためにPDCとのデュアルモード端末を投入するという選択肢もあったと思いますが。
立川
私はデュアルモード端末には反対なのです。デュアルにしたからといってもFOMAのエリアの外では音声しか使えないのですよ。お客様は音声をどこでも使いたいから3Gを買うのではなく、3Gの機能を生かせるサービスを使いたいからFOMAをお買いになるのです。ならばサービスが使えるところで使えばいいではないですか。どうせ3年で全国ネットワークを作ってしまうのですから。
それに最初にお使いになるのは先進的なお客様でしょう。そうした方が全国カバーが不可欠だと思われるか、そういう発想で当初はデュアル端末は出さなかったのです。
欧州の事業者は当初からGSMとW-CDMAのデュアル端末を投入する計画です。
立川
欧州は逆の発想でネットワークの拡大はゆっくりやろう、大部分の人は音声通信で満足するから音声が使えればいい、3Gは追加くらいの感じで考えています。彼らは音声に重きを置いている。われわれは3Gの新しい機能に重きを置きたかったのです。
来春には、PDCとFOMAのデュアル端末を投入される計画ですね。これはどういう位置付けになるのでしょうか。
立川
そういう端末が必要なお客様もおられるでしょうから、用意はしておくということです。さほど数が出るとは思っていません。今でもわれわれはお客さまのさまざまな要求に応え得る端末を提供しています。高齢者用の端末を用意するのと同じです。ユーザーは若者だけではありませんから。
J-フォンは国際ローミングを想定して欧州で導入するGSMとW-CDMAのデュアル端末を国内向けにも投入する意向です。御社でもこうしたことをお考えではないのですか。国内ではFOMA、海外ではGSMが使えれば非常に便利になると思いますが。
立川
なぜデュアル端末をやる必要があるのですか。欧州でGSMしか使えないからデュアル端末が必要になるのです。だからわれわれは早くW-CDMAを始めてほしいと欧州のオペレーターにお話しをしているのです。それに日本人が行くのは、欧州でもほとんど主要都市です。主要都市は最初に3Gが入ります。そうなれば日本人にとってデュアル端末は意味がないでしょう。
国際ローミングは最初はどのオペレーターからスタートする計画なのですか。
立川
われわれがパートナーを組んでいる英国のハチソン3GUKのサービスが始まればすぐにやりたいと思っています。ただ、一番最初にサービスを開始するのは、韓国になるのではないでしょうか。次は米国かな。とにかく一番早くサービスを開始したところからやりたいと考えています。
「法人向け」は世界の共通認識
FOMAの低迷の要因として法人需要の伸び悩みがあると思います。当初のメーンターゲットを法人に置いたことも誤算だったとはいえませんか。
立川
確かに当初は法人7、個人3くらいになると考えていたのですが、残念ながらこの比率は逆転しています。しかしこれは不景気のせいなのです。試験導入はしていただけても、本格的に導入するのはちょっと待ってみるという企業が多かった。
では、なぜわれわれが法人をターゲットにしたかといいますと、まず高機能・広帯域・高速のサービスを誰が使うのかを想定したのです。それは企業でしょう。ビジネスであれば、コストに見合う付加価値が生み出せれば導入は確実に進みます。そこで、こうした利用法の開拓に力を入れているのです。
もちろん、個人にも高速通信のニーズはありますが、それはエンターテインメントです。面白いと思えばお金は払うという世界ですね。これよりもビジネスのほうが先に立ち上がると考えたわけです。
もともと固定電話もビジネス用が先に普及しました。携帯電話でもそうでした。それが料金を安くすることで個人にも普及していった。今度は高機能です。だからいったんリセットしてビジネスからスタートしようということなのです。
皆さんはどう思われるか知りませんが、これは世界的なコンセンサスです。世界のオペレーターと話をしていてもターゲットは皆、ビジネスユーザーだと言っています。
もちろん、コンシューマーを軽視しているわけではありません。当たればこの市場は一気に広がる。それを可能にするキラーアプリケーションは何かを今探しているところです。
1年や2年で判断してほしくない
4月からKDDIがCDMA2000 1xで3Gに参入しました。加入者数ではすでに200万を突破しFOMAに大きく水をあけています。既存のcdmaOneと互換性を持つシステムを同じ800MHz帯に導入したことが、好調の理由とされています。これをどう評価されますか。
立川
彼らのサービスもいいと思いますよ。ただ、数を売ったといってもユーザーの大半は2Gのサービスとして使っておられるのではないでしょうか。KDDIでも3Gのキラーアプリケーションはまだ見つけておられないと思います。
彼らがいいものを見つければ、われわれも見習いますから、早くそれを見つけてほしい。1社でやっていたのでは出てこないアイディアも競争でやっていると出てくる。これが競争のよさなのですから。その意味ではJ-フォンにも早くサービスを開始していただきたいですね。
3G用に新たに割り当てられた2GHz帯を用いて384kbpsの高速データ通信を実現するW-CDMAと既存の800MHz帯を使って最高144kbpsをサポートする1xとでは性格がかなり異なります。一括りに3Gと呼ばれるのに違和感はありませんか。
立川
2GでもPDCは28.8kbpsですが、GPRSは144kbpsまで出せます。1xは3Gといいながら144kbpsまでしか出せませんからね。本来3Gは1つの統一規格になるはずだった。しかし、ITUは非常に寛容で、提案されたものをすべて認めてしまったのです。
定義よりその高速性を生かしたサービスがあるのかどうかが重要なのです。 戦略として数をたくさん売りたかったら、既存のシステムの延長としてやればいいことは分かっているのです。KDDIのやり方は1つの作戦としてはいいでしょう。
しかし、われわれの作戦としては、3Gはさらに大きく発展するというイメージを出したかった。そのほうが新しいアプリケーションを考え出すためにいいのではないかと。
今のところ結果は逆に出ているのかな。最初の1年や2年はどっちが先にいってもいいではないですか。 FOMAはこれから20年くらい使うインフラなのですから。
年内には150時間程度の待ち受けが可能な端末も出てきますし、年度末には現在約70%の人口カバー率も約90%になります。3Gを生かせるアプリケーションも順次生まれてくるでしょう。これから流れは変わってくると思いますよ。
本年度のFOMAの加入目標を134万から40万台程度に下方修正されるようですが、2004年3月に600万台という目標には変更はないのですか。
立川
はい、短期的に見れば普及のペースが上下することはあるにしても、5年後には加入者の半分が3Gに、そして10年後には3Gが主力になると考えています。
(聞き手・大谷聖治)
用語解説
●PDC(Personal Digital Cellular system)
日本のデジタル携帯電話の標準方式、国内のすべての携帯電話事業者が採用している。NTTドコモが中心となって開発、アジアを中心とした海外への普及を目指したが、日本の独自規格にとどまった。W-CDMAはこの反省から当初から世界標準規格を狙って開発された
●3G(thirdGeneration)
ITU(国際電気通信連合)でデジタル携帯電話(第2世代携帯電話)の後継として制定された新しい携帯電話の標準規格。IMT-2000とも呼ばれる。ITUでは5つの無線通信方式が認められたが、そのうち日本と欧州が中心となって提案したW-CDMAと北米提案のCDMA2000の2つが実用化されている。日本ではNTTドコモとJ-フォンがW-CDMAをKDDIがCDMA2000を採用した
●GSM(Global System for Mobile communications)
欧州を中心に標準化されたデジタル携帯電話規格。約200の国・地域で導入され、事実上の世界標準となっている。主要国で導入していないのは日本と韓国だけ
●ハチソン3G UK(Hutchison3G UK)
英国携帯電話市場に3Gで新規参入を計画している通信事業者。香港のハチソンが65%を出資するほか、NTTドコモが20%、オランダのKPNモバイルが15%の株式を保有する
●GPRS(General Packet Radio Service)
GSM携帯電話上で運用される無線パケット通信技術。最高144kbpsの高速データ通信が実現される。日本のサービスではPDCパケットに相当する