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2005年1月号

イー・アクセス
代表取締役社長 CEO
千本倖生氏
ADSLはまだこれから伸びる
携帯電話新規参入に決意

2004年11月、イー・アクセスは創業5年目にして東証一部上場を果たした。
千本倖生社長は固定・移動双方の通信業界を俯瞰した上で
「モバイルブロードバンドは巨大なマーケットになる」と予測する。

Profile

千本倖生(せんもと・さちお)氏
1942年生まれ、奈良県出身。京都大学工学部電子工学科卒業後、日本電信電話公社(現NTT)入社。フロリダ大学大学院博士課程修了、工学博士(電気工学)。84年第二電電(現KDDI)を共同創業し、副社長。96年慶應義塾大学大学院教授。99年イー・アクセスを創業し、代表取締役社長兼CEO。05年1月1日付けで代表取締役会長兼CEOに就任予定

  設立から5年と、過去最短で東証(東京証券取引所市場)第一部に上場を果たされましたね。

千本 設立当初から考えていたことです。ベンチャー企業として当社を興した時、グローバルの舞台で活躍できる会社にしようと考えていました。そのためには、一級の投資家に投資してもらえる財務基盤作りが急務でした。東証一部上場もその1つです。
 2003年10月に東証マザーズに上場しましたが、一部に移れるタイミングを測っていました。偶然にもその少し前に、東証が上場基準を緩和し、累積損失の解消と時価総額1000億円以上という基準を満たせたので、二部をスキップして一部に上場できました。

  投資家の評価も非常に高いと聞きます。

千本 おかげ様で、よい株価で取引されています。これは、世界のADSL事業者のなかで唯一の黒字化を果たし、累損を一掃し、さらに移動体通信事業への参入という将来にわたる成長戦略、その全体が評価された結果だと自負しています。
 ただし、今回の一部上場は一里塚だと考えています。今後、より大きな舞台で活躍できるようになりたいですね。

  経営上の基本理念を教えてください。

千本 最も大事なことは、利益を確実に出せる企業体質を作ること。他より半歩先を見据えることで、確実な利益構造を築くと同時に、新たなビジネスに果敢に挑戦することです。そういった姿勢を見せなければ、一流投資家の理解や信用は得られません。
 経営の透明性も重要です。最近、コーポレートガバナンスやコンプライアンスという言葉がよく使われます。よく考えますと、これらの根底にあるのは社員1人ひとりの意識水準です。会社としての経営理念、どういうお客様から対価をいただいて収入を得ているか、社員に対して包み隠さず明らかにすることはモチベーションに大きく関わることです。
 そのため当社では、広くストックオプション制度を導入しており、経営陣から入社間もない社員までが自社の株式を保有しています。顧客に満足されるサービスを提供できれば最終的に株価が上がり自らも利益を得ることができる。逆に一時の欲に駆られて顧客名簿を流出するといったことが起これば、結局は自分達のためにならないという強力な意識付けができているのです。

モバイルブロードバンドへ

  移動体通信事業への新規参入問題が業界の注目を集めています。そのなかでの御社の狙いを教えて下さい。

千本 移動体通信には、是が非とも参入したいです。そのキーと考えているのが、モバイルブロードバンドです。ここ5年間を展望した時、巨大なマーケットが成立すると予測しています。
 モバイルブロードバンドにも2つの流れがあります。既存の携帯電話から至る道、固定通信のブロードバンドから進む道です。後者のアプローチに沿って、当社が移動体事業を手掛けるのは、自然といえるでしょう。

  かつて手掛けてきた移動体通信には格段の思い入れがありそうですね。

千本 それもありますが、通信という産業全体のトレンドを見た時、モバイルブロードバンド化のうねりは間違いなく起こります。自身でもNTT在籍時にはデジタル通信、DDIの立ち上げ、セルラー事業、PHS事業と、そのときどきのトレンドの最先端に関わり続けてきました。その経験にもとづく勘が、次のトレンドはモバイルブロードバンドだと告げているのです。
 もちろん、これまで手掛けていたADSL事業が順調であるからこそ、その延長線上に固定通信と移動体通信のシームレス化を戦略に掲げている面もあります。

  ADSL市場で確固たる基盤を築いたわけですが、移動体通信ではどのようなポジションを狙っていますか。

千本 まだ、免許条件はおろか免許そのものが取得できるかわかりませんので、具体的な事業プランといえる段階ではありません。
 もし、参入できるとしたら、イー・アクセスならではのサービスを提供し、新たな市場を切り開きたいと考えています。

  既存の携帯電話キャリアとの正面衝突は避けると。

千本 いえ、まだ未開拓の市場があるということです。ですから、エリアカバーについても、当初は首都圏、東海圏、関西圏などの大都市部を重視し、モバイルブロードバンド市場の盛り上がりに応じて拡大していく路線が現実的でしょう。

  すでに多大な実績のある既存携帯電話サービスとの差別化に切り札はありますか。

千本 高速、低料金、定額制というADSLで培ってきた基本サービスの徹底に尽きます。3つのポイントを確実に押さえれば、必ずユーザーの評価を得られるという確信があります。あとは、いかに味付けとなる付加サービスを付けることができるかでしょう。

  現在のADSLのように、データ通信をメインのサービスとし、音声は付加サービスとなるイメージですか。

千本 まだ、決めかねています。もちろん、ユーザーニーズに合わせたサービスを提供していく方針に変わりはありません。低料金かつ定額な高速データ通信を軸とし、音声通信をどのポジションに置くかは事業計画を策定するなかで精査する必要があるでしょう。また、携帯電話向けVoIPの標準化作業も進んでいますので、さまざまな条件を加味したうえで慎重に決めたいです。

  03年から実験を進めてきた2GHz帯と、最近参入意思を明らかにした1.7GHz帯の位置付けはどうなりますか。

千本 当社としては1.7GHz帯に軸足を置くということです。1.7GHz帯の方が使いやすい周波数であり、利用実績の多いFDD(Frequency Division Duplex)方式が使える点が重要だと考えています。
 私は以前からグローバル・レンジでビジネスを考える必要があると考えていました。通信方式に採用国、採用予定国が圧倒的に多いW-CDMA方式を選んだのもそのためです。国際ローミングといった世界展開の選択肢が飛躍的に広がると期待できます。

  つねづね、「1.7GHz帯には2社が参入すべきである」と発言しておられますね。

千本 ADSLの前例をひも解くまでもなく、通信サービスが成功するための要件が競争環境にあることは衆目の一致するところです。今、議論されている携帯電話新規参入問題も、2社以上の新規事業者がイコールフッティングで競争できる環境になるかどうかが重要です。もう1点重要なのが、2006年に新規参入できるかどうかです。

  なぜですか。

千本 その頃になると、日本や韓国を中心にモバイルブロードバンド革命が起きると考えているからです。
 また、携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)が始まるのも2006年です。MNPが導入されれば、相当数のユーザーの移行が予想され、当社のような新規参入組にも大きなチャンスが生まれるからです。

  8400万加入を超え、頭打ち傾向が顕在化したともいわれる移動体通信には、どの程度の市場性があると考えていますか。

千本 現在の「音声+データ通信」という構図と、新たに生まれるモバイルブロードバンド市場の2つに分ける必要があります。前者では、最終的に1億加入を見込めるのではないでしょうか。その新規加入分1600万と他キャリアからのチャーンユーザーが期待できます。そこへ後者のモバイルブロードバンド市場が立ち上がることで、合わせて、500〜700万加入を参入から5年で達成できればと考えています。

  ADSL事業のようなホールセール型の業態も考えていますか。

千本 もちろん検討しています。ただし、軸足は一般コンシューマー向けサービスに置きたいと考えています。ホールセールとしては、他のISPにADSLサービスとパッケージ化して販売してもらう形が有効かもしれません。

ADSLはまだまだ成長する

  話を固定系通信に移します。現在、ADSL加入者数の伸びは鈍化しつつありますね。

千本 一時の勢いはなくしたものの、堅調に推移しているというのが実態です。私はADSLはまだまだ成長すると思います。潜在需要としては、お隣韓国の普及率から考え、合計で3000万程度が見込めると考えています。
 さらに、日本にはまだ2000万以上のダイヤルアップユーザーが存在します。その巻き取りだけでも、大きな可能性が残されているのです。

  来年2月から提供する「メタルプラスネットDION ADSL」もその一環ですか。

千本 その通りです。当社としては、こういった安価な電話料金を訴求する商品にADSL回線をバンドルすることで、従来ADSLに関心がなかったダイヤルアップユーザー層にもアピールできると見ています。

  すでにADSLからFTTHへのシフトが始まっているという論調もありますが。

千本 そういうことを言っているのは世界のなかで日本だけです。韓国やシンガポールを見てください。光、光と言っている日本が異端児なのです。
 NTTは「2010年までにFTTH回線を3000万にする」と言っているようですが、それはずいぶん前から言い続けてきた計画のつじつま合わせをしているのに過ぎず、明確なビジネスモデルがあるようには思えません。もちろん、FTTHの利点は十分理解しています。ただし、FTTH事業の収益構造はまだ見えていないと判断しています。
 当社でも当然、FTTH事業への参入は検討しています。技術検討も進めており、短期間でサービスを提供できる体制は整っています。しかし、きちんと利益を出すモデルが見えてこない限り、経営の観点からはゴーサインは出せない状況です。

新しい通信業界を創出する

  厳しい通信業界でどのように生き残るのか、その戦略を教えてください。

千本 「生き残る」という発想は全く持っていません。いかに新しい通信ビジネスを産み出せるかが重要なのです。その意味で、アントレプレナー的なものの考え方を忘れたくありません。

 ADSL事業が安定成長局面に入った現在、あえて新市場である携帯電話に切り込もうというのも、それが理由です。リスクを恐れずチャレンジする精神は、決して失いたくないですね。
(聞き手・土谷宜弘)
 

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