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2005年4月号

ウィルコム 代表取締役社長
八剱洋一郎 氏
法人音声で内線電話市場狙う
怖くない携帯との高速化競争

KDDI傘下から離れ、独自路線を歩み出したウィルコム(旧DDIポケット)。
八剱洋一郎新社長は、「音声通信をテコ入れするとともに、
法人営業に注力したい」と当面の戦略を語る。

Profile

八剱洋一郎(やつるぎ・よういちろう)氏
1978年3月に東京工業大学理学部を卒業。78年4月、日本IBMに入社。99年6月、AT&Tグローバル・ネットワーク・サービス・ジャパンLLC取締役社長およびAT&Tグローバル・サービス代表取締役社長に就任。2001年5月、AT&Tビジネス・アジアパシフィックプレジデント、日本AT&T代表取締役を兼務。03年9月、日本テレコム株式会社、専務執行役戦略企画本部長。03年10月、専務執行役法人事業本部長。04年5月、執行役副社長。04年7月、取締役執行役副社長。05年1月より現職

  昨年11月に親会社がKDDIから米国の投資ファンドであるカーライル・グループに変わり、1月に社長就任、2月2日にウィルコムに社名変更するなど、めまぐるしい3カ月間でしたね。

八剱 私自身、ウィルコムへの移籍を決断したのは、この会社の持つ将来へのポテンシャルに惚れ込んだからです。このひと月とちょっと、スタッフとコミュニケーションを図るなか、それが確信へと変わってきました。

  カーライルは育成型の投資ファンドですから、もちろん将来成長を期待してのビジネスでしょう。

八剱 まず当面の目標は、3年を目処に株式公開を果たすことです。ただ、それだけではつまらない。3年後に振り返って、ビジネスの規模が拡大したなと誰もが感じるような事業展開を図りたいと考えています。

  ブランドを「WILLCOM」に変更した意義はどこにありますか。

八剱 PHSは国内では「簡易型携帯電話」といわれ、携帯電話より少し劣ったサービスという誤認識がいまだにあります。これは絶対に払拭したいというのが1つ。高い音声品質や高速データ通信といったPHSならではの利点を、あらためて多くの人々に知って頂きたいという狙いがあります。
 2点目は、妙に若者に媚びるのでなく、「大人が使うブランド」として認知してほしいという思いがあります。そこでは「優しさ」というキーワードが重要になってくるでしょう。

  優しさですか。

八剱 例えば、ユーザーが通信サービスを使い過ぎてしまった場合、2万円を上限に止めて差しあげる。さらに今後は、「あなたの使い方では“使い放題コース”の方がお得ですよ」と請求書で知らせる。可能かどうか技術検討をしているところですが、該当月からプラン変更をできるようにすることも考えています。いずれにしても、直近の収入ベースではわれわれにとって不利になります。しかし、そこであえてユーザーの視点に立つことで、よい信頼関係を築きたいと思っているのです。

  そういったソフト面での競争だけでなく、AIR-EDGEの高速データ通信に代表される先進的なイメージを強く訴求することも大切なのでは。

八剱 おっしゃる通りです。データ通信についてはこれまで通り注力していきます。8本の回線を束ねることで最大256kbpsとなる「AIR-EDGE [PRO]」や、最大5倍の体感速度を実現する「AIR-EDGE MEGA PLUS」を2月に投入しています。
 ところが、技術的な進展が著しいデータ通信の一方で、音声通信についてはPHSの良さを訴求しきれていなかったという反省があります。そこで5月1日から、ウィルコムユーザー同士ならば、税込2900円の定額で音声を使い放題で利用できる画期的な新サービスを投入する予定です。音声のリーズナブル感を強力に訴求したいです。「音声定額」により、家族や恋人同士いった利用シーンをイメージさせ「音声の仲間」を増やしていきたいですね。2005年度末までに100万加入を上乗せできればと考えています。これれも一種のユーザーへの「優しさ」というコンセプトです。

  ついにNTTドコモが撤退を表明し、アステルグループの縮小も明らかになり、PHS市場では独壇場となりますね。まずは、他社ユーザーの巻き取りが先決となりますか。

八剱 NTTドコモにしても携帯電話への移行を強力に推し進めるでしょうから、そこに注力する気はありません。先に申し上げた戦略のもと、ウィルコムユーザーをいかに増やすかが大事でしょう。
 このところ、各方面から激励の声を多数頂いておりまして、PHSの日本での根強い人気を改めて思い知りました。

先進技術導入し差別化

  ここにきて、ネットワークシステムの大規模な刷新にも手をつけていますね。

八剱 ちょうど無線基地局の更改時期にもあたっていますので、16万カ所の基地局を高度化します。2005年度中には大都市圏での更改が完了します。これと同時にバックボーンを従来のPSTN(公衆回線網)に加え、大部分についてITX(IPネット対応交換装置)を介しIP化を図っていきます。アクセス系もメタル線から光回線に変えます。これにより高速化を図るとともに、通信コストの大幅な低減を実現します。「WILLCOM」の社名の由来となったWireless IP Local Loopを構築します。

  御社のPHSは、電波技術にも先進的な試みが採り入れられていると聞きますが。

八剱 われわれのネットワーク設計では、基地局同士が密接しているマイクロセル型を採用しています。ここにきてこの方式の利点が活きてきました。セルラー方式に比べて基地局当たりの回線収容数が少ないため、つながりやすく高速な通信を可能にしています。アダプティブアレイ・アンテナの採用もその強みを補強しています。
 さらに多値変調技術を用いることで、現在1チャネル当たり32kbpsであるものを、近い将来に48kbpsまで高速化します。すでに技術的には64kbpsまでは視野に入っており、究極的には196kbpsまで拡大したいですね。このチャネル掛ける8ないしは16とすることで、1Mbpsの通信速度を実現できるでしょう。さらに、その先を見据えた研究開発を進めていきます。

  要素だけを見ると、第4世代(4G)携帯電話向けに研究されている技術を先取りした印象ですね。とはいえ、ライバルである携帯電話はKDDI/ auのCDMA2000 1x EV-DOの2.4Mbpsや、来年度にも投入すると言われているNTTドコモのHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の14.4Mbpsと比べると、PHSの発展プランは少し見劣りするようにも見えますが。

八剱 挑戦的な発言と受け取っていただきたくないのですが。携帯電話の諸方式の場合、ベストエフォートでの数字が挙げられています。実際の運用環境ではかなり低い数字になってしまうでしょう。一方、われわれの場合、先ほど申し上げたマイクロセルといった技術の特性から、ベストエフォートに近い速度で通信できます。ですから、一見した数字ほどの差はないのです。

法人を成長エンジンに

  以前日本IBMに在籍されていたとき、通信ビジネスである「グローバル・ネットワーク」事業を担当されていたと聞きます。

八剱 はい。日本IBMでの最後の2年半は、キャリアから回線を借り受け、接続を保障する「コネクティビティー・サービス」などの付加価値を付けて再販するビジネスに携わっていました。この時の経験は、今のウィルコムでも活きています。その後事業譲渡に伴いAT&Tへ、そして日本テレコムへと移籍し現在に至るわけですが、ずっと法人営業を手掛けてきた経緯があります。

  ウィルコムでも法人営業を重視する方針ですか。

八剱 現在、コンシューマーと法人の割合は60対40くらいです。これを、半々までに持って行くことが当面の目標です。
 いま、企業の通信回線に対する考え方が変わりつつあると認識しています。従来は社内に内線網を敷設し、社外は外線で、というものでした。それが今や、PHStoPHSでの定額制音声通信が実現した途端に、内線網代わりのシステムが構築できてしまうのです。社内LANにナノセル型基地局を設置すれば、自営の無線ネットワークが構築できるのです。

新たな法人営業スタイルを

  法人市場においては、営業体制をどう構築するかが重要になると言われています。

八剱 いま日本では、営業手法が大きく変わっている最中ではないかと考えています。10年20年前には、営業マンが客先に出向き自社製品を説明するのが当たり前でした。しかしこの頃は、訪問しても「忙しいから資料だけ置いていってくれ」とむげに扱われることが多いようです。アポイントメントを取ろうとすると商談が逃げてしまう。
 だとすればむしろ、少数精鋭のもと、商談の節目節目をしっかり押さえる手法が有効ではないでしょうか。具体的に言えば、地方の支社に最低限の人員を配置し日常業務や契約などを担当する、技術的な複雑なやり取りは本社の専門家が担当し電話やメール、場合によっては短期間の出張で応対するという営業スタイルを実践していきたいと考えています。これならば当社の限られたリソースでも十分対応できます。

  新たな営業手法を導入することは容易ではないのではありませんか。

八剱 もう1つ、われわれ自身の意識を変えなくてはならないと痛切に感じている点があります。顧客目線に立てば、お客様はウィルコムのデータ通信カードそのものが欲しいから買ってくださるわけではありません。自社のシステムのなかで、きちんと使える無線サービスを欲しているのです。
 ですからわれわれとしては、無線通信にかかわる部分については前面に出ていくことが重要です。お客様が「ダイヤラーの仕組みを作ってほしい」といえば、SIと連携しウィルコムの請負業務として受注する必要があります。無線サービスに関してはすべてウィルコムが絶対的な責任を持つことにより、お客様と直に向き合ったリレーションシップを構築できるのです。
 残念ながら、これまでわれわれを含めたモバイルのプレイヤーでは、そういった認識に乏しかったと思います。部分的な要素を担当したら、後は他のSIに丸投げするといったケースが多かったようです。

  しかし、そういったユーザー企業と密着した手法は、「手離れが悪い」といって嫌う向きもありますが。

八剱 われわれは、逆です。手離れの悪い仕事は、大歓迎です。もともと通信というビジネスは、契約が続く限り半永久的に続くものです。そのなかで、お客様との本音のやりとりをすることで、強固な信頼関係を作ることができるでしょう。

  法人向け回線販売パートナーとの関係はどう築いていきますか。

八剱 販売を安易にパートナーに頼るのは危険でしょう。リセール専業の会社の場合、どうしても価格競争に巻き込まれるなどデメリットが大きいようです。例えば、固定系通信サービスやサーバーを販売している会社とパートナー関係を持ち、その会社の製品を補強するソリューションとして回線を販売していただく形がベストかもしれませんね。
 また、KDDIとの資本関係も続いています。例えば固定系の商品とウィルコムのモバイルソリューションを組み合わせたサービスメニューを出せないか、検討を進めているところです。
(聞き手・土谷宜弘)

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