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2005年8月号

NTTアドバンステクノロジ
代表取締役社長
石川 宏氏
NGN構築にIPv6は不可欠
今こそ活きる電話網のノウハウ

「NGNこそわれわれの出番だ」。NTTアドバンステクノロジの石川社長は、世界各地で始まった電話網のIP化に向けた動きに力強く呼応する。次世代のネットワークで、コアテクを持つ強みが発揮される。

Profile

石川 宏(いしかわ・ひろし)氏
1942年東京都生まれ。1967年早稲田大学大学院修士修了後、日本電信電話公社に入社。主としてパケット網、ISDN、インターネットなどネットワークの研究開発、導入運用などに従事。1997年NTT常務取締役、2004年より現職。工学博士

  NTTは2004年11月に発表した中期経営戦略で、「2010年までに加入者の半数、約3000万をIP網に移行する」と宣言しました。すでにNTT西日本が、IPv6に対応した地域IP網の構築に着手し、NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)が協力しています。NGN(次世代ネットワーク)に対するNTT-ATの取り組みについて教えてください。

石川 なぜ今、NGNなのか。まず、その背景からお話しします。
 民営化と機を同じくして電話網のデジタル化が始まり20年経ちますが、当時導入した交換機が全国の局舎でまだ動いているのです。しかし、構成する機器の仕様は古くなり、保守部品がなくなってきました。これは日本だけの問題ではなく、同じころにデジタル化を進めた米国や欧州でも、メンテナンスにかなり苦労し始めています。
 さらに深刻なのは、保守人員の問題です。現在、ネットワークに携わるスタッフは、NTT東西あわせて数千人いますが、その多くは交換機と一緒に育ち、もうすぐ定年を迎えます。今から5年後には、相当数の人が現場を去るでしょう。現にその兆候は現れています。これまでNTT-MEは、都道府県単位で電話網を保守してきましたが、7月からは広域保守体制に変わります。

  交換機の老朽化と保守人員の問題から、従来の固定電話網を維持するのは難しくなってきたわけですね。

石川 年々減っているとはいえ固定電話の契約数は約6000万件あり、値下げをしたとしても相当な収入源であることは間違いありません。社会的責任も含めて、固定電話を放棄するわけにはいかないのです。そこで、どうやってネットワークを新しくするかが重要になり、「IPで行こう」となるわけです。
 電話網をIP化すれば、構成する機材はグローバル競争の中で開発され、安くなったものを入手できるようになります。技術者もNTT仕様のみに精通した人ではなく、グループ内外の人材を活用できるのです。

NGNインフラに不可欠なIPv6

  NGNを構想・設計する際には、何がポイントになるとお考えですか。

石川 キーワードは4つあり、中でも重要なのが「IPv6」です。
 現在のIPネットワークのトラフィックは、クライアント/サーバーモデルが基本です。ネットワークの構成が一極集中のツリー型で、トラフィックがサーバーの多い東京に集められ、IPv4の地域と無関係にアドレスを振る方式でも何とかなってきました。
 ISP間の接続においても、IPv4では、コアルーターが一番下の桁まで全部解いて経路情報を調べ、それからその利用者の所属するISPにフォワードしています。その結果、必然的に東京に集中する形になりました。
 次世代のネットワークはエンド・ツー・エンドが基本となります。例えば長野と松本で通話するのに東京を経由する必要はなく、近場のネットワークと遠くのネットワークは階層的に構成したほうが良いのです。そのためには、アドレスを見たときに近い人なのか遠い人なのかが分かるようにIPアドレスを振る必要があります。IPv6なら最初の数桁を見れば、地域やISPがどこであるかがすぐに分かります。それによってルーターにかかる負荷も大幅に軽減されます。
 NGNのインフラにIPv6は不可欠です。その前哨戦がNTT西日本の取り組みであり、フレッツ網の高度化にIPv6を適用しようとするものです。これにNTT-ATも協力しているのです。

  網の根幹にIPv6の良さを活かすわけで、オペレーターのネットワーク設計にとって非常に需要なポイントですね。

石川 ユーザー側にもメリットがあります。IPv4ではグローバルアドレスとローカルアドレスを持ち、NATで変換して家の中と外で使い分けていますが、それでは外から特定の機器を名指しすることができません。IPv6はそれを解決し、家電1つひとつにもアドレスが振れるのです。
 企業ネットワークにもメリットがあります。IPv6ではIPSecが基本ですから、すべての端末がセキュアに通信するようになります。

  IPv6はユーザーへの訴求材料にもなるのですね。

石川 もう1つのキーワードは「GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)」、光ネットワークの多重化技術です。光波長に基づくスイッチングにより、パケットのスイッチングと整合を取るのがGMPLSです。これにより、実データの光信号を一旦、電気信号に落とす遅延時間を解消できるのです。
 例えば自分のPCから他のPCにつなぐのに2つのプロバイダーを経由するとします。今はその間に経由するルーターの数、つまりホップ数は20から30あり、そのたびに数ミリ秒の遅延が生じています。アドレス体系が整理されれば、コアルーター同士が数回中継するだけでエッジルーターに落とせます。遅延時間を劇的に減らせるのです。
 そのときに必要なのが光の波長交換機です。最先端の研究をNTTの研究所が行っていて、NTT-ATもお手伝いしています。

  NGNのキーテクノロジーは、他にもあるのでしょうか。

石川 アーキテクチャーとして「ATCA(Advanced Telecom Computing Architecture)」があります。100以上の企業が参加し、ルーターやサーバーの実装規格を決めています。全体のシャーシとパッケージのインターフェースを規格化して、オープン型でルーターやサーバーを作ることで、従来の製品にないスケーラビリティを確保する。そのための基本設計仕様です。

  ATCAもNGNの重要なキーワードになるのですね。

石川 4番目のキーワードは、「電話網のノウハウ」です。NGNはある日いっぺんにできあがるわけではありません。既存ネットワークと相互接続しながら、徐々に置き換えられていくものです。ですから電話網のノウハウとレガシー技術が不可欠になるのです。アナログからデジタルに切り替えたときと同じような移行手法とノウハウが、今回も必要になるでしょう。
 例えば電話網のメソドロジー(方法論)に「規模別信頼性の設計法」があります。1万ユーザーの電話局と10万ユーザーの電話局とでは、ユーザー1人当たりの許容ダウンタイムを同じにしてはいけないのです。災害が大きくなるほど危険因子は相互に増幅し合うのと同じです。このため10万ユーザーの局のダウンタイムを短くして、しかも早く復旧可能とする必要があるのです。電話網ではこうした点もきちんと設計されています。
 「重要通信」の考え方もあります。加入者にプライオリティを付けて、警察、消防、銀行などの公的機関や公衆電話からの発信が優先的につながるようにします。そのためのアルゴリズムが電話網には入っており、IP化しても実現しないといけません。

  キーワードは、IPv6、GMPLS、ATCA、電話網のノウハウということですね。

石川 すべて、NTT-ATが研究開発段階からお手伝いしていますので、NGNではわれわれの出番は多いと思っています。

電話網のノウハウが強み

  6月にシカゴで行われた「スーパーコム2005」でも、ATCAが話題になっていました。各社がグローバル競争を闘う上で、コンパクトで省電力、高拡張性という点に注目しています。NGNもATCA仕様が基本となって進むとお考えでしょうか。

石川 ATCAは参入条件ではなく、あくまでも「安くていいもの」をオープンに調達する手段として注目しています。例えばソフトはオープンソースでいこうとか、そういう話になると思います。
 NGNになると、通信事業者自身の競争が、オープンかつ標準化された仕様を前提としたものへと変わります。その中で、NTTは一歩先に進むことができますが、逆にいえばテレコムインフラのかなりの部分が他社と同じになります。
 そこで重要度を増すのは、従来の電話網のノウハウです。電話の付加サービスはたくさんあって、そのソフトはすべてNTTが作ってきました。それをうまくNGNへ移植できれば、常にNTTがアドバンテージを保ちつつ、総合力で勝負する戦略になるでしょう。逆に言うと、「NTT独自の仕様は他社に見せない」というやり方は、もう通用しないということです。
 NTTがどういうネットワークを構想しているのかは、11月頃に発表があると思うので楽しみにしてください。

  NTTグループが取り組むNGNに、NTT-ATはどう関わっていくのでしょうか。

石川 4つの方法でお手伝いします。1つは研究開発の協力、2番目はレガシーネットワークをどう変えていくかでの協力です。レガシーネットワークの深い技術を持つスタッフはNTT-ATにしかいなくなっているので、これは大切です。3番目はネットワーク検証と人材育成。マルチベンダー環境になるので、機器の相互検証が重要になり、そのための人材の育成は欠かせません。4番目は、NGN導入後の事業会社への支援です。

コアテクで非通信分野にも注力

  NTT-ATとして、これからどんなことに力を入れていくのでしょうか。

石川 NTT研究所の技術を民需に応用する仕事に特に力を入れたいと考えています。
 ネットワークに関連する分野は当然ですが、非通信の分野でも貢献したい。例えば、研究所の試作から携わっている最先端の半導体、これを交通管制や自動車に使う高出力トランジスタとして実現することです。バイオ分野では、動物実験を代替するセンサーを手がけています。
 「NTT-ATはテクノロジー・インテグレーターです」と標榜しています。技術をキーとして、ソリューションを提供するという意味です。単にSIをやるだけなら他社と同じですが、コアテクはそう簡単に真似できません。NTT-ATの強みはそこにあり、伸ばしていきたいと考えています。

  最後に、具体的な経営目標を教えてください。

石川 売上目標は掲げていません。会社の命は利益ですから、利益を出し続けることを数値目標としています。
 今期は累損の解消を目標にスタートしましたが、それはクリアしました。一方で、累損を解消するために、将来が楽しみな開発を削ってきた面もあります。ですからこれからは、改めて新しい分野にチャレンジしていきたいと思っています。
 NTT-ATは設備を持っていませんから、発展の条件は人材です。幸い商品の雛形は研究所が持っているので、それを有効に使える人材の育成が重要だと考えています。指標として分かりやすいのは、社員の有資格者数です。難関とされる高度な資格のホルダーを増やしていく方針です。
(聞き手・藤田 健)

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