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2005年9月号

KDDI
代表取締役執行役員副社長
伊藤 泰彦氏
NGNで世界の先端を行く
FMCの鍵はオペレーション

固定網と移動網を統合する「ウルトラ3G」構想を打ち上げ、FMCの早期実現を目指すKDDI。全社の技術部門を統括する伊藤副社長は、「IP化のキーワードは常時接続、セキュリティ、ストレージの3つだ」と語る。

Profile

伊藤 泰彦(いとう・やすひこ)氏
1945年東京都生まれ。71年早稲田大学大学院理工学研究科通信工学課程修了、同年4月国際電信電話(現KDDI)入社。91年研究所次長、98年取締役ネットワーク本部ワイアレス事業部長、2001年執行役員常務 IP事業本部長、2003年取締役執行役員専務 ソリューション事業本部長などを経て、2005年代表取締役執行役員副社長 全社技術担当兼技術統轄本部長。工学博士

  現在、世界の通信事業者が大きな転換期を迎え、通信網のIP化やFMC(固定/移動通信融合)への取り組みを進めています。各国の動向をどうご覧になりますか。

伊藤 昨年6月に、英BTが世界に先駆けて電話網のIP化を宣言しました。KDDIもいつ踏み切ろうかと考えていましたが、当初は「先行するのはよくない」と思っていたのです。しかし、よく考えると今後、NTTの対抗軸として事業を進める際にIP化は明確なビジョンになるし、先行することで最初は大変かもしれませんが、多くのノウハウを得られることに気が付きました。携帯電話との組み合わせを考えると、IP化には多くの利点があるのです。
 その考え方はBTも同じでしょうが、進め方は少し違うと思います。BTは携帯網を持ちませんが、KDDIにはあります。ですから携帯網を再構築する際も、固定網のIP化を前提として進めることができるのです。
 サービスも固定と移動の両方で提供できます。こうした優位性があるため「早くやろう」という結論を出し、昨年9月にIP化を宣言しました。現在、世界中でIP化の波が広がっている状況を見ても、正しい選択だったと思います。

  通信事業者のネットワークインフラをIP化する「NGN」(次世代ネットワーク)構想については、ETSI(欧州電気通信標準化協会)やITU-Tが標準化を進めています。

伊藤 KDDIもITUの標準化作業に参加しています。基本的な取り組みは、プロトコルやクオリティを一致させて相互接続を可能にすることです。しかし各国の思惑もあって、なかなか進まないのが現状です。一方、日本国内では競争が激しく、各国の合意を待っていられない状況にあります。
 標準化によって、最終的にはすべての事業者が使えるネットワークができるのでしょうが、そこに至るには誰かが先行して実証する必要があります。KDDIはその先頭を走ろうと決めて、標準化に先駆けてスタートしたわけです。

  IP化によるコストメリットも考えてのことでしょうか。

伊藤 最近はルーターの価格が下がったので、回線交換網に比べてバックボーン系で5割、アクセス系で2割から3割安くなります。トータルでは3割前後コストを抑えて構築できるでしょう。
 固定電話網を構成する機器が、更改の時期を迎えているという事実もあります。新たに交換機を入れ替える選択は考え難く、更改時の少し前にスタートしてしまったほうがいいという判断もありました。

CDNにアクセス網を融合

  電話網のIP化を伴う、具体的な事業戦略を教えてください。

伊藤 2008年3月までに音声網のIP化を完了させる予定です。ブロードバンドも乗せるため、バックボーンには光ファイバーを使います。数局ずつのリングを作ってそれをつなぎ、ルーターが故障したときの対策も万全にします。それらによって、光のハイウェイ「CDN(Contents Delivery Network)」を構築するのです。
 CDNには携帯網や無線LANもつながるようにします。CDNをベースにしてさまざまなアクセスが相互につながり、接続されるすべての機器を携帯電話からのコマンドで自由に制御できる、それがわれわれの描く固定と移動を融合したIPネットワーク「ウルトラ3G」の基本コンセプトです。
 IPをベースにするので、それぞれのアクセス網はシームレスに融合します。反面、CDNが故障するとすべてのアクセスに影響を与えます。ですから、故障の未然防止策やリカバリーをどうするかが課題となります。構築の仕方だけでなく、ネットワークの「運用管理」が極めて重要になるのです。

  今は端末の種別に応じてアクセス網があり、それぞれにバックボーンやサービスが違っています。それを融合するためにはオペレーションが大切になるのですね。

伊藤 シングル網の是非を問う議論はあるでしょう。しかし、必要な部分は多層化して信頼性を確保するつもりですし、それも含めてノウハウになると考えています。
 「FMCとは一体どんなサービスなんだ」と聞かれることがありますが、ウルトラ3Gは1つの答えになるでしょう。アクセス網の違いを意識させず、ネットワーク上でこれまでにない多様なサービスを実現できると考えています。

  そのベースとなるのが電話網のIP化であると。

伊藤 オールIP化の最大のキーワードは“オールウェイズオン”、つまり「常時接続」です。これはとても大切です。ブロードバンドの基本は常につながっていることであり、決して速さではないのです。
 常時接続で問題になるのは「セキュリティ」で、これが2番目のキーワードです。セキュリティにはグレードがあり、強固なほどいいかというとそうではありません。ユーザーを檻の中に入れるような固いだけのセキュリティでは、不便で仕方ありません。本当に良いセキュリティは、それを着ればどこでも安全に歩き回れる“サイバースーツ”のようなイメージ。そういうものを作らないといけません。
 3番目はあり余る記憶容量を持つ「ストレージ」です。例えば最近、わが家ではDVDレコーダーを購入しました。数百Gバイトの記憶容量があって、何日分でも録画できるのでとても便利です。PCにも100Gバイトを超えるものがありますし、もうすぐ携帯電話にも1Gバイトを超えるハードディスクが付くでしょう。どこにでもストレージが溢れてきているのです。
 それらをつなぐのは何かというと、オールウェイズオンになったIPネットワークで、あり余る記憶容量を活かしてコンテンツが流通するでしょう。そのときに重要なのが認証技術、つまりセキュリティなのです。

MMDで多様なサービスを制御

  その名称から、次世代3Gを想起させるウルトラ3Gですが、あくまでも固定と移動を統合するネットワークなのですね。

伊藤 ただし、主役は携帯電話です。携帯電話が個人認証と一体化していくので、しっかりしたセキュリティ管理が必要です。しかし、うまく組み合わせて利用できれば、私たちの生活は今まで以上におもしろくなるはずです。

  先ごろ実験を行ったWiMAXも、アクセス手段の1つと考えているのですね。

伊藤 常に高速性が必要とされるわけではないので、携帯電話とシームレスにつないで、意識せずに使い分け可能にするのがいいと思います。
 6月に発表した「CDMA2000 1x EV-DO Rev.A」や次世代CDMA2000は、ウルトラ3Gを構成する個別技術の発展という位置づけになります。ただし、Rev.Aは優れた技術なので、通信事業者として競争する上で大切なアイテムだと考えています。

  アクセスの融合によるユーザーのメリットは大きいでしょうが、サービスを提供する側の負担は増えるのではないでしょうか。

伊藤 確かに、サービスごとにそれぞれのアクセスを制御していたのでは大変です。そこで、3GPP2(3rd Generation Partnership Project 2)で標準化が進むMMD(Multimedia Domain)をCDNに乗せて使います。それによって固定と携帯の通信を統合的に扱えるので、さまざまなサービスをまとめて制御できるようになります。

  ウルトラ3Gは、ネットワーク戦略としてかなり完成されたものですね。

伊藤 クリアすべき問題はあります。サービスに対する課金方法はその1つです。例えば定額制について、「DSLまとめていくら」だけではなく、クオリティやスピードによって料金体系を分けることも必要だと思います。コンテンツをやり取りするときの課金システムも考えなくてはなりませんね。
 「レイテンシー」も課題に挙げられます。距離による遅延ではなく、処理の遅れのことです。例えば携帯電話の電源を入れてから立ち上がるまでの待ち時間もそれに含まれます。各アクセスをシームレスにつなぐには、レイテンシーを極力なくさなければなりません。そういう細かい部分の課題は、まだまだたくさんあります。

放送局とのコンテンツ流通も

  国内の通信事業者の次世代に向けた事業戦略をどうご覧になりますか。

伊藤 ウルトラ3Gのような方向性は、各事業者が持っていると思います。例えばNTTの掲げる「レゾナントコミュニケーション」も、光ファイバーを基盤としています。
 NGNの勝負の分かれ目は、先ほどの3つのキーワードをどううまく扱うかでしょう。各社の違いは何を重視するかだけで、KDDIは常時接続にフォーカスを当てています。ストレージを重視する人はあまり多くいませんが、私はとても重要だと考えています。

  通信事業者として放送事業についてはどう考えますか。

伊藤 放送事業のキーはコンテンツです。NGNの重要な構成要素となるストレージ技術でも、最後はコンテンツをどう流すかに行き着きます。コンテンツを扱い、アーカイブを持っているのは放送局ですから、協調して進めたいと考えています。
 携帯電話と放送が融合しても、画像を映すだけではわれわれの利益になりません。コンテンツと連携して何をやるかが問題で、よく言われるのは買い物やアフィリエイトです。双方向コミュニケーションとしては、放送局への番組リクエストも考えられます。個人が発信する場面も出てくるでしょう。
 オンデマンドの蓄積型放送も重要です。auではすでに「EZチャンネル」サービスを提供していますが、そうした分野も含めて複合的に放送局と協調して事業を進めたいですね。

  伊藤さんは先ごろ、全社技術担当兼技術統轄本部長として副社長に就任されましたが、固定と移動の両方を持つ強みを生かすために、技術面からリードするのが役目なのでしょうか。

伊藤 FMCを実現するためには、事業部の垣根を越えて協調する必要があります。目的が同じでも、違う方向からばらばらにアプローチしていてはなかなかうまくいきません。各事業部が連携して、いいところを出し合いながら取り組むことが大切で、その際に技術部門を統括し、コーディネイトするのが私の使命です。
 通信会社にとって重要なのはネットワークの運用です。電話網をオールIP化すれば、すべてのサービスがそこにつながるのでなおさらです。ネットワークの信頼性の確保と新しいサービスは、運用と切り離して考えられません。中継系だけでなく積極的に加入者系まで進出している「メタルプラス」のように、KDDIは全国レベルの運用に入っています。しかし、われわれにとっては未経験な部分であることも事実。その認識をしっかりと持って、前に進んでいく考えです。
(聞き手・土谷宜弘)

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