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2005年11月号
ライブドア
執行役員上級副社長
照井知基氏
日本最大のWi-Fi網構築
Webとの連携で新機軸出す
「ソフトバンクとは当然競合します。でも競合したほうがよいものができるはずです」。公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」で通信事業に本格参入するライブドアの照井知基副上級社長は自信を見せる。
Profile
照井知基(てるい・ともき)氏
1993年城南設備入社。その後、レジャーマネージメント、ソフトバンクフォーラムを経て、2001年テクノフォックス入社。同年、M&Aによる転籍でオン・ザ・エッヂ(現ライブドア)に入社。03年ネットワーク事業部長およびエッジテレコム代表取締役社長に就任。04年執行役員副社長 ネットワーク事業担当に就任。05年より現職
公衆無線LANサービス「livedoor Wireless」は月額525円ということで大きな話題になり、ライブドアの通信事業本格参入として注目を集めました。ところが「9月の衆院選の影響で工事が遅滞したため商用サービスの開始が延期になった」という御社の発表は嘘であると、共同通信が報道しました。これはどういう問題だったのでしょうか。
照井
われわれは通信事業者としてごく一般的なことをしたつもりです。特に法的根拠があるわけではないので、あくまでも自粛という立場をとりました。解散総選挙が決まった時、関係省庁からは「この期間中、気をつけてください」とアドバイスを受けました。これに対し、共同通信では、ライブドアが行政の指導を理由にしてサービスインを遅らせたと主張しています。関係各署に裏を取ったと言っていますが、警視庁などは選挙のあるなしにかかわらず、道路使用許可が必要な工事は気をつけるように指導しています。これが特別なケースではありませんから、裏取りに走っている記者の質問などに対して個別の回答をするわけがありません。言いたい放題言われたので、堀江(貴文社長)がブログで反論したら、さらに追加で記事を出してきました。
われわれとしては1カ月延期したので、全力で遅れを取り戻すしかありません。今回、パワードコムが工事を請け負っているのですが、選挙の影響で通常の約3倍の時間を要しています。本当なら10月1日からサービスインのはずだったのに、2000カ所のうち1400カ所しか終わっていません。
一般的に言えば、通信業界ではサービスが予定時期から遅れることはよくあることです。しかし、通信サービスは一般消費者を相手にしている以上、遅れてはいけないというのも当然の考え方です。
照井
もちろんそれは理解しています。ただ、今は実験サービスで、利用者にはまだ課金を始めていません。無料で利用していただいているので利害関係は発生していないのです。利用者の期待を裏切ったのなら問題ですが、無料期間なのでご理解をいただける範囲だと考えています。
あと1カ月あるので、急いで工事を進めていきます。ただ、利用者に使っていただいた時に想定外の問題が出てくるかもしれませんので、さらに追加で仕組みを増やしています。もっと使いやすく変えていく必要があると考えています。
新しい無線方式が相次いで登場しています。携帯電話新規参入で、1.7GHz帯ではソフトバンク、イー・アクセスともW-CDMA方式を採用しました。2GHz帯にはアイピーモバイルがTD-CDMA方式で事業申請を出しました。iBurst方式は3Gの国際規格にないということで今回見送られました。WiMAXにも非常に期待が集まっています。
照井
WiMAXについては今のところ採用の予定はありません。FWA(Fixed Wireless Access)というジャンルは、光ファイバーの通信コストを下げるための用途としては多少関心があります。しかしMobile WiMAXが実用化されるまでにあと5年ぐらいかかりそうなので、現段階ではまったくく考えていません。時間の無駄だと思っています。仕様がきちんと決まればいいのですが、韓国・WiBroなどの類似技術もあってか、きちんと決まってないようですし、周波数も4.95GHz帯にするかどうかわからない状況です。デバイスが出てくるには仕様が固まってから1〜2年はかかるでしょう。今の通信業界で5年というと、一般的に20年分ぐらいの時間をロスしたことになります。
現実的なiBurst
では、iBurstについてはどうですか。
照井
iBurstはすでにカード型端末が出ているし、京セラが独自の端末を作ることを約束しており、共同ワーキンググループで総務省に提出する書類やビジネスモデルなどを作り込んでいる最中です。コストも大枠が見えてきています。iBurstはWiMAXに比べると、非常に現実的です。ただ2GHz帯をとれないと意味がありません。2GHz帯ではアイピーモバイルが申請していますが、今回の結果を踏まえて次の手を考えたいと思っています。仮にそれが2GHz帯でなくても、われわれとしては引き続きiBurstで進めます。
YOZANと一緒になってlivedoor Wirelessの基地局を設置していますが、YOZANはインフラをWiMAXに広げています。御社はこれとは別にiBurstを載せていくのでしょうか。
照井
首都圏でこれだけWi-Fiの設備を打っているので、それほど積極的にiBurstを展開することはありません。iBurstは過疎地や人口密度の低い所では電波の効率がよく、非常に飛びます。平均30人前後の村を複数カバーするためには、1つの基地局から電波を10kmくらい飛ばさなくてはなりません。そうなるとiBurstのほうが適しています。人口密度の高いところはWi-Fiで、過疎地はiBurstのハイブリッドで考えています。
都内でWi-Fiを展開するにあたって、宅内のルーターをアクセスポイントにしてWi-Fiのサービスを提供しているソフトバンクと競合するのではありませんか。
照井
当然です。しかし競合したほうが、いいものができるでしょう。
3年以内に100万人規模に
イー・アクセスやソフトバンクなどは携帯電話事業での新規参入を狙っています。そもそも無線LANでの事業展開を選んだのはなぜですか。
照井
もともと「ホットスポットは使いにくいよね、屋外を全てカバーしたらどうなるんだろう」という堀江社長と私との会話からスタートしたものです。東京である程度、面を取ったら、次は地方でもできるところからどんどん基地局を打っていきます。札幌、仙台、名古屋、大阪、広島、九州などいわゆる政令指定都市には広げていきます。
ゼロからインフラを構築するのは大変な仕事です。旧アステル網をベースにするということですか。
照井
違います。独自に工事事業者や設備を手配して作っています。もちろん設置場所が電柱の場合、電力系10社は強力なパートナーです。先日、ブロードバンドタワーとホーキングとの間で、映像配信機能付きの自販機を使って無線LANを全国展開することで協業を決めました。
すると近い将来、御社が日本で最大のWi-Fi網を構築することになるわけですか。
照井
成功すればそうなるでしょう。他社が提供しているサービスは、あくまでもファーストフードやカフェなどに入っているものの集合体で、全国で数百カ所しかありません。われわれは都内だけですでに1400カ所ですから、数が違います。本当の意味で面を目指していますので、屋外だけでなく屋内も必要です。あとは自動販売機や、すでにサービスを始めている事業者とローミングする予定です。
それだけWi-Fi網をつくれば、他の事業者にとっても魅力的なネットワークになるのではありませんか。
照井
そう思います。他社が展開してくれるのであれば、われわれもメリットがあるでしょう。ソフトバンクとNTTコミュニケーションズがIP電話の相互接続サービスを開始しましたが、これは利用者にとっても便利なことです。
関西ではケイ・オプティコムがすでにWi-Fiサービスを自社で始められています。数百カ所の基地局を打っていますが、その設備をわれわれが使用料をお支払いしてお借りできれば、全国展開のスピードも早くなりますし、ケイ・オプティコムとしても設備を共有することでコストを圧縮できます。まさにWin-Winです。このようにあらゆる手法を使って屋内外にエリアを広げていきます。
加入者数などの具体的な目標を教えてください。
照井
今回打っている山手線内のエリアで15万人です。全国規模になったら、3年以内に100万人規模にしたいと考えています。販売チャネルは法人と個人の両方です。法人はほとんどを京セラコミュニケーションシステム(KCCS)などの代理店が担当します。個人はWebでの展開になります。11月1日からは雑誌やテレビでプロモーションを展開します。
ネットワーク事業は一種の設備産業ですから、1から始めるというのは難しい。今はWiMAXに興味がないのはそのためです。例えば3年間で全国の70%をカバーしたら、デファクトスタンダードに等しい。それから1〜2年後にWiMAXができても、必要ありません。5年間というのは、われわれにとって長すぎます。
カーナビも端末に
実際のサービスの勝算ですが、携帯電話と戦わないといけないし、FMCに代表されるように固定・移動をシームレスにしようとする動きが目立つなかで、無線LANだけでよいのかという問題も出てきます。
照井
端末は今後、PCやPDAだけでなく、デジカメやカーナビも対象になっていきます。大手自動車メーカーやカーナビメーカーは数年前から、カーナビとインターネットの融合を実験しています。端末はこの数年間で大きく変わると思います。
音楽も、Wi-Fiによって屋外でもつながるようになれば、「livedoor Music」という音楽サイトを作り、レコード会社を集めて音楽配信事業が可能になります。これもインターネットの用途です。これらのサービスを考えるともちろん現在のWi-Fiだけではだめですし、別の技術を採用したとしてもシームレスに動く必要があります。そこで、iBurstで周波数を取ることに力を入れています。
携帯電話がこれだけ高機能化し、PCも薄型・小型化しているなかで、無線LAN対応のセカンド端末としてはどういうものが理想形になりますか。
照井
多分それはメーカーが考えることです。私やスタッフが少人数で考えても出てきません。今、サイトでご意見・ご要望を受け付けていますが、利用者はしっかり考えています。それをフィードバックすれば、日本のメーカーは優秀だから作ると思います。
無線LANというと、どうしても携帯端末のほうに目が行ってしまいますが、必ずしもポケットに入るサイズでなくても、例えば自動車全体がカーナビを含めて情報端末としての役割を果たすようになるのではないでしょうか。PCはあまり持ち歩かなくなるので、これを機にPDAが復活するのではないかという見方もあります。しかし、日本の携帯電話は頭がよすぎるので、それをひっくり返すのは非常に大変です。
私は、インターネットがそうだったように、無線LANのネットワークが縦横に使えるようになると、ユーザーはその利用の仕方をどんどん考えだすと思うのです。その大いなる可能性に私どもは期待しています。
(聞き手・土谷宜弘)