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2006年1月号
シャープ専務取締役
情報通信事業統括
松本雅史氏
他社の半歩先行く商品作りで
国内出荷台数シェア1位に
国内の携帯電話市場は出荷台数が減少し、端末メーカーの競争が激化している。出荷台数を伸ばしているシャープがトップシェアに躍り出た。ユーザーに選ばれる理由はどこにあるのか。松本雅史専務に話を聞いた。
Profile
松本雅史(まつもと・まさふみ)氏
1948年10月18日生まれ。71年シャープ入社。2003年6月取締役 通信システム事業本部長。04年5月常務取締役 通信システム事業本部長。同年5月専務取締役 通信事業統括。同年6月より現職
調査会社が発表した上期や第3四半期の出荷台数で御社が1位になりました。携帯電話市場は曲がり角に来ているといわれますが、現在の市場動向についてどのように見ていますか。
松本
当社は上期にNTTドコモ向け3機種、ボーダフォン向け4機種の計7機種を発表しました。それが功を奏し、国内市場の出荷台数でナンバーワンを獲得しました。
上期は売上高2200億円、出荷台数589万台でしたから、通期でそれぞれ4200億円、1100万台は何とか確保したいと考えています。当社は「オンリーワン商品」を目標に掲げており、ユーザーの目線に立ちながら、他社より半歩先の商品を出すことを目指しています。
国内市場は出荷台数が約4200万台と前年度から300万台も減少しましたが、2006年以降は横ばいになると見ています。そこに海外メーカーが参入することで、シェアの取り合いになるでしょう。当社の特性を活かしながら、シェアを伸ばしていきたいですね。
時代の流れに合わせる
「半歩先」とは具体的にどういうことですか。
松本
当社が携帯電話事業に参入したのは、国内メーカーで最後発でした。私が事業に関わるようになった1998年10月当時、年間売上高は約200億円とほとんどないに等しい状態でした。
他社と同じことをしていては勝てないので、差別化した商品を出さなければならないと思いましたが、技術的にあまりにも進んだ商品を出すと、インフラや社会情勢が備わっていないので市場に受け入れられません。例えばカメラ搭載端末を2000年11月に初めて発売しましたが、まず11万画素のCMOSからスタートしました。最初から100万画素の端末を出していたら、高機能すぎて使いこなせなかったのではないでしょうか。このように時代の流れに合わせて、他社より半年ぐらい進化した商品を出してきました。
そのために、もともと商品サイクルが1年でしたが、開発リソースを含めて半年に短縮しました。短期間に効率よく開発しなければならず、そのためのデバイスの開発には1〜2年前から取り組みます。キャリアごとに市場に合わせた最新のデバイスを提供していく難しさはあります。
06年11月に番号ポータビリティ(MNP)が始まります。KDDIの小野寺正社長が現状を「MNP前の買い控え」と表現したように、それまでマーケットは静かに推移するのでしょうか。
松本
MNPが始まる前にユーザーの趣向に合わせた端末を出すことで、MNP特需の面はあると思います。キャリアはサービス面の充実を図り、メーカーはユーザーの獲得と引きとめに向けた仕掛け作りが激しくなります。06年春以降、キャリアを含めてどういう秘策を出すかが注目です。
当社の戦略は今までと同様、他社の半歩先の商品を作ることです。また、デバイスとの融合により差別化した商品を作っていきます。これからは買い替え需要が中心ですが、若者から中高年まで趣味趣向は多岐にわたります。ドコモ向けの端末「DOLCE」は人工皮革を採用したデザインで40〜50代を狙っていたのですが、実際にはそれに加えて20代にも売れています。個人の趣味趣向は変化するので、それに合わせた商品を提供していくことが必要です。そうすると商品のラインナップが増えることから、開発や生産の効率を上げないと厳しくなると思います。
SHブランドへのこだわり
MNPでは、移行先に同じメーカーがあると移りやすくなるという見方もあります。メーカーのマルチキャリア対応についてどのように考えていますか。
松本
シャープのSHブランドには非常にこだわりがあります。SHならではのユーザーインターフェースなどで共通性を持たせていきたいと考えています。具体的には、メールの文字変換ソフトにワープロ事業で培った「ケータイ Shoin」を使うなど一貫性を持たせています。
ユーザーがどこのキャリアやメーカーに流れるというのではなく、SHブランドは守りながら、新規ユーザーをファンにするための商品作りを心がけています。
auに代表されるCDMA方式の端末を納入する計画はありますか。
松本
CDMA方式ではかつて米ベライゾン向けに納入していたので、基盤は持っています。国内外にかかわらず、機会があれば検討したいと思います。
垂直統合が強み
携帯電話が音声機器から、ソフトウェアやコンピューター機器に変わるなか、ハンドセットメーカーとしての強みはどこにありますか。
松本
まず、液晶や半導体などのデバイスを社内で持っており、商品との垂直統合ができることです。
通信システム事業本部は東広島を拠点にした携帯電話・PHS事業を行うパーソナル通信事業部と、奈良県大和郡山市を拠点としたファクシミリやコードレス電話などの有線通信端末事業を手がけるIP通信事業部を同じ傘下に収めています。また、電子辞書やPDA「ザウルス」、PCを扱う情報通信事業本部も大和郡山にあるなど、各事業ユニットを横断した緊密な連携を図っています。
今後は通信と放送の融合がテーマになりますが、総合メーカーの強みを活かし、AVと通信、あるいは情報と通信の技術の共有化・標準化を取り入れていきたいと考えています。
当社は77年に、社長直轄で開発テーマに取り組む「緊急プロジェクトチーム」という独自の制度を始めました。当時のプロジェクトを経験した人がいま上層部にいるので、フロンティア精神を持って挑戦するDNAを受け継いでいます。
法人向けではFOMA連携が話題ですが、端末のラインアップはまだわずかです。御社の法人戦略について教えてください。
松本
先日、ウィルコムと発表した「W-ZERO3」は携帯電話版「ザウルス」で、法人需要を想定しています。法人向けはPC連携が重要です。1台ですべての用を足す商品は、法人需要のきっかけになるのではないかと期待しています。PDA型を手始めに、携帯電話に波及していく仕掛けを作りたいですね。
3GがWi-Fiとの連携により家庭やオフィス、屋外がシームレス化することも、1つの流れになります。
新規参入の3社が決まりました。携帯電話事業を展開するうえで、優れた端末は必須です。具体的な話はすでにあるのですか。
松本
開発するのであれば、キャリアごとに差別化しなければならず、余力の問題があります。
キャリアの意向も大事です。ここまでビジネスができたのは、ドコモやボーダフォンとの緊密な連携で商品を出してきたからです。既存のキャリア向けの商品をそのまま横展開することは、道義的にできません。
携帯電話事業も海外抜きには考えられなくなっています。御社の海外戦略と今後の方向性を教えてください。
松本
海外が大きな市場であることは確かです。今年度の出荷台数は世界全体で7億6000万台、実売で7億4000万台です。部品メーカーへのオーダーベースなら8億台を超えます。かつては全体の約1割が日本市場でしたが、だんだん海外の比重が高まってきました。
こうした状況のなかで携帯電話事業を大きくするための要素として、海外事業をいかに伸ばすかにかかっています。日本メーカーは海外市場で苦戦していますが、活路は見出せると思います。
海外ビジネスを手がけてみてわかるのは、日本と海外では市場が違うということです。海外はようやく3Gに移行しようという状況で、1世代遅れています。
日本の製品をそのまま持って行っても売れませんが、かといってローエンドの安い機種を大量に出すのでは当社の方針に合いません。得意分野でそれなりの付加価値を付けた商品を値ごろ感を持って提供していきます。その結果として、シェアが加わればよいと思います。
今、日本メーカーをすべて合わせても世界シェア10%に満たない現状なので、少なくとも日本メーカートータルでトップメーカーに匹敵する3割ぐらいのシェアは取ろうという気概は持ちたいと考えています。
エリアごとの戦略は。
松本
現在手がけているのが欧州で、あとは台湾や香港、シンガポールなどアジア圏を含めた世界約30カ国です。中国市場は3G方式の承認が遅れていて06年になります。しかし需要が大きいのではずせない地域ですから、3Gの立ち上がりのチャンスをうかがっています。ロシアはすでに参入していて、ビジネスを強化していきます。北米向けには、携帯電話と一体化したPDA「SIDEKICK-II」をTモバイルから発売しています。
スピードで対抗
一方、国内では欧米に続いて韓国と海外メーカーの参入が相次いでいますが、迎える側としての対応策は。
松本
黒船来襲にどう備えるかですね。日本メーカーが海外市場に出るときの苦しみと逆のことが起きています。ビッグサプライヤーは日本向けにかなりカスタマイズしないと通用しません。しかし、ユーザーやキャリアの意向に合わせても、投資効果やメリットがどこまであるかは不明です。
携帯電話はある程度ロットが出て、初めて意味があります。カスタマイズできるとしても時間がかかるので、直近ではそれほど影響は出ないと思います。ただ、海外メーカーも学習効果が出てくる3〜4年後には脅威になるでしょうから、将来に向けて体力を蓄えておきます。
06年はMNPにより携帯電話市場が久しぶりに動くのではないかといわれます。市場の規模と台数、御社の目標について教えてください。
松本
MNPの特需で4500万台までは回復すると見ています。MNPでさらに増えるかかどうかはわかりませんが、その備えはしなければならないと思います。
今年度は1100万台を目標にしているので、06年度はその数字を上回るためにも月100万台は達成したいですね。あとは海外でどれだけ伸ばすかです。
05年はユーザーの趣向に合わせた商品を出すことで、結果的に僅差で1番になったまでです。今後もトップを維持するに越したことはありませんが、あくまでも結果にすぎません。
MNPへの対応や海外ビジネスによって今後の事業が決まる大きな転換期にあると言えます。当然、競合他社も巻き返してきますし、体力もあります。そこをどうやってスピードで対抗するかです。ただ、1位を守るために無理をするということはありません。
(聞き手・土谷宜弘)