TOPへ戻る
編集コンセプト
2012年発売号一覧
2011年発売号一覧
2010年発売号一覧
2009年発売号一覧
2008年発売号一覧
2007年発売号一覧
2006年発売号一覧
2005年発売号一覧
2004年発売号一覧
2003年発売号一覧
2002年発売号一覧
2001年発売号一覧
インタビュー集2012
インタビュー集2011
インタビュー集2010
インタビュー集2009
インタビュー集2008
インタビュー集2007
インタビュー集2006
インタビュー集2005
インタビュー集2004
インタビュー集2003
インタビュー集2002
インタビュー集2001
お問い合わせ先
広告掲載料金
広告掲載企業
2011・2012年記事広告一覧
連載記事広告一覧
2010年記事広告一覧
2009年記事広告一覧
2008年記事広告一覧
2007年記事広告一覧
2006年記事広告一覧
2005年記事広告一覧
2004年記事広告一覧
2003年記事広告一覧
2002年記事広告一覧
お問い合わせ先
セミナースケジュール
お問い合わせ先
2006年3月号
ウィルコム
代表取締役社長
八剱洋一郎氏
06年度に不安要因はない
「070」を自慢できるブランドに
音声定額制を始めとする新しいサービスや端末で加入者を伸ばすウィルコム。八剱社長は成功の要因として「コア技術、スピード感、社内文化」を挙げる。
Profile
八剱洋一郎(やつるぎ・よういちろう)氏
1978年4月日本アイ・ビーエム入社、91年2月IBM本社国際ビジネス戦略コンサルタント、93年1月日本アイ・ビー・エム大型システムズ プロダクト マーケティング マネージャー、98年1月ネットワーク・サービス事業部長を経て、99年6月AT&Tグローバル・ネットワーク・サービス・ジャパン取締役社長、同年12月AT&Tグローバル・サービス代表取締役社長、2001年5月AT&Tアジア・パシフィックプレジデント、日本AT&T代表取締役社長、AT&Tグローバル・サービス代表取締役会長に就任。03年8月日本テレコム顧問、同年10月専務執行役 法人事業本部長、04年7月取締役 執行役副社長 営業統括本部長、05年1月DDIポケット代表取締役社長に就任。同年2月社名変更によりウィルコム代表取締役社長、現在に至る
2005年2月にDDIポケットからウィルコムに社名を変更してわずか1年で大きな躍進をとげました。その要因はどこにあるのですか。
八剱
もともとPHSはユニークなテクノロジーなので、追究すれば必ず差別化戦略が出てくるはずだと考えていました。
重要なのはスピード感で、そのためにはみんなが同じベクトルで動くことが必要です。その点、まじめな社員が多く、この特質は極めて大きな要素になると思いました。
また、DDIポケット時代に各地方会社の統合を経験しているせいか、新しく入ってきた人との融合が早かったこともあると思います。
05年3月に発表した音声定額制は大きな反響を呼びました。
八剱
3月15日に発表するまでは、採算が取れるかどうか議論がありました。NTT網をバイパスすることでアクセスチャージ(AC)を抑えるITXの導入が始まっていたので、ACが下がることはわかっていました。
半年先のコスト構造で計算したところ、比較的低価格で提案しても会社としてのAPPUは下がらないという意外な結論に達しました。
唯一、読みを外したのはウィルコム間の通話時間です。それまで1ユーザーあたり毎月約3時間ぐらいでしたが、実際に始めてみたら10数時間になっていて驚きました。
反応が早い個人市場
どういうユーザー層をターゲットにしているのですか。
八剱
もともと30代を中心に20代から40代までが主な利用者となっていました。この年代に定額制に関するマーケットリサーチを実施したら、意外なことに「4000円台でも十分」という結果が出ました。
しかし、3900円ではインパクトがないし、価格としても安いかどうかは疑問でした。結局、2900円にしても採算が取れることがわかったので、「最初からこれで行こう」ということになりました。
発表の翌日から、加入者が増え始めました。私はこれまで法人相手の営業を担当してきましたが、法人市場はどんなに素晴らしいサービスでも2〜3カ月は検討しますから、少しずつ増えてくるものです。コンシューマー市場の反応の早さに驚きました。
社員も、スピード感を持って取り組むのは大変だけれど、マーケットは確実に反応してくれるという手応えがあったと思います。
「W-ZERO3」も発売以来好評で、社員ががんばっているという印象があります。
八剱
W-ZERO3については、「W-SIM(ウィルコムシム)」と呼ばれる小型通信モジュールの開発に一番苦労しました。W-SIMの内蔵アンテナは技術的に難しく、世界中から素材を探してきて、内蔵しても電波特質が下がらないという自信の下に作っています。
多種多様の端末を提供するために、W-SIMを使ったコンソーシアムの考え方が出てきました。技術を開示し、技術的な疑問については当社がバックエンドで対応するという構想を昨年7月に発表したところ、予想外の反響がありました。
ユーザーの視点が必要
今年はMNP(番号ポータビリティ)や新規参入、新サービスなどがあり、特別な1年です。そのなかでウィルコムはどのように存在意義を示していくのですか。
八剱
MNPがユーザーにフレンドリーかどうかは疑問です。番号が変わらないのはいいことですが、例えば通話相手が事業者を変更したことがわからなければ、通話料金を気にせずに話してしまい、請求書を見て気づくといった事態も考えられます。
また、メールアドレスは変更しなければいけないので、番号だけ変わらないことにメリットがあるのでしょうか。
私はマイラインの価格競争のような大騒動が起きるのではないかと予想しています。当時、コンマ1円の価格差を追求するあまり、信頼感といったユーザーの視点が欠けていました。携帯電話も料金という下位のレイヤか、「着うた」や「おサイフケータイ」のような上位レイヤばかりで、ユーザーの視点に立った議論が少ないように思います。
MNPのリクエストに応えられないのは残念な面もありますが、無関係であることを逆にメリットにして、施策を打っていくべきだと考えています。「070」という番号を胸を張って言えるようになることがゴールです。
総務省が次世代ワイヤレスブロードバンドを発表しました。
八剱
次世代PHSのアイデアに関しては総務省に認めていただいたので、2.3GHzで実験局の免許を取得し、実験を行っています。
WiMAXを使うといっても、実際に動いているのを見た人がいないので、実証していくことが一番重要です。国民に幅広く提供するとなると、マイクロセルのソリューションが必要になるという強い信念を持っています。
次世代PHSの速度は「最低でもで20Mbpsは出す」と宣言しています。既存基地局の16〜17万局のロケーションを有効活用し、今のPHSシステムと次世代PHSシステムのデュアル化も検討したいと考えています。
100万人以上いるデータユーザーにブロードバンドワイヤレスを提供するのは、マイクロセルだからできることだと思います。重要なのはスピードもさることながら、数が増えてきたときに対応できる技術です。
「CDMA2000 1XWIN」や「HSDPA」のトップスピードは非常に速いけれど、実際にユーザーが入ってくると、カタログスペックよりも速度が落ちます。PHSの場合、カタログスペック上はあまり速くありませんが、スループットが落ちにくいという特性があります。カタログスペックで20〜30Mbpsを達成し、その何割かが出せるようにしたいと考えています。机上論ではなく、今年中に目に見えるものを出していきます。
スピード感を持った経営
御社の経営戦略では何がキーワードになるのですか。
八剱
PHSテクノロジーというコア技術が会社のよりどころです。しかし、他社にはないコアを持っている会社はめったにないと思います。幸いなことに、PHSの技術は当社しかないので、そこにこだわるかぎり存在感は出てきます。その前提があった上で、次はスピードです。
マーケットの反応など未確定な要素があるなかで、戦略には2つの方向があります。1つは一生懸命マーケットリサーチをし、製品をブラッシュアップして狙っていく戦略。もう1つは、スピード感を持って世の中の判断を見る戦略です。当社の場合、もともとスタッフがたくさんいるわけではないし、1つのサービスに照準をあわせているとスピードが遅くなるので、前者は向いていないと判断しました。
スピード感を持って経営をすると、失敗をする可能性があります。その時に、どういう評価をするかが重要です。厳しく処罰していたのでは挑戦する気持ちがなくなります。
そこで次に重要なのは社内の文化で、「会社のことを思って取り組んだ結果の失敗は問題にしないようにしよう」と言ってきました。
コンシューマー市場が飽和状態になりつつあり、携帯電話事業者も法人市場に乗り出しています。
八剱
当社はモバイルキャリアとしては珍しく、シェアの40%強が法人です。
去年、音声定額でコンシューマーが増えたのですが、法人の引き合いも増えたのでシェアはそのままです。
法人ビジネスはこれまで、製品を届けたらそのままで、不親切なところがありました。
通信インフラのサービスはこれまでも手がけてきましたが、これからはセキュリティなどと組み合わせて使うことが大切だと考えています。
また、PHS網を使っているお客様に対し、何かトラブルがあった時の連絡先も必要です。
中堅企業からの問い合わせ窓口として担当営業に加えて昨年、「ダイレクトマーケティングセンター(DMC)」をオープンしました。それでもすべて中堅企業に対応できるわけではないので、パートナーが重要になります。
IT系のパートナーはソリューションを販売していたところから引き合いが来ていて、当社のビジネスを納得して採用していただける会社と組んでいきます。
次は500万加入を目指す
今年の目標を教えてください。
八剱
売り上げは04年度までは年間100億円単位で下がっていました。今年度は前半の売り上げから類推すると、2000億円を超えそうです。前年が1720億円だったので、かなりの反転になります。06年度も悪いニュースがあるようには見えないので、そのまま伸びていくと思います。
加入者は05年1月時点で299万加入で、現在は373万加入です。3月末までに390万とすると、約90万の純増になります。06年度も同じスピードでは志としては高くないけれど、年間90万加入を実現するのはかなり大変だというのが実感で、一気に倍増するのは難しいと思います。
不確定要素があるとすると、コアモジュールです。どれぐらいのプレーヤーが提案をしていただけるかわからないけれど、すごく増えれば当社としてはグッドニュースです。
400万加入を達成した後、次は500万を目指します。