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2006年11月号

ソフトバンクモバイル
取締役 執行役副社長 技術統括兼CSO
松本徹三氏
日本の通信市場変革へ完全燃焼
3年以内に首位窺える状況作る

10月1日にボーダフォンから移行したソフトバンクモバイル。執行役副社長 技術統括兼CSOに就任した松本徹三氏は、「日本の情報通信を変えようという孫社長のビジョンを実現する一助になりたい」と語る。

Profile

松本徹三(まつもと・てつぞう)氏
1939年生まれ。62年京都大学法学部を卒業後、伊藤忠商事大阪本社に入社。概ね営業の第一線を歩む。この間9年にわたり米国に駐在。アメリカ会社Senior Vice President兼エレクトロニクス部長、東京本社通信事業部長、同マルチメディア事業部長、宇宙情報部門部門長代行を歴任後、96年3月に伊藤忠商事を退社し独立。コンサルタント会社のジャパン・リンクを設立、国内外の有力企業十数社のアドバイザーなどを勤めたが、その後同社の顧客の1つであったクアルコムの専属となり、98年4月、同社の日本法人設立とともに代表取締役社長に就任。その後、会長を経て、06年5月にクアルコム米国本社上級副社長に専任していたが同年9月、ボーダフォン(現ソフトバンクモバイル)執行役副社長技術統括兼CSO(最高戦略責任者)に就任、現在に至る

  米クアルコム副社長からソフトバンクモバイル副社長に転じるというニュースは、業界に衝撃を与えました。転職を決意したのは、どのような経緯からですか。

松本 孫(正義)社長には、「私は日本の情報通信を変えようとしている」「ADSLでは無茶をしたけれど、日本も少しはよくなった。さらに大きな賭けをしてでも日本を変えようとしている。協力してほしい」と言われました。
 孫社長に口説かれていたときに、ソフトバンクとKDDIの板ばさみになるのは嫌だからと、クアルコムジャパンを辞めて米国本社に移りました。
 日本の仕事は捨てるつもりだったのですが、振り返ってみると、長年、通信業界に身を置いてきて「日本の情報通信はこれでいいのか」と常にもやもやしてきました。意識していなかったけれど、不完全燃焼だったことに気づいたんです。
 私にはできなかったことでも、孫社長は人並みはずれたエネルギーと執念を持っていますから、実現できるかもしれません。難しさは「火中の栗を拾う」どころではありませんが、その一助になりたいと思っています。

「孫社長とは波長が合う」

  入社して1カ月以上たちましたが、どのような感想を持っていますか。

松本 新しい会社に入ると、「会社になじめましたか」とよく聞かれますが、私は入社1日目からなじめました。孫社長はあれだけの人ですからスケールが違うものの、波長はものすごく合います。
 一般的に、孫社長の発言は「無理難題」「非現実的」と言われますが、私はその発言の真意がわかる数少ない1人だと思っています。
 当社には、もともとJRが作ったJ-フォンの文化があり、そこにボーダフォンという英国の文化が入ってきました。そして今度は、ソフトバンクという「火星人」が入ってきたように見えるかもしれません。
 しかし、孫社長の言葉を「通訳」して社員とコミュニケーションを取り、貢献していけるという自信を持っています。

  技術統括兼CSO(最高戦略責任者)としての役割について教えてください。

松本 ソフトバンクは自社で技術を持たないので、世界中から最高の技術を採用することができます。社内には端末や周波数、ネットワークなど各分野の専門家がいます。技術統括としての私の役割は、端末やサービスに関して、ソフトバンクにとってベストな技術、その技術を採用する時期などをアドバイスすることです。
 社長や営業担当の副社長、役員、部長と皆が戦略を考えながら仕事をしています。では、なぜCSOを置くかというと、2つの大きな役割があるからです。
 1つは、各自の戦略がばらばらだったら、会社としてベクトルが合わないので、全体として整合性を取ること。もう1つは、大きな抜けがないこと。もし抜けがあれば、それは私の責任になります。

競争が日本の活力になる

  日本の携帯電話市場の現状についてどのように見ていますか。そのなかで、ソフトバンクの位置付けや役割はどうなっているのでしょうか。

松本 ソフトバンクはスピードとネットワークサービスの2点で優れています。
 基本的に、市場は三つ巴状態だと活力のある競争が生まれて発展します。ソフトバンクが草刈場にでもなったら、NTTドコモとKDDIの2強になり改革も遅れます。改革が遅れると、日本は世界のリーダーになれません。
 日本はさまざまなアプリケーションが進んでいるのに、メーカーは世界で活躍できないことに、日本人として残念な気持ちを持ってきました。
 ソフトバンクの参入で競争が激しくなれば、ドコモやKDDIにとって刺激になり、日本全体の活力になります。そうすれば、日本が名実ともに世界の先端を行くことにもつながるはずです。

  CDMA2000技術のライセンス元としてクアルコムはKDDIと密接な関係にあります。なかでも、松本さんはKDDIの3Gにおける発展に深くかかわり、技術面なども知り尽くしているといわれます。KDDIとの関係は気になりませんでしたか。

松本 KDDIとの関係は最後まで気になりました。私はこれまで自分の仕事に一生懸命取り組んだだけなんですよ。クアルコムに勤めている間は、同社の利益を最大限にすることを考えていましたが、その際、クアルコムとKDDIとの間に利益相反はほとんどありませんでした。
 ソフトバンクの人間になったからには、今後KDDIは競争相手になります。しかし、クアルコムの技術に関する知識や、クアルコムで培った人間関係などは消えるものではなく、それをソフトバンクのために活かすことは良心に恥じるものではありません。
 ぎりぎりまでかなり悩みましたが、今はもう吹っ切れています。クアルコムは基本的にはどことでも等距離で組む方針ですから、ソフトバンクとは、KDDIと同じく緊密な関係を築けます。

  ソフトバンクに移籍するにあたり、クアルコムの反応はどうでしたか。

松本 「クアルコムとケンカでもしたのか」と言う人がいますが、ソフトバンクに来たのは、居心地のいい場所を捨ててまで取り組む価値を認めたからで、完全燃焼するためです。
 クアルコムとは最後まで友好的な関係でした。CEO(最高経営責任者)のポール・ジェイコブス氏には、「ソフトバンクがボーダフォンを買収したという話を聞いたとき、孫社長は松本を取りに来るし、松本は受けると思ったので驚かない。自分としてはクアルコムに残ってほしいが、ソフトバンクはKDDI同様、重要なお客様になるので、よろしく頼む」と言われました。
 だから、「私は今度はベストな技術を選ぶ立場になるが、あなたが自社の技術に自信を持っているなら、何も心配する必要はないはずだ。ただ、値段交渉のときは覚悟しておいてよ」と言ったら、笑っていました。
 ポールはKDDIのことをとても気にしていました。「2社とも非常に重要なお客様だけれど、仕方がない」と。米国では、こういうことは当たり前ですから。

携帯はWeb2.0のカギに

  ソフトバンクの携帯電話事業について、その莫大な負債も含めて一部のアナリストは悲観的な見方をしています。ソフトバンクの可能性はどこにあるのでしょうか。

松本 ネットワークサービス産業は携帯環境にまだ十分アクセスしていません。そこで、ヤフーをはじめとするネットワークサービス事業者は取り組んでいるのですが、携帯環境での事業運営は電波の免許を取得した企業に限られます。
 しかも日本の場合、端末の企画から流通までを事業者が手がけています。携帯環境では、携帯通信事業者でなければ、ほとんど何もできません。
 ソフトバンクは現在のボーダフォンではなく、将来のボーダフォンを買いました。具体的には、ネットワークサービス産業のリーダーであるソフトバンクグループの重要な一翼を担う携帯通信事業を買ったのです。将来のネットワークサービスを理解せずに、この価値を云々できるでしょうか。

  ネットワークサービスと携帯電話はどのように関係してくるのですか。

松本 ネットワークサービス産業は、PCのインターネットで成長してきました。自宅でネットワークサービスを利用する人は、PCに向かっている間だけです。ところが、電車に乗ったり、仕事の合い間に時間つぶしをするといった携帯環境で過ごす時間はそれ以上にあります。
 さらに、これからWeb2.0の時代になると、利用者の発信が価値創造につながるようになります。街角で撮影した写真をブログにアップするといった携帯電話の使い方が増えるはずです。
 携帯電話はWeb2.0の重要なカギになります。ソフトバンクがWeb2.0全体のサービスを考える上で、携帯電話事業を外すことはできません。
 だからこそ、社運を賭けてもボーダフォンを買いました。将来ネットワークサービスの拡大により、ソフトバンクはリーダーシップを取れます。

MNPではベストを尽くす

  ソフトバンクはネットワーク整備でドコモやKDDIに遅れを取っています。

松本 通信事業者は、いつでもどこでもつながるネットワークを持っていることが大前提です。しかし、これが優先とか、これが後回しということはありません。すべて重要です。
 携帯電話ビジネスをサッカーに例えると、ネットワークはディフェンダーに相当します。ディフェンスに穴があれば点を入れられてしまいますが、鉄壁な守りであればドコモやKDDIに負けません。
 ただ、完ぺきな守備というのは不可能で、どうしても不満は残ります。ネットワークに関してドコモやKDDIに若干遅れていることは否めませんが、できるだけ早期に2社と引けを取らないレベルまで引き上げます。
 そして端末とサービスがミッドフィルダーです。ユーザーはサービスではなく、それを具現化する端末を買うので、端末とサービスは一体化しています。端末を買うことからすべてが始まります。
 マーケティングはフォワードです。ソフトバンクはマーケティングが得意です。1点も点を入れさせずに守り、フォワードがシュートを1本入れたら勝ちです。われわれは「やるべきことをやっていけば勝てる」と考えています。

  10月24日に番号ポータビリティ(MNP)が始まります。どういう姿勢で臨むのですか。

松本 とにかく全身全霊を込めてベストを尽くすしかありません。古風なことを言うようですが、下手を打つのは慢心があったり、世の中を甘く見たり、さぼったりしたときです。ベストを尽くしていれば、悪いことにはならないものです。

  今後の抱負について教えてください。

松本 孫社長は「携帯電話事業では10年以内にトップに立つ」と公言しています。ほら吹きと思われるかもしれませんが、私も真面目に「10年以内にトップに立てないという理由はない。だから本当に立てるように全力を挙げよう」という気持ちです。
 今は夢みたいな話でも、3年以内には「実現するかもしれない」と言われる状態にしたい。そのためには鉄壁の守備と、自由自在な商品ソフトウェア戦略が重要です。
(聞き手・土谷宜弘)

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