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2008年4月号

NTTドコモ 代表取締役社長
中村 維夫氏
闇雲に数を追う経営は無理がある
次の主戦場はコンテンツ競争

MNP(番号ポータビリティ)では加入者の流出が続いたものの、
「905i」シリーズで復調を印象づけたNTTドコモ。
これからの抱負として中村維夫社長は
「日本という『コップの中の競争』ではなく、
世界の中で競争していくことも視野に入れていきたい」と語る。

Profile

中村維夫氏
(なかむら・まさお)
1944年生まれ。東京大学法学部卒。1969年日本電信電話公社(現NTT)入社。88年労働部担当部長。91年京都中支店長。94年宣伝部長。95年労働部長。96年埼玉支店長。98年6月、NTTドコモ取締役経理部長に。99年1月取締役財務部長。同6月、常務取締役就任。01年6月常務取締役MM事業本部長。02年6月代表取締役副社長 営業本部長、FOMA営業推進室長兼務。02年7月代表取締役副社長 営業本部長。04年6月より現職

昨年秋に発売された「905i」シリーズが好調ですね。

中村 ドコモの売り場に行列ができたのはFOMAになって初めてではないでしょうか。ご記憶の通り、FOMAは当初、サイズが大きく、待受時間も限られていました。技術がこなれてきて携帯電話として使い勝手のよい薄さになり、さまざまな機能も搭載されてきたことが好調につながっていると思います。

1月末からは「705i」シリーズも発売されています。年間を通じて最大の商戦期である春商戦が始まりましたが、若年層を中心にかなり期待できるのではありませんか。

中村 そうですね。ただ、最近の高校生のほとんどは携帯電話を持っています。新規加入は高校に進学する「15の春」しか残されていません。
 春商戦はこのまま905iと705iで攻めていきますが、機種変更のお客様が多く、なかなか純増につながらないのが実情です。それでも、新販売方式により機種変更でも期間契約をしていただいているので、解約率はだいぶ下がっています。新規と機種変更の端末価格差もなくなってきました。これからも既存のお客様を大事にする方向で取り組んでいきたいと思います。

ドコモは、端末価格や通話料金が高いこと、FOMAの接続エリアが限られていることが課題といわれてきました。今回、割賦販売を導入したことで、その課題を1つクリアしたように見えます。

中村 905iシリーズ以降、9割以上のお客様に割賦方式の「バリューコース」を選んでいただいており、ほぼ受け入れられたかなという気がします。
 ネットワークも、ここにきて十分なサービスエリアで通じるようになりました。引き続きエリアの整備を進めていきます。

新販売方式については、販売現場から「説明に時間がかかる」「わかりにくい」といった声も出ています。

中村 初めてのことなので、お客様にご迷惑をおかけしています。応対時間が長くなったことは確かです。その点は今後、直していかなければなりません。ただ、割賦方式により端末購入時の負担額を減らし、長く使えば使うほど通話料金が下がるという、決して難しい内容ではないので、このことをご説明し、ご理解いただければと思います。

先日、KDDI(au)に続いて家族間通話の無料化を発表されました。携帯キャリア間の料金値引き競争には批判的な見方もあります。

中村 現在、料金競争は大変激しいものがありますが、携帯電話の世界はネットワーク・端末・コンテンツ・アフターサービス、それにもちろん料金など、多方面にわたっての競争であるとともに、本来の携帯電話を追い求める技術面の競争であって、料金だけで競争しているわけではありません。
 また、これからは日本という「コップの中の競争」ではなく、世界の中で競争していくことも、視野に入れていきたいと思います。

経営スタンスとして、シェアを取ることを重視するのですか、それとも利益を確保することに重点を置いていくのですか。

中村 この先、新規需要が大幅に増えることはなく、従来のように端末でがむしゃらに新規を獲得するという方向にはありません。そうなると、足腰の強い体質に持っていくことが必要で、これからはコストに力点を置いた経営が求められると思います。
 既存のお客様の満足度を高め、解約率を下げることに力を入れていきます。それが、これから加入してくださるお客様へのメッセージにもなると思っています。

法人市場は過当競争

この1月には、米グーグルとモバイルインターネットサービスで提携しました。携帯電話のPC化、オープン型ビジネスモデルへの移行が言われていますが、サービス面では何に重点を置いていきますか。

中村 携帯電話普及の初期の頃は、端末やネットワークなど改善する余地がたくさんありました。しかしここまで進化すると、ある程度、お客様のニーズに合致したものが作れるようになっています。
 サービスでも例えば音楽は、スピードさえ上がればどの事業者でも手がけることができます。つまり、各社の端末や料金、サービスの違いは次第に収斂してきており、優位性や特徴を出していくことが難しくなっています。
 そうなると、次の主戦場はコンテンツになります。当然のことながら、新しい技術は次々に出てきます。お客様の興味は、その上に載っているコンテンツに向かっています。「インターネットのモバイル化」と同時に、より携帯電話に特化したコンテンツがどんどん出てくるようになると思います。
(聞き手・土谷宜弘)
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