●日本のワイヤレスブロードバンド市場の現状をどのように捉えていますか。
野坂 私は、後年になって振り返ると、2010年は「ワイヤレスブロードバンド元年」と呼ばれる年になるのではないかと思っています。
通信市場というものは、ネットワーク、デバイス、コンテンツのバランスが取れていないと成長しません。ネットワークについては、当社が昨年からWiMAXサービスを提供しており、今年はDC-HSDPA、そしてLTEのサービスが登場します。デバイスは5月にiPadが出て、それを追うように続々とタブレット端末が登場してきています。また、スマートフォンもiPhone 4やIS03などのAndroid搭載端末が本格的に登場しており、それにともなって、コンテンツも充実して来ています。
そういう意味では、当社にとって絶好の追い風が吹いてきたと感じています。
●その追い風に乗って、当初は苦戦していた「UQ WiMAX」の加入数も急増していますね。
野坂 その通りで、上期(9月)を終えて33万7000加入となりました。7月の「ワイヤレスジャパン2010」での講演で、上期で約33万の見込みと話しましたが、その通りにオンラインで来ることができました。
WiMAX搭載PCを利用しやすく
●今年度末で80万加入という目標を立てていますが、下期で46万〜47万ですから、好調とはいえ結構厳しい数字ではないかと感じます。
野坂 そういう見方があるのは承知していますが、私は年度末で80万は十分達成できると考えています。
現在の毎月の純増数は、4万3000程度で推移しています。当社の現在の2大チャネルは、量販店系とISP系のMVNOですが、実はこの9月に当社の推計ベースでは、量販店での加入獲得数がトップシェアになったと見ています。これは我々にとって悲願達成ともいうべき大きな意味のあることで、量販店チャネルで戦っていける手応えをつかみました。
ISPチャネルについては、各社がそれぞれ実績を上げてきており、「WiMAXはいける」という手応えを感じておられます。なかには「ADSLの置き換えも狙える」とおっしゃるISPチャネルもあります。
つまり、この2大系チャネルだけで、現在の4万増のペースは最低でも維持でき、単純計算で年度末に58万までは行きます。
これに加え、KDDIチャネルが、9月からようやく本格的に動き出しました。KDDIが当社のMVNOとして、3GとWiMAXのハイブリッド端末を本格投入し、最初の1カ月間でかなりの数が出ました。
こちらのメインターゲットはビジネスマンです。我々は「3GとWiMAXの最強コンビ」と呼んでいますが、「エリアの3G」と「スピードのWiMAX」ということで、例えば首都圏等ではWiMAXを利用し、出張で地方に行かれた場合は3Gでアクセスすることができるのです。
●ここに来て販売チャネルも整ったわけですね。チャネル以外では、どのような施策を打っていきますか。
野坂 キーワードは「デバイス」です。上期は、Wi-Fiルーターのラインナップを「WiMAX Speed Wi-Fi」と総称して普及に努め、iPadの登場という追い風もあって、従来データ通信カードが圧倒的だったデバイス比率を大きく変え、加入数増にも貢献しました。
下期はさらに、WiMAX搭載PCに注力します。現在、WiMAXを搭載したPCのWiMAX利用率はせいぜい10%程度です。
WiMAX搭載PCの特徴は、立ち上げたら即ネットにつながる「簡単・速攻接続」、データ通信カード内蔵の「スマートさ」、そしてWORLD WiMAX対応で「海外でも利用可能」な点でしょう。これらは使っていただかないと分からないことです。我々のお客様は、使ってみると便利であることを納得され、ほとんどが契約して下さるのが現状です。そこで、まず使っていただきやすいように、「使ってナットク」というキャッチコピーを付けて「WiMAX PCバリューセット」を10月1日から提供を開始しました。
PCとWiMAX通信機能、お手頃な価格を、ハンバーガーのセットメニューのようなイメージで提供し、2段階定額の「UQ Step」を申し込まれた場合は、最大2カ月の無料期間終了後、その先10カ月間は月額380円のスタート価格を0円にし、上限も4980円から4600円に値下げしました。これなら利用しない場合は0円なのでお客様のリスクはなく、使ってみたい気になった時にいつでも利用してもらえるというわけです。そして、使ってもらえればWiMAXの良さを理解していただける自信があります。
我々にとっても、バリューセットを提供することで、WiMAX搭載PC購入者の加入率が上がり、年度末の80万加入達成も現実味を帯びてくるというわけです。
エリアは面と線で
●こうした施策が打てるのも、エリアが充実してきたからだと思います。
野坂 その通りです。当初2009年度末(2010年3月)で4000基地局の計画でしたが、実際にはそれを大きく上回る7000局を打ったのですから、前社長の田中(孝司氏)の決断はものすごく大きかったと思っています。
基地局はその後も前倒しで伸びており、上期で約1万1000局となり、年度末には1万5000局を目指します。
●エリアはどのような方針で拡大していくのですか。
(聞き手・土谷宜弘)
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