●900MHz帯の割り当てがソフトバンクモバイルに決まりました。御社も申請していましたが、今の感想をお聞かせください。
ガン 残念な結果に終わりましたが、開設計画の内容や審査結果はそれほど悪くなかったと思います。大手3キャリアと比べると会社の規模や資金力、ユーザー数などで大きな差があるにもかかわらず、審査結果はソフトバンクの9点に次ぎ、当社は8点と健闘しました。
それほど悪くないというのは、「既存事業者の移行促進計画がより充実していること」という項目で、我々が最も高い評価を獲得したからです。900MHz帯を現在使用している事業者の迷惑にならないように移行する計画を立てていたので、内容には自信がありました。高い評価をいただけたことで、社内でも喜んでいます。
その一方で、「周波数幅に対する契約数の割合」といった項目では、0点で、新興事業者の当社にとっては、ちょっと厳しいなという印象もあります。
●次は、700MHz帯の割り当てが早ければ今夏にも決まります。10MHz幅×2を3社に割り振るということで、今度は申請が認められる可能性が高そうです。
ガン 今までの苦労は決して無駄にならないはずで、既存事業者を速やかに、かつスムーズに移行する方法など900MHz帯で学んだことは700MHz帯で活かしたいと考えています。700MHz帯でも、しっかり計画を立てその計画を実行する予定です。
4社の中で最も高い成長率を達成
●この2月、2015年3月期に向けた中期事業戦略「成長戦略 2015」を発表しました。どのような経緯から策定したのですか。
ガン 昨年6月、2011年3月期決算が終わり、東日本大震災の復旧作業も一段落した段階で、経営陣だけでなく営業やサービス企画、カスタマーサービスなど社内の各部門のマネージャークラスも加わり、さらに外部のコンサルタントにも入ってもらい、みんなで力を合わせて作りました。開業以来初めて対外発表をした3カ年計画で、過去3年間を振り返って課題を掘り起こすとともに、今後3年間の事業目標を定めたものです。
09年3月期から2012年3月期(予想)の財務実績をまとめたところ、売上高は65%増加して2000億円超を達成予定で、経常利益も赤字から黒字に転換する見込みです。過去3年間における売上高の成長率は65.2%と4社平均の4.4%を大きく上回り、3カ年の売上高CAGR(年平均成長率)も18.2%と4社の中で最も高い成長率を達成する予定です。TCA(電気通信事業者協会)の契約数では各社とも純増を続けていますが、売上では当社が最も成長しています。
では、これからどうするのかというと、企業である以上、さらなる成長を続けなければなりません。2015年3月期には、売上高を2030億円から3500億円に、EBITDAは630億円から900億円に、経常利益も125億円から400億円にそれぞれ増やすことを目標にしています。
その前提条件として、モバイルのユーザー数を400万人から660万人に増やします。固定のADSL加入者は減少が続きますが、ユーザー数の総計は750万人になる見込みです。また、下り最大75Mbpsの「EMOBILE LTE」を112Mbpsへと高速化するほか、バックボーン回線の100%IP化、エリアカバー率の拡大などに総額1000億円の設備投資を予定しています。
●成長戦略の実現には、モバイル事業を拡大してユーザー数を増やすことが生命線になりますね。
ガン その通りです。そのために成長戦略のステップ1として、今年から来年にかけては、既存ビジネスであるモバイルブロードバンドを強化します。現在約400万人いるお客さまの95%がPocket WiFi等のデータ通信端末のお客さまです。端末の種類によって下りの最大速度は7.2〜42Mbpsまでありますが、データトラフィックの急増により通信速度が遅くなっており、お客さま満足度向上のためにも「EMOBILE LTE」に一日も早く移行しなければならないと考え、3月15日からサービスを開始します。
●400万人のモバイルユーザーを3年間で660万人に増やすというのはかなり大変なのではありませんか。
ガン 既存の7.2Mbpsおよび42Mbpsのお客さまには「EMOBILE LTE」に移行いただくとともに、まだモバイルブロードバンドを利用していない固定ブロードバンドユーザーを取り込んでいきます。
●現在の課題はどのようなことですか。
(聞き手・土谷宜弘)
続きは本誌をご覧下さい