2018年8月号
「光+Wi-Fi」軸にIoT実現
企業イメージ変革で増収転換
井上 福造 氏
(いのうえ・ふくぞう)
1955年7月生まれ、兵庫県出身。1980年3月東京大学法学部卒業後、同年4月に日本電信電話公社に入社。2009年6月NTT東日本 コンシューマ事業推進本部ブロードバンドサービス部長、12年6月取締役 経営企画部長、13年7月取締役 ビジネス開発本部長、14年6月常務取締役 ビジネス開発本部長、15年6月代表取締役常務取締役 ビジネス開発本部長、16年6月代表取締役副社長 ビジネス開発本部長を経て、18年6月に代表取締役社長に就任
NTT東日本
代表取締役社長
井上 福造 氏
「電話や光回線の会社というイメージから、ICTソリューション企業へ変革させていくのが、私の会社人生の最後の仕事」──。就任会見でこう意気込んだNTT東日本の井上福造新社長。 変革のカギを握るのは「IoT」だ。「光+Wi-Fi」を軸に、画像系IoTソリューションに注力するほか、エッジコンピューティングにも積極的に取り組むNTT東日本の新戦略を聞いた。
●6期連続の増益、4期連続の過去最高益と好調な業績が続くなか、社長のバトンを引き継ぎました。まずはNTT東日本の現状をどう捉えているのか、教えてください。
井上 一番大きかった構造変革は光コラボです。ケータイが高速化する、スマホが普及する、ビジネスモデルがクラウド化するといった環境変化のなか、3年前にフレッツを卸売モデルに転換した結果、6期連続の増益を達成できました。
光コラボの一番の成果は、光サービスの市場を再び拡大できたことです。営業コストもかなり効率化できました。
しかし現状のままでは、光コラボの市場は飽和してきますし、営業コストの削減効果も小さくなっていきます。これが今の最大の課題です。
増益を維持していくためには、さらなる抜本的な取り組みをやっていかざるを得ません。
●具体的には、何に注力しますか。
井上 まずは光サービスの拡大です。これまでの光コラボには、既存の通信のリプレースという側面が強くありました。そのため、元々あった通信契約をNTTから光コラボ事業者にする「転用」も一定程度あったわけです。
今後はこうした従来型モデル以外の、新しいモデルを作っていく必要があります。私は「コラボネイティブ」と言っているのですが、クラウド/IoT時代の新しいビジネスモデルの中に、「通信」を部品として組み込んでいきます。
●どういうことですか。
井上 先日発表した万引き防止AIサービス「AIガードマン」が、コラボネイティブの代表例です。
AIガードマンは、売場に導入したカメラの映像をクラウドと連携しながらAIで解析し、不審な行動を検知するIoTソリューションです。従来、通信化されていなかった万引き対策に、「通信」を組み込んでパッケージ化して提供しているわけですね。
このコラボネイティブを誰が販売するかですが、光コラボ事業者が光サービスの付加価値として販売することもありますし、当社が直接販売する場合もあります。
地域の中小企業や自治体が抱える課題を解決する、新しいサービスを開発していくことで、光コラボの回線需要やARPUを上げていくというアプローチです。
IoTが光コラボの新需要
●AIガードマンのほか、農業IoTソリューションなどもすでに提供していますが、新サービスの軸はやはりIoTですか。
井上 そうですね。IoTの「Things」のところが光の新しい需要になると考えています。
人が使う電話やPC向けの回線はほぼ普及しています。ADSLやISDNといった旧タイプの回線のマイグレーション需要は出てきますが、それほど増えるとは思えません。
●実際、IoT向けの光需要は広がってきているのですか。
井上 手応えを感じています。やはり、「投資」と受け止めていただけるのが大きいですね。今までの光サービスの導入メリットは結局、回線コストの削減や性能アップでした。しかし、IoTはそうではないマーケットです。「人手不足だから、人の代わりにIoTを入れる」というのは「投資」ですよね。こうした案件がかなり増えてきました。
●IoTの適用領域は非常に広いですが、中小企業や自治体のあらゆるニーズに応えるべく、多様なIoTソリューションをパッケージ化して提供していく考えですか。
(聞き手・太田智晴)
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