2021年11月号
企業文化改革へ全社員の声を聞く
リスタートは「統合サービス」軸に
竹下隆史 氏
(たけした・たかふみ)
1965年3月28日生まれ。1989年当社入社。2006年、ネットワークサービスアンドテクノロジーズ(現・ネットワンシステムズ)のテクニカルサービス本部執行本部長、同社取締役、2018年に当社取締役を経て、2021年4月に代表取締役社長に就任。現在に至る
ネットワンシステムズ
代表取締役社長
竹下隆史 氏
不祥事からの信頼回復に向け、この4月に経営体制を刷新。ネットワンシステムズは竹下新社長の下、「継続成長とガバナンスの両立」を掲げて再スタートを切った。通信ネットワークの発展と歩を合わせて成長してきた同社は、ネットワークインテグレーター(NIer)の将来像をどう描いているのか。
●度重なる不祥事の発覚で損なわれた信頼の回復を掲げて、4月に経営体制を刷新しました。この半年間、どのように取り組んできましたか。
竹下 会社の機能や文化のどこが至らなかったのかを理解し、新しい機能と文化をどのようにして構築するかが、私の大前提のミッションです。着任時に所信表明したのは、継続した成長とガバナンスの両立でした。これを、何年かかってもやり遂げるため、最初の1年でその基盤を作ります。
まずやるべきことは、信用回復です。マーケットとお客様に対して、改善状況と再発防止策の進捗を報告するとともに、成長を止めないというメッセージをお伝えしています。直接またはリモートで会社の状況から再発防止策、どうやってガバナンスを強化していくのかなどまで、かなりの数のお客様と話をしており、現在も続けています。
チームへの貢献を評価する
●社員の受け止め方はどうですか。
竹下 ほとんどの社員にとって、一連の不祥事は寝耳に水であり、実直に仕事をしてきた社員ばかりです。社員の家族も含めて大きな心配をかけたので、未来をどう作っていくのかをしっかりと示さなければなりません。
そこで、会社の機能の再編・強化に取り組むと同時に、全社員2600名と対話するリスペクトコミュニケーションチームを立ち上げました。現場の声を聞いて経営側が真摯に反省し、行動と意識を社員と一緒に変えていく取り組みを、今まさに実行しています。
●外部の調査委員会の報告書では、企業文化にも問題点があると指摘されました。
竹下 イノベーティブな提案活動を主体とする攻めの仕事では、ある程度のミスが許容されてしまう、いわゆる“イケイケ”の仕事を称賛するカルチャーが強く根付いていました。
他方で、ミスが許されない守りの仕事は弱かった。送りバントを100回決める人も、絶対にエラーしない人も評価されるべきなのに、「それって、送りバントでしょ?」と、正当に評価しない風潮があったのは確かです。社員の声を本当に聞き取れていなかったことが、そういうところに表れていました。
●再発防止策の1つとして、個人インセンティブ報酬制度の廃止と、チームインセンティブへの移行を決めました。チームに貢献する送りバントも、今後はしっかり評価していくということですね。
竹下 ガバナンス、つまり内部統制もしっかり強化し、常にPDCAを回して社外へオープンにしていきます。
現場からすると今までやっていなかった追加の業務であり、また内部統制という言葉では社員には自分事としてイメージしにくい面もあります。そのため社内では「インナーコントロール」という言葉に言い換えて説明しています。実際に行うことは、社員1人ひとりが自分の業務で発生する可能性があるリスクを回避し、低減し、移転し、保有することです。
DXを着実にビジネス化
●ビジネス状況は堅調です。2021年度第1四半期の受注額は過去最高でした。コロナ後の市場をどう見ていますか。
竹下 最も大きく変わったのが、IT投資への考え方です。ITをコストではなく、戦略的な投資と捉える方向へドラスティックに変化しています。
例えば働き方改革にしても、少し前までは「テレワークができたらいいよね」などと言っていたのが、今はできないと仕事が進まないリスクマネジメントの話になりました。リスクベースのアプローチでデジタル化を進めなければならないと、視点が変わったのを実感しています。
当社の業績にもそれは表れています。ITをコストと見れば、年度の業績がある程度見えてから、お客様は投資を判断します。そのため、今までは期末に受注が集中していました。それが現在はどんどん前に来ています。事業成長が目的になると、早めに投資しないと効果が得られる時期も遅れていきますから。
●エンタープライズ、通信事業者、パブリック、パートナーの4つの事業セグメント別に見ると、どういったDXが進展し、どんな事業機会につながっていますか。
(聞き手・太田智晴)
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