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Interviewインタビュー

2024年10月号

6G時代に向けて市場回復
通信事業者はAPIで収益化を

加茂下哲夫 氏

加茂下哲夫 氏
(かもした・てつお)
2024年1月1日、ノキアソリューションズ&ネットワークスの代表執行役員社長に就任。30年以上にわたるIT・通信業界での経験を持ち、日本IBM、エリクソン・ジャパン、モトローラジャパン、ノキア シーメンス ネットワークス、華為技術などでセールスに関わるリーダーとしての主要な役割を歴任。直近は、オレンジビジネスサービスジャパンの代表取締役社長を務めていた

ノキアソリューションズ&ネットワークス
代表執行役員社長
加茂下哲夫 氏

6Gは「感じて、考えて、行動するネットワーク」になると語るノキア日本法人の加茂下社長。こうしたネットワークの実現に向けた重要なカギの1つとして挙げたのが、通信事業者のネットワーク機能を第三者に開放して収益化を図るAPIの提供だ。通信インフラ市場の今後、6G時代のネットワーク、RANのオープン化とクラウド化、IOWN、ローカル5Gなどについて、加茂下社長に聞いた。

ノキアが7月に開催したイベントでも主要テーマの1つとなっていましたが、「5Gマネタイゼーション(収益化)」がいまだ課題であり続けています。国内の通信事業者は非通信分野に意欲的に取り組む一方、5Gインフラ投資には慎重な姿勢です。最新の通信技術への積極投資によって成長を加速できる時代は過ぎ去ってしまったのでしょうか。

加茂下 確かに世界的に見ても、通信事業者は非通信分野への投資のポーションを増やしており、インフラへの投資は少し抑え気味です。しかし通信事業者は5G-Advancedや6Gの時代に向けて、これからAI、クラウド、Industry 5.0、APIなどによる収益化を目指していく必要があります。となると、どうしてもトラフィックは増えていきますから、インフラ投資を継続的に行わないと、通信事業者は期待に応えていくことができません。
 ご存じの通りモバイルの世界では10年ごとに新しい波が来ます。今は5Gの波がちょうど収まりかけてきたところで、底を打ったのがおそらく今年か昨年くらいです。来年ごろからOpen RANやCloud RANなども含め、6G時代に向けた準備の投資が増えていくでしょう。
 また、5Gは一段落といっても、今から5Gを導入する国もありますし、5Gのアップグレードも必要です。ノキアは、そうした契約も結構獲得できています。

通信インフラ市場全体が停滞するなか、ノキアの業績も昨年度(2023年12月期)は大幅減益でしたが、ようやく復調しそうですか。

加茂下 徐々に回復していくと思います。ノキアの業績も2030年に向けて上向きになっていくと考えており、実際、今年度はおよそ23億〜29億ユーロの営業利益を確保できる見込みです(昨年度の営業利益は16億8800万ユーロ)。

通信事業者の新収益

ノキアでは、6G時代のネットワークのビジョンをどのように描いていますか。

加茂下 6G時代のネットワークは、AIやクラウドの力を借りて、「感じて、考えて、行動するネットワーク」になっていくとノキアでは考えています。
 例えばエッジクラウドにおいては、ネットワークやセンサーで感じたものを、AIが判断し、すぐにフィードバックしていくことが必要なアプリケーション/サービスが出てくると見ており、こうしたことをきちんと実行できるネットワークが必要になってきます。
 また、ネットワーク運用の面でも、故障の兆しをデータから感じ、AIで分析して自動で未然予防していくことが求められていきます。
 そして、こうした「感じて、考えて、行動するネットワーク」を実現していくにあたって大きなテーマの1つとなるのが、ネットワークの品質を高めるだけではなく、ネットワークをいかに収益化していくのか──そのバランスを取っていくことです。ノキアはこれに貢献するソリューションやテクノロジーを提供していきますが、収益化についてはネットワークAPIを積極的に推し進めていきます。
 APIを介して、ネットワークの機能を柔軟・機敏・スケーラブルに変えられないと、ネットワークの収益化はなかなか難しいと思っているからです。
 CPaaS(Communications Platform as a Service)事業者などが、ネットワークAPIを利用して新サービスを提供できるようになれば、通信事業者にとっても新たな収益となり、ネットワークへの投資を回収していくことができます。

ネットワークAPIとは、通信事業者の網側の各種機能を利用したり、ネットワークに対して必要な性能を伝えたり、欲しい情報をネットワークから取得したりするためのAPIですね。5Gコアネットワーク(5GC)には「Network Exposure Function(NEF)」という仕組みが用意されており、ネットワーク機能を外部に公開できます。

加茂下 ノキアでは、このネットワークAPIを抽象化し、アプリケーション開発者が通信事業者のネットワーク機能を容易に利用できるようにするAPIプラットフォーム「Network as Code」を提供しています。
 APIを使ってネットワークの収益化を図ろうと考えている通信事業者は多く、ノキアはすでに仏オレンジ、トルコのタークセル、スペインのテレフォニカとAPIビジネスのエコシステムを一緒に作り上げていく契約を結んでいます。

APIが必要な時代が来た

通信事業者の網側にある課金や認証、QoS制御などの機能を第三者に開放するというアイデアは、それこそ2008年にスタートしたNGNの頃にはあったかと思います。一部ベンダーが積極的に提案してきたものの、普及することはなかったわけですが、当時と現在ではどのような状況の違いがありますか。

(聞き手・太田智晴)
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