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2002年1月号

フォーバル:大久保秀夫 代表取締役社長
機器・回線販売からネット事業へ旋回
目指すは情報通信コンサルタント

ビジネスホンやFAX、パソコンなど情報通信機器やワンビリングの電話サービスなどを手がけるフォーバルが、インターネット関連事業に大きく舵を切っている。大手オークションサイト運営会社のディー・エヌーエー(DeNA)と共同で中小企業向けのEC(電子商取引)支援サービスを開始したほか、電話料金一括請求サービスのフォーバルテレコムも、米国のインターネット検索技術会社と独占販売契約を結ぶなど、具体的な戦略を次々と打ち出している。今後のブロードバンド時代に向けて、ソリューションプロバイダー事業の本格展開を目指すフォーバルの大久保秀夫社長に、今後の戦略を聞いた。

Profile

大久保秀夫(おおくぼ・ひでお)
1977年國學院大学法学部卒業、キャラバン入社。80年フォーバル(旧新日本工販)設立社長に就任。88年社団法人ニュービジネス協議会の第1回アントレプレナー大賞受賞。95年フォーバルテレコム設立、社長に就任。所属団体:ニュービジネス協議会副会長、テレコムサービス協会理事、経済同友会会員、東京商工会議所一号議員など。54年生まれ。東京都出身。

――1980年にフォーバル(旧社名・新日本工販)を設立されて20年が経ちましたが、まず最初に、御社の現在までのビジネスモデルの流れをお聞かせ下さい。

大久保 80年当時の電話機市場は、まだ電電公社が9割を握る独占時代で、残り1割の小さな市場に約800社の電話機販売業者がひしめきあっていました。そうした中で、当社は、同業者が1年保証しか実施していなかったところに着目し、リース会社と連携して、これまでの貸与方式からリース方式で電話機10年間無料保証を打ち出し市場に参入したわけです。その後、設立1年で電電公社を除く電話機販売業界シェアトップになったのですが、当時私自身20代の勢いだけで、契約顧客へのアフターフォロー面には自省する点もありました。
 そこで、ビジネスホンに加えて、補給紙やトナーなど定期収入が得られ、かつ、定期的にメンテナンスが訪問することでお客様との信頼を育成できるFAX、コピー機、パソコンなどの情報通信機器を提案し経営を安定させる方向に転換しました。
 さらに85年のNTT民営化とともに、NCCが相次いで通信事業に新規参入した機を捉えて、当社はそれまでのハードウエア中心のビジネスから、通信回線サービスにビジネスチャンスを求めてNCCアダプター事業に取り組んだのです。

――そして、NCCアダプター事業の成功を踏まえ、さらにユーザーサイドの利便性を追求し たのが、95年に打ち出した事業ビジョンの「第三電電構想」ですね。

大久保 はい。これは、かつてのNTT、KDDの「第一電電」グループとNCC各社、移動体通信キャリアといった「第二電電」グループのサービスを一本化し、国内/国際電話、移動体通信を問わず、通信のワンストップショッピングと各キャリア料金の一括請求サービスを提供するコンセプトです。具体的には、フォーバルテレコムの「fitコールサービス」で、通信キャリアの電話サービスを大口割引の卸価格で仕入れ、エンドユーザー企業に付加価値を付けて小売りするというビジネスモデルです。

――ビジネスホンから料金一括請求が2000年までの事業の主役だとすれば、2001年以降はインターネットが事業ビジョンの中心ということになるのですね。

大久保 その通りです。次の第4ステージは、通信料金が距離に依存しない、しかも高速のブロードバンドインターネットの世代です。そこで、フォーバルテレコムでは、先ごろ中期経営計画「GET51」を策定し、2002年2月からは中島將典新社長のもとで経営刷新を図っていく考えです。そのポイントになるのは、情報通信技術の進化を見極め、ブロードバンド時代の商材を目利きできる着眼点が鍵となります。これまで主役だった音声サービスもVoIPにシフトしていく環境が整ってきたわけですが、今後フォーバルテレコムが取り組んでいく具体的なサービスコンセプトとしては、@ナビゲーション機能を簡単にする「イージーアクセス」、A高速アクセスを実現するインターネット接続サービス、B低価格のVoIPサービス――の3本柱が焦点になります。そのためにラストワンマイルのアクセス回線の解決と、セキュリティサービスへの取り組みが必要となってきます。

キーワード検索が新商材

――今後、具体的にはどんな事業展開をお考えですか。

大久保 まず、イージーアクセスの取り組みとして、フォーバルテレコムは2001年10月に、社名や製品名などのキーワードを入力するだけで特定のホームページを表示するインターネット・キーワード・サービスをはじめました。これを開発した米リアルネームズとの間で業務提携した新たなビジネス展開です。
 サービスの仕組みは、URLアドレスバーにキーワードが入力されると自動的に検索エンジンをサーチしにいくというインターネットエクスプローラーの機能を利用したものです。ブラウザーはマイクロソフト製に限られますが、「www」から始まる長いURLを入力しなくても済むのがメリットです。例えば「トヨタ」とか「ソニー」などと日本語を直接ブラウザーに入力すれば、これらの企業のトップページに直接リンクできます。米国ではすでに急速に普及しており、リアルネームズ日本法人では、プロモーションの一環として、すでに4万件の社名や組織名を登録しています。販売対象はこれまでの中小企業ユーザーだけでなく、大企業からSOHOと広範にわたります。

新規ECサイトに2200社を集める

――先ごろ御社で法人、特に中小企業・SOHOのIT化需要の実態調査を実施されましたが、調査結果から、今後どんな事業の方向性が浮かび上がってきたのでしょうか。

大久保 全体的にIT化に対する意欲は旺盛なのですが、ITノウハウ・人材の不足、各都市の地域格差が顕著でした。逆にフォーバルグループにとって中小企業のIT化の遅れは追い風でもあるのですが、取り組み方としては今後、体系付けられた情報通信コンサルタントのビジネスチャンスを見出したと思います。
 対応策としては、業種に特化した営業手法で、経営者と互角にIT化に関する提案ができるようなスキルアップを図っていきます。インターネット事業でも、まずユーザー企業のIT環境がどうなっているかを把握すると同時に、その企業を取り巻く業界の実態を理解し、ITを取り入れることでどう事業経営が変わるのかを指し示すことが重要だからです。

――これまでのOA機器、電話・FAX機器単品売りのビジネスモデルから脱皮しなければならないわけですね。

大久保 そうです。そのための策として、インターネットやパソコンに関するスキルを持たない中小企業やSOHOを対象に、短期に低コストでホームページやECサイトを開設できるようにする支援事業を推進するトータルネットワークサービス「azLink(エーゼットリンク)」事業を1999年8月に開始しました。Webコーディネーターや教育研修をはじめとする多彩な機能を担うコミュニケーションセンターを全国で展開する一方、ECサイト「バイヤーズオンライン」を運営しています。
 しかし、モール加盟数では1200店舗まで増えたのですが、集客力が足りず最終購買にはなかなか結び付かない状況にありました。
 そこで、大手オークションサイト「ビッダーズ」を手がけるディー・エヌーエー(DeNA)と資本提携を含めた協業によって中小企業向けのEC(電子商取引)支援サービスを開始することになりました。

――両社の具体的な役割を教えて下さい。

大久保 フォーバルがEC店舗の開設を希望する中小企業に対して、オンラインショップを運営するためのシステム構築、サポート、パソコンやスキャナーなどのハードウエアのリースなど初期段階に必要なインターネット接続環境を構築して、ショップ運営に関するすべての手続きなど法人への営業活動を総合的に請け負います。
 他方、DeNAではECサイトの運営とデータベースの管理を担当します。両社が共同で開設する新たなオンライン商店街「ビッドバイヤーズ」とビッダーズが連携することで、ビッダーズの登録個人ユーザー約65万人をビッドバイヤーズに誘導する狙いもあります。
 両社は、ビットバイヤーズで2003年3月までに新規顧客1000社、現在の企業と合わせ2200社の登録企業獲得を目指したいと考えています。

ラストワンマイルに商機

――インターネット事業へのシフトの一方で、これまでの中軸だったビジネスホンなどの 通信機器事業はどうなっていくのでしょうか。

大久保 当社の考え方は、パソコンとビジネスホンは遠ざかるのではなく、今後は情報受発信端末としてLANで接続され1台に統合されるようなイメージで捉えています。そうした中にセキュリティ機能やブロードバンドによるインターネット常時接続のアクセス機能も取り込まれていくでしょうね。

――今後フォーバルグループの市場展開はどんな点がポイントになりますか。

大久保 ビジネスホン販売でスタートした当初から馴染んできた通信市場をステージに営業力を培ってきた点がこれまでの強みだとすれば、今後はバランスを保って事業展開する視点が必要だと考えています。人間の体に例えると、@血管である通信分野と、A各臓器となるハードウエア、Bそこに流れるコンテンツの栄養素――の3つがバランスよく展開することで成長していくわけです。
 まず、@への足がかりとして、ADSL、FTTHを含めたインフラのラストワンマイルを確保し、VoIPに取り組んでいく考えです。Aでも、やはりIPに対応した次世代ビジネスホン開発に取り組み、Bでブロードバンドネットワークにふさわしいにコンテンツ流通といった手順を、すべて最適なパートナーと連携して取り組んでいくのがポイントになります。
 フォーバルグループでは、強力な販売力を生かしながら、ソリューションプロバイダー事業のノウハウをバランスよく蓄積し、新たなビジネスモデルを確立していきます。

(聞き手・小野憲男)

用語解説

●主要グループ会社

フォーバルテレコム:95年「第三電電構想」の中核として設立。資本金10億円。大久保秀夫社長。fitコールで国内・国際・携帯電話の各種割安なワンストップショッピング、ワンビリングサービスを実施。

フォーバルクリエーティブ:91年設立。資本金3億5000万円。早水潔社長。コンピューターシステムのセキュリティやネットワーク管理を技術サポート。

ユーエフコミュニケーションズ:96年ユニーと合弁で設立。資本金2億7825万円。淺野浩志社長。中部地区を中心にfitコールや各種情報通信機器を販売。

エーゼット:2000年設立。資本金3億円。中島將典社長。フォーバルが提供するインターネット事業「azLink」サービスの各サイト企画・開発・運営。
 

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