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2002年7月号

ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC 代表取締役社長:サイモン・カニンガム 氏
CAN、iDCを核に法人ユーザー開拓
“顧客志向”でサービス開発を進める

世界70カ国に顧客を持つグローバルキャリア、ケーブル・アンド・ワイヤレスのグループ企業として4年目を迎えたケーブル・アンド・ワイヤレスIDCの積極果敢な事業展開が脚光を浴びている。ISPのPSINet、iDC事業者のエクソダス、コンテンツ配信技術を持つデジタルアイランドと、業界大手の買収により大きく広がった事業基盤を生かし、IPおよびデータ系のサービス強化を次々と打ち出している。サイモン・カニンガム社長に、日本市場におけるビジネスの現状と今後の戦略を聞いた。

Profile

サイモン・カニンガム
1981年8月ロンドン大学卒業(物理学専攻)、同年10月シュランベルジェ社入社、95年6月オムネス社入社、97年9月ケーブル・アンド・ワイヤレスplc入社、ケーブル・アンド・ワイヤレス・ジャパン代表取締役社長を経て、99年6月ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC代表取締役就任。現在にいたる。1960年3月生まれ(イギリス国籍)

――まず、現在の事業展開における注力分野を教えて下さい。

カニンガム 当社は法人のお客様をメーンターゲットとして、IPおよびデータ系のサービスを軸としたトータルソリューションに一番の力点を置いています。1999年6月に国際通信事業者の国際デジタル通信からケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)グループの一員となり新たにスタートした当初は、個人のお客様への国際電話サービスが事業の中心でしたから、3年弱で当社のビジネスは大きく変化したといえます。

――数字の面ではどう変化していますか。

カニンガム 3年前は売り上げの85%が電話、残り15%がIPおよびデータ通信で、顧客層では60%が個人でしたが、昨年度の実績では、50%がIPおよびデータ通信での収益となり、顧客も85%が法人となっています。この傾向は、当社の今後の事業展開を考えればますます強まるでしょう。

――昨年度の積極的な企業買収もフォーカス事業の強化策といえますね。

カニンガム ええ。まず、ISPのPSINetを買収したことで、サービス面の拡充もさることながら、日本国内の法人ユーザーが6000社以上となり、当社の顧客基盤が一気に拡大しました。米国のデータセンター市場で約30%のシェアを持ち日本にも進出しているエクソダスの買収は、国内ホスティング市場における当社のポジションを大きく引き上げることにつながりました。また、デジタルアイランドを傘下に収めたことで、コンテンツ配信という新しい事業分野を手に入れることができました。

光サービスで安価・柔軟なメニュー

――具体的なビジネスについて、まずネットワークサービスの面から教えて下さい。

カニンガム 当社が戦略商品として最も注力しているのが、昨年12月に都内千代田区・品川区、横浜市神奈川区でスタートした「CAN(Customer Access Network)」サービスです。これは、自前の光ファイバーリングにお客様のオフィスビルを直収するメトロエリアネットワーク(MAN)サービスで、高速専用線や高速イーサネット接続、高速インターネット接続、さらに電話(CANストレート)サービスも提供しています。
 特徴としては、安価なサービス料金があげられます。例えば、東京-大阪間のイーサネットサービスでは、大手競合と比較して10Mbpsメニューで半額程度、50Mbpsで約3分の1の月額料金を実現しています。もちろん、安くてもサービス品質が落ちるということは決してありません。
 また、きめ細かな帯域設定により、お客様が本当に求めているものを提供できるという柔軟性もポイントの1つで、高速イーサネットサービスでは、2Mbps〜10Mbpsまで2Mbps刻み、10Mbps〜100Mbpsまでは10Mbps刻みで帯域品目を揃えています。

――これまでの実績はいかがですか。

カニンガム 平均すると月20件ほどの契約を獲得できており、そのペースも加速してきています。また、お客様の利用形態をみると、 2〜3カ所のオフィスで契約するという方が多いのですが、100カ所程度をつなぎたいという大規模ネットワークでの導入案件も出てきています。

――今後のサービス拡張については、どのような計画を立てていますか。

カニンガム サービスエリアということでは、すでに現在都内と横浜の主要ビジネス街に構築している光リングと当社のバックボーンを相互接続することで、CANのイーサネットや高速専用線を利用されているお客様の接続対地をCANサービスエリア外の大阪および横浜地区に広げていますが、光リング網そのものの拡充も進めています。その計画は2段階になっており、今年9月までの第1段階では都内12区・神奈川3区までエリア拡充を図ります。そして、第2段階では大阪・名古屋でも光リングを整備していきます。目標の目安となる数字としては、第1段階で約400のビルを接続可能に、第2段階ではこれを約1000まで押し上げます。
 一方、サービス内容の拡充という点では、IP接続と音声通信を1本のイーサネットに集約するサービスを提供していきます。

――そうなると、VoIPによるサービス展開も考えられると思いますが、御社ではどのように取り組んでいくのですか。

カニンガム VoIPは安価な通話料金が魅力の1つにあげられていますが、当社では従来からの回線交換技術を使い、「CANストレート」や「0061」の市外電話サービスで十分に競争力のある料金を実現しています。
 むしろ通信事業者にとって重要なのは、IPということよりも、“ボイス=電話”であるということで、総務省が取り組んでいるように、VoIPも電話として一定品質を維持していく必要があるということです。
 当社も今後、技術が進化し品質が向上すればVoIPをサービスに組み込んでいこうという考えはありますが、お客様にとってはあくまで“電話”、新しいサービスではないということを念頭に置かなければならないと思っています。

iDCサービスを積み上げ式で提供

――もう1つの主力サービスであるデータセンター事業はいかがですか。

カニンガム 当社は97年からデータセンター事業をスタートしており、昨年6月にはアジア地域におけるC&WグループのWebホスティングサービスの中心となる「東京インターネットソリューションセンター」もオープンしました。現在は、エクソダスが保有していた施設も含めて国内に8カ所、総床面積4万uを確保しています。
 スペース面もさることながら、データセンターではサービス品質、特にセキュリティが大きなポイントとなります。その点でも、私どもはシステム的な要素だけでなく人員的にも万全の体制を確立しています。具体的には、国内に200名以上の認定資格を持った技術スタッフを配置するとともに、米国のエクソダスにはセキュリティの専門家が約300名おり、日常の監視から問題発生時まで彼らが迅速な対応を行っています。

――サービスメニューという点では、どのような戦略を立てていますか。

カニンガム 基本的には、お客様にトータルソリューションを提供するという方向でサービス強化を進めています。具体的には、「マネージド・ホスティング」の展開になります。これは、ハウジング/ホスティングやサーバーコネクションよりも上位の付加価値メニューとして、マネージド・サーバーをプラットホームにロードバランシング、ファイアウォール、レイヤ2ルーター/スイッチのレンタルといったハードウエアの提供、さらにパートナー企業と連携してサーバーモニタリング、Webレポート、ストレージ、ウィルスチェック、ECツール等々を組み合わせていきます。
 私どもでは、こうした個々のサービスメニューをビルディングブロック方式で提供します。すなわち、各々の提供条件を含めて明確に定義することで、お客様にサービス内容と価格を検討しながら必要なサービスを選択していただけるようにしています。これまでトータルソリューションというと、詳細な項目なしに「総額でいくら」というようなコスト提示がなされていましたが、私どもではそうした構造を見直し、お客様志向のソリューション体系を用意したことがセールスポイントの1つといえます。

――グローバルな通信事業者として、ネットワークサービスも併せて提供できる点も大きな強みといえますね。

カニンガム そうですね。C&Wグループ全体では世界に50〜60カ所のデータセンター施設がありますが、それらはすべて自社のバックボーンネットワークで接続しています。これによって、例えば東京インターネットソリューションセンターを利用しているお客様が、海外のセンターとつないでリアルタイムにバックアップデータを取るということも容易に実現できます。実際、当社のホスティングサービスを利用していただければ、ネットワーク上の中継時間が非常に短いことを実感できます。

――データセンター市場は供給過剰との見方もありますが、現在の需要動向はいかがですか。

カニンガム 昨年は米国の同時多発テロ以降、契約を先送りするお客様が多くありましたが、今年2月ごろから実需が回復してきています。お客様の利用目的としては、かつてはドットコム系の企業が多かったのですが、最近は金融系や大手企業のイントラネットでデータセンターを利用するケースも増えています。また、私どもでは携帯電話市場の活発な動きが事業を押し上げる大きな要因となっています。例えば、NTTドコモとKDDI向けの着メロ配信サービスを行っているヤマハが、私どものホスティングサービスを利用しています。

財務状況も顧客の評価ポイントに

――昨今の通信事業者は、世界的に相当厳しい状況にあります。C&Wグループも、英国で発表された2002年3月期決算(51億2300万ポンドのマイナス)をみると例外ではないように思います。御社としてはこの局面をどう捉え、どのように乗り切っていきますか。

カニンガム 通信業界における世界的な不振は、事業者側の過剰な設備投資に需要が伴わなかったことが一番の要因だと思います。この苦境は、おそらくあと半年から1年は続くでしょう。
 ただ、私どものグループについていえば、確かに昨年度の収支はマイナスでしたが、むしろ総資産50億ポンドに対しネットキャッシュが約26億ポンドであるという点に目を向けてほしいと思います。通信事業者の中で、総資産から借入額を引いた額がプラスになるのはそう多くありません。
 実はお客様、とりわけ大手企業との商談においては、このところサービス内容だけでなく、企業としての財務状況が問われるようになってきているのです。つまり、業界全体が厳しい環境にある中で、私どもは財務面の強みを他社との差別化要素にできるというわけです。
 では、C&W IDCのビジネス環境はどうかというと、日本はブロードバンドの普及に向けた政府の前向きな取り組みもあって、他の地域にはない大きなチャンスが訪れているといえます。ですから、当社もこの追い風に乗って、サービス強化を積極的に推し進めていけば、さらに発展を遂げられると考えています。

(聞き手・大谷聖治)

用語解説

CANサービスのメニュー
●インターネット接続サービス
1.5Mbps専用線を利用する「1.5Mスタンダード・メトロ」(月額18万円)と、2Mbps(月額20万円)〜100Mbps(同380万円)で14品目を揃えた「イーサビジネス・メトロ」を用意

●高速イーサネットサービス
VLANによるセキュリティを確保したレイヤ2イーサネットサービス
(1)都市内サービス:ユーザー拠点をCANに直接収容。2Mbps〜100Mbpsで14品目および同社iDC間通信向けの1Gbpsを用意。月額料金は最低1年利用の場合、2Mbps・6万円〜100Mbps・12万5000円、1Gbpsは48万円
(2)都市間接続型サービス:神奈川、大阪の拠点を他事業者回線経由で収容。2Mbps〜100Mbpsで14品目。月額利用料金は、ネットワーク接続料が2Mbps・28万円〜100Mbps・171万円(1ネットワーク接続ごと)、拠点接続料が神奈川14万5000円・大阪17万5000円(1拠点ごと)

●高速専用線サービス
1.5Mbps、2Mbps、45Mbps、150Mbpsで各種インターフェースを提供。月額料金は最低1年利用の場合、1.5Mbpsが6万6000円、2Mbpsが12万6000円、45Mbpsが31万7000円、150MbpsはNTUありで61万7000円・NTUなしで49万2000円

●ボイスサービス「ストレート」
CANとユーザー拠点を直接結び、市内・市外・国際電話および国内/国際ISDNデータ通信を提供。月額費用は回線使用料・回線接続装置使用料・配線使用料で計4万5000円
(1)CANストレート相互間通話:市内3分4円、市外3分8円(全国一律)
(2)一般回線への通話:市内3分5.5円、市外は30秒課金で距離別の「標準プラン」、全国一律の「1分5円プラン」、全国一律の「3分12円プラン」の3タイプを用意
(3)国際電話サービス:6秒課金で、米国2.4円(3分で72円)、英国5円(同150円)他
 

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