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2003年4月号
フュージョン・コミュニケーションズ 代表取締役社長 角田忠久氏
IP電話の機軸はセントレックス
法人向けで加入者の5割を取る
大手キャリア・ISPが一気になだれ込んできたIP電話市場。
しかし、VoIPでは“古豪”といえる
フュージョンの角田忠久社長は動じない。
「2年間の経験を生かし、法人向けで先手を取り続ける」
と自信を漲らせる。
Profile
角田忠久(すみだ・ただひさ)氏
1963年九州大学工学部卒業、日本電信電話公社入社。92年NTT理事・本社ネットワーク高度化推進本部推進部長。94年日本高速通信顧問、常務取締役、専務取締役。98年KDDとの合併により同社常務取締役。99年クロスウェイブ・コミュニケーションズ取締役副社長。2000年5月フュージョン・コミュニケーションズ代表取締役社長に就任、現在にいたる
1940年佐賀県生まれ
昨年10月に050番号を使ったIP電話サービス「FUSION IP-Phone」を発表し、BIGLOBEとの提携でISPへのサービス供給でも業界に先鞭を付けましたが、その後競合他社の猛攻が際立ちました。御社の戦略に影響はありませんでしたか。
角田
基本的な戦略については発表当時から何ら変わっていません。ビジネスとしてやっていくためにはある程度の顧客ベースを獲得する必要がありますから、これまでブロードバンドアクセスを提供してこなかった当社は、卸のような形でFUSION IP-Phoneを他の事業者に使ってもらおうという戦略を打ち出しました。現時点での結果としては、一定の実績を獲得できていると思っています。BIGLOBEとの提携に続いて、CATV事業者向けビジネスでBBX、地域ISP向けではNPO法人の地域間高速ネットワーク機構(IXO)と、パートナー作りは着実に進んでいます。また、自社ブランドでのIP電話サービスに関しても、本サービス開始が若干遅れていますが、100%子会社のフュージョン・ネットワークサービスがエクソダス コミュニケーションズから2月1日付けで譲り受けたGOL(グローバルオンライン)事業を基盤として、4月中にはスタートさせる計画です。
それに、サービスを選ぶのはお客様ですから、本当の勝負はこれからで、その結果が出るのは半年から1年先くらいになると思っています。
この間の競合他社の動きについてはどう見ていますか。
角田
大手ISP各社ができるだけ大きな連合体を形成しようと動いたことと、従来からの電話サービス事業者が積極的に乗り出してきたことは、確かに予想外だったといえます。もちろん、その背景には、Yahoo!BBの凄まじい攻勢があるわけですが、そもそもはブロードバンド化を加速させるためのIP電話というものが、今はIP電話を売るためにブロードバンドを推すというような感じにも見えます。私自身は、当面のブロードバンドアプリケーションとして本当に使われるのはIP電話だと考えていましたが、業界内でも同様の認識が相当高まったということでしょう。
今後、大手ISPへのサービス供給という線はどうですか。
角田
各社がひと通りお付き合いする先を決めてしまった状況で当社にもチャンスがあるかどうかは、正直なところ何とも言えません。この先1年くらいの間で、ISP各社がどう判断するか、お客様が何を望まれるかといったことに左右されるでしょう。ただ、今の段階で当社から積極的に「使ってください」とお願いすることはないと思っています。
ISP側は、上位ネットワークである一種事業者同士でIP電話の相互接続を進めてほしいという要望を強く持っています。御社はどのような姿勢で臨んでいますか。
角田
他事業者と「相互接続しよう」という話も多少していますが、具体的なスケジュールを詰めるまでにはいたっていません。その前にまず、当社のネットワークの中で端末の接続検証も含めてサービスを軌道に乗せる必要があります。そうはいっても、これも1年くらいの間に相互接続への取り組みは進んでいくと思います。
ただ、技術的に見るとプロトコルの仕様がきちんと固まっていない状況で、各社が作ったネットワークをつないでいくのは、そう簡単ではないと思います。さらには、アドレス・番号の受け渡しをどうするか、料金精算はどうするのかといったことも決めていかなければなりません。この問題を解決する1つの方法としては、各社のIPネットワーク接続を統括する「築地市場」のようなものを作る手段も考えられます。米国の国際通話網ではこうしたマーケットが立ち上がっているのですが、各事業者はそこへ自社のIPネットワークをつなぎ込んで料金決済を行うという形態です。
VoIPビジネスでは“ベテラン”
法人市場向けのIP電話に目を向けると、東京ガスへのIPセントレックスサービス提供が相当な話題を呼んでいますね。
角田
そのようですね。当社は、既存の中継系サービスも含めて、法人市場への展開を重視しています。そうした中で、IP電話の可能性としてIPセントレックスの開発に尽力してきたのですが、導入実績を上げ世に広めていかないと意味がないと考えていました。そんな時に、NTTデータから「コンペに一緒に参加しよう」と誘われたので、幸運だったなと思っています。
IPセントレックスはネットワークの中にバーチャルな巨大PBXを持つイメージで、網側で多彩なサービスを提供するので、お客様の負担は大幅に軽減されます。特に、国内に多数の拠点を持つ企業は非常に大きな導入メリットがあります。そうした企業の多くは経済性という観点から、今後4〜5年の間にIPセントレックスへと移行していくと見ています。
商用化も含めた今後の展開は。
角田
まず、ベーシックなIP電話が市民権を得るのは、NTT側の網整備が終わり一般電話からの着信が可能になる今夏以降と見ています。IPセントレックスも、そうしたタイミングをきちんと見計らったうえで本格展開を考えていきます。もちろん、現在でもお客様からいろいろと引き合いをいただいており、SIなどパートナー企業の力を借りて個別に対応しています。
販売についてはどのようなチャネルを考えていますか。
角田
1つは、商用サービスに向けて進めてきた機器の接続検証に参加してくれたメーカー各社のチャネルを優先したいと思っていますし、情報系SIの方から「音声を統合したい」ということで声がかかることも多いので、重要なパートナーだと認識しています。一方で、日本においては企業ユーザーの中に古くからの付き合いを尊重する習慣がありますから、機器メーカー各社との連携も深めていく必要があります。
また、アプリケーション分野での展開としては、マルチベンダー戦略を標榜しており、当初からオープン指向ということでAPIを公開していますし、提携先のソフトフロントからも開発ツールを提供してもらっています。これらを使って、多くのソフトベンダーが当社のIP電話と連携するアプリケーションをどんどん開発してくれればと思っています。
IPセントレックスも含め、今後企業向けのIP電話サービスでも競争が激しくなっていくと思います。御社の差別化ポイントは何になりますか。
角田
当社は全国規模のIP網を持ち、中継系ですでに2年間IP電話サービスを提供してきた実績があります。VoIPではベテランの域に達しているといってよいでしょう。この経験は非常に大きなアドバンテージだと思っています
また当社のIPセントレックスは、高品質なうえにコスト競争力もありますから、今後は実際のインテグレーションノウハウも蓄積することで、市場での優位性をより高めていきたいと考えています。
IPセントレックスのインパクトは、反面でPBXやビジネスホンなどの機器市場に与えるダメージが懸念されています。
角田
確かに衝撃は大きいでしょう。しかし、IPセントレックスは日本に閉じたビジネスとは限りません。ネットワークサービスは世界規模で提供できるわけですし、その先には何らかの端末が必ずつながり、インテグレーションという作業も必要になります。日本はIP電話・IPセントレックスで世界をリードしているわけですから、グローバルな視点でビジネスを考えてもいいと思います。
ただ、国内市場でシステム販売や工事・保守を生業とするディーラー/SIは苦境に立たされることになりそうですが。
角田
電話という世界で考えれば、IP化によって売り上げ減を余儀なくされるのは間違いありませんが、今後のビジネスがそれだけで終わるものではないのも事実です。例えば、映像も付けてテレビ電話、テレビ会議サービスが出てくれば、そのシステム構築が必要となりますし、PCやWeb、業務アプリケーションとの連携といった付加価値化を進めることで新しいマーケットが生まれます。通信の世界においてIP化はもはや止められない歴史の流れなのですから、今までの収入が減ると考えるよりは新しいビジネスが広がるという期待に目を向けるべきです。
まずは50万、3年後にシェア2割
10月のサービス発表時に、今後の市場見通しとシェア目標として、2005年度にブロードバンド加入者を2000万と見て半数の1000万がIP電話を利用し、そのうちの200万加入を獲得したいと話しておられました。目標達成の見通しについて教えて下さい。
角田
市場全体の1000万という数字は見えてきたと思います。他社の動向を言うのも何ですが、Yahoo!BBのBBフォンだけで500万加入くらいは行きそうな気がします。
では、当社の200万加入はどうかというと、「そうありたい」という目標であって、実現できるかどうかはこれから当社のサービスがどう広がっていくかにかかっています。当社自身は企業向け、中でもセントレックスに力点を置いていく考えですから、加入者数という目標にはあまり貢献できない戦略といえます。ただし、パートナー事業者の協力で個人向けの実績が伸びれば、手の届く数字だと思います。
実は、この目標は「市場でもっと存在感を出したい」という想いがあって、「そのためには2桁シェアはほしい」ということから打ち立てたものでもあります。
現在、中継系のIP電話サービスが約230万加入で3%を若干上回るシェアとなっています。これを2003年度末までに累計300万加入にし、シェア5%レベルの維持を目指します。もちろん、開業3年目の力点は加入者系IP電話にかなりシフトさせていきますが、中継系サービスは当社が生きるための事業基盤ですから、何としても達成したいと考えています。
しかしながら、旧来からある市場でそれ以上の実績を望むのはやはり厳しいと思っています。ならば、当社の強みも生かせるIP電話分野の新しい市場で、存在感のあるシェアを取っていこうと考えたわけです。
2003年度末で見て、IP電話の加入者目標はどのくらいですか。
角田
当社のGOLサービスとパートナー経由での提供で、できれば50万加入は獲得したいですね。ただ、やはり個人向けのサービスというのはどうしても薄利多売の世界になってしまいますから、法人向けでひと味違ったサービスを揃えていきたいですし、加入者数でも個人と法人で半々の比率を保持できればと考えています。
(聞き手・大谷聖治)