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2003年5月号
三洋電機 専務執行役員 コンシューマ企業グループC.O.O 壽 英司氏
1x軸に海外展開を加速
W-CDMA先行投入で欧州にも
2002年度の三洋電機の携帯電話国内市場シェアが
2桁の大台に乗った。
壽英司コンシューマ企業グループC.O.Oは、
「ユーザーが望む商品をいち早く市場に投入したこと」
が最大の理由だという。
Profile
壽 英司(ことぶき・えいじ)氏
1964年三洋電機に入社、神戸営業所配属。94年情報通信事業本部パーソナル通信事業部長。99年執行役員。2001年に常務執行役員に就任し、マルチメディアカンパニー社長と三洋テレコミュニケーションズ代表取締役を兼務。03年4月1日付けで専務執行役員・コンシューマ企業グループC.O.Oに就任
三洋電機の携帯電話の販売実績がかなり伸びているようですね。
壽
おかげさまで、2001年度の当社の出荷台数は346万台、シェアでは8.4%だったのですが、昨年度の出荷台数は410万台になりましたから、おそらくシェアは10.4%程度で、2桁に乗ると思います。今年度はぜひ450万台を達成したいと考えています。2003年度の市場全体の出荷台数は4200万台程度になるはずですから、シェアは11%程度とれると思います。
好調の要因はどこにあったのでしょう。
壽
やはり、お客様の望む商品を他社に先んじて提供できたことにあると思います。私は常々、商品企画担当者やデザイナーに「ヒット商品の残像を追うのはやめろ」といっているのです。なぜならお客様は常に動いているからです。数年前、主流だったスタンダードタイプはiモードの登場を機に2つ折りタイプに取って代わられました。2つ折りタイプにしてもたまたま時代に合ったというだけで、いつまでも売れるというものではないでしょう。
メーカーはCS(顧客満足度)が重要だといいながら、自社の技術や勝手なデザインやコンセプトをユーザーに押しつけている傾向があると思います。私どもはお客様の動きを絶えず見ていて、それをできるだけ早く形にすることを考えるようにしています。日本のマーケットではそのために、事業者に対し魅力ある商品提案をしていくことになるわけです。
御社はNTTドコモには端末を納入していません。それで2桁シェアというのは、すごいですね。
壽
逆にそれがよかったのだと思います。
私どもは、NTTドコモと取引がありませんから、一番よい商品をKDDIやJ-フォンに持っていきます。すると当然、さまざまな面で大事にしていただけるようになる。多少思い切った商品提案にも耳を傾けていただけるようにもなります。
もちろん、最初のうちは私どもにそれほど実力があったわけではありませんが、そのうちに実力もついてきた。するとこうした積み重ねが生きてくるようになります。
事業者のほうでもJ-フォンは写メールを機に大きく業績を伸ばされましたし、KDDIも1x以降、ユーザーの評判が非常に高まっています。当社の実績が伸びているのは、その相乗効果でもあるのです。
KDDIが社運を賭けて導入したcdmaOneにも当初から積極的に取り組んでこられました。確か日本の端末メーカーでは初めてクアルコムとCDMA技術のライセンス契約を結んだのも三洋電機だったと思いますが。
壽
それには、PDCと異なりcdmaOneは世界標準ですから、今後の世界展開にも不可欠という判断もあったのです。
KDDI向けには「世界ケータイ」のような新しい取り組みも積極的に行ってきました。実は1x端末も2001年秋に当社が先行発売する予定でした。米国に人を送ってクアルコムならびに基地局メーカーのモトローラと一緒に開発を進めていたのですが、発売が数回延期になり、気がついたら4月に他社と同時発売になってしまった。半年前に開発が終わっている商品ですから、スペック的にはもはや“旧商品”になってしまった。結果的には、カメラ付きを出されたカシオ計算機の端末に人気が集まって、一時は苦戦しましたが、A3015SAやA1032SAの投入で、強みが戻ってきた感じです。
J-フォン向けでは、シャープとほぼ同時期に他社に先がけてカメラ付きを発売されていたと思います。1xの一号機にカメラを載せることは考えなかったのですか。
壽
提案はしたのですが、当時は採用していただけませんでした。その時点ではJ-フォン以外の携帯電話事業者は「あんなものは売れるはずはない」と考えていらっしゃったのだと思います。KDDIは携帯電話に外付けするカメラを持っていらっしゃったので取り組みにくかったのでしょう。
ただ、ヒットすると分かったら、すぐに戦略を転換するのが日本のキャリアの強いところです。全キャリアが一斉に取り組んだことで、今度はカメラが不足してしまったわけですが……。
KDDIが今年秋に投入する1xEV-DOでも一号機を狙うわけですか。
壽
1xで一番乗りを狙って失敗しましたから、今回は状況を見ながら、お客様に喜ばれ、大量に売れる商品を作っていこうと思っています。
W-CDMAビジネスでも先行
J-フォン向けに、ドコモファミリーメーカー以外では初めてW-CDMA端末を納入されました。W-CDMAは技術的に相当難しく、莫大な開発投資がかかるといわれていましたから御社がこれほど早くW-CDMA端末に参入できたのは、正直意外でした。
壽
早い時期に製品化できた最大の理由はクアルコムのW-CDMA用チップを採用したことでしょう。このチップを携帯電話とした最初の端末なのです。W-CDMAで端末の開発で最もコストがかかるのが通信モジュールです。これを一から開発していたのでは、それこそ数千万台売らなければ開発費を回収できない。これでは当社のような企業はとても参入できません。クアルコムは、自社でCDMAの基本技術を持っていますから、比較的安価に開発されたようですし、チップを複数のメーカーに供給することで採算が取れるとみているのだと思います。よくクアルコムのチップは高いという方もいますが、売れなければチップの代金も、ライセンスフィーもいらないのですから、これは問題ではありません。もはや、端末メーカーがすべての技術を社内で持つという時代ではなくなってきているのではないでしょうか。
cdmaOne/1xと同様に、基本回路はクアルコムのベースバンドチップに任せて、アプリケーションやテレビ電話機能などの開発にリソースを集中できたわけですね。
壽
そうです。しかし、1x用と違ってW-CDMA用のチップは、まだ完成品といえる状態ではありませんから、お互いに助け合って一緒に作り上げていったというほうが正確だと思います。
早期に3Gを商品化したことで、海外のキャリアからからの引き合いもあるのではないですか。
壽
はい。すでにノキア、モトローラ、ノーテル、NECの基地局との間での相互接続試験が終わっていますので、こうした基地局メーカーの紹介で海外のキャリアからの商談をいただいていています。
スライド端末は欧州向けにも
3G端末といえば、一昨年から展示会などで度々有機ELディスプレー搭載の1x端末を参考出品されています。スライドタイプの斬新なボディと非常に鮮明で明るい画像が印象に残っていますが……。
壽
端末自体はもう完成していて、今テストをしているのですが、有機ELの寿命などまだクリアしなければならない課題が残っています。
コダックなどに向けて有機ELの本格供給をスタートさせていたと思いますが。
壽
用途によるのです。デジタルカメラの液晶は毎日使うわけではありませんから現行のもので十分実用になるのですが、携帯電話では液晶は比較にならないくらい頻繁に使われますし、温度条件も過酷なので輝度劣化が早く進んでしまいます。
携帯電話では、まだ実用化のメドが立たないのでしょうか。
壽
方法論はいくつかありますから、年内には何とかしたいと思っています。 またスライド式のボディは非常に評判がよいので、欧州向けのW-CDMA/GSMデュアル端末として商品化を進めています。これには有機ELディスプレーは使いません。
キャリア主導に変わる海外市場
海外展開にはどのように取り組んでいくのですか。
壽
海外展開は、もちろん積極的に進めていきます。主力はやはりCDMA(cdmaOneと1x)です。米国ではスプリントPCS向けに端末を納入していますし、中国では5月に4世代目の端末を投入します。これはカメラ付きでしかも安価なものですから、期待できると思っています。2月にタイでも初めて端末を発売しましたし、韓国SKテレコムにも納入しています。インドや中南米などCDMAを導入している国にはぜひ製品を納められるようにしていきたいと考えています。また、今お話したCDMAのほかに、GPRS端末も開発中ですから、欧州でのビジネスも期待できると期待しています。
現在、国内向けと海外向けの比率はどの程度になっているのでしょう。
壽
2002年度は、国内が410万台に対して海外は368万台です。まだ国内向けのほうが多いのですが、今年に入ってからは海外向けが上回っています。CDMAに限れば2002年度の国内出荷台数は210万台ですから、すでに海外向けが多くなっています。2003年度は800万台を予定していますから、完全に逆転すると思います。2004年は海外で1200万台程度売りたいと考えています。
世界市場でのシェア目標はどの程度に置いているのですか。
壽
まだ、世界シェアをうんぬんする段階ではありません。それより海外事業で確実に利益を出していくことが先です。当面の目標はスプリントPCSの端末納入シェアで2位になることです。中国連合通信向けではぜひ3番手をキープしたいと思っています。
海外市場ではノキアやモトローラなどの巨大メーカーが高いシェアを握っています。これを切り崩せるとお考えなのでしょうか。
壽
市場環境が変わりつつあるのですよ。海外市場、特にGSMでは携帯電話のエアインターフェースが共通だったので、端末もメーカー主導で開発して、キャリアとは独立したビジネスを展開してきました。
ところが、非音声通信では事業者ごとに異なった技術や仕様が採用されるようになってきて、日本と同様キャリアが端末開発を主導することが多くなってきました。特に米国ではこの傾向が強いですね。キャリアはユーザーの志向の変化に敏感ですから、メーカーにさまざまな要望を出すようになります。海外メーカーのビジネスは同じ商品を大量に販売して利益を出すというものでしたから、個別の事業者のニーズに対応できる体制はまだ作り切れていません。
対極にあるのが韓国のサムソンです。キャリアのどんな要望にも対応することで、今シェアを急速に伸ばしています。もちろんこの手法は日本メーカーが最も得意とするところです。当社も、スプリントPCS向けの端末開発のために現地に30名のスタッフを常駐させて、市場にニーズにあった商品開発に対応しています。十分成算はあると考えています。
(聞き手・土谷宜弘)