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2003年8月号

NTTコミュニケーションズ
取締役ブロードバンドIP事業部長
野村雅行氏
ブロードバンドを生かす
新しい収益創出に自信

ブロードバンド化の奔流の中で、
ネットワークとアプリケーションの拡充と
連携を進めるNTTコミュニケーションズ。
野村雅行取締役は「IP上での新しい収益の創出は可能」と強調する。

Profile

野村雅行(のむら・まさゆき)氏
1973年名古屋大学大学院卒業、電電公社入社。NTTPCコミュニケーションズ取締役・企画本部長、NTTマルチメディアネットワークサービス事業本部パケット通信事業部長を経て、2000年NTTコミュニケーションズ理事・ビジネスユーザ事業部統合IPサービス部長。2001年6月同取締役。2002年4月より現職。1949年生まれ。東京都出身

  まず、法人向けネットワーク市場の変化をどのように捉えられていますか。

野村 ブロードバンドサービスの普及に伴い、コンシューマーだけでなく企業でもADSLやFTTHを用いたネットワーク構築が急速に進んでいます。特に、従来ネットワークに接続されていなかった小規模拠点等が、これらのブロードバンドサービスを用いてイントラネットに組み込まれるようになっており、広帯域化の裾野は広がっています。
 また、ネットワークのブロードバンド化によって、アプリケーションもリッチコンテンツ化しています。VoIPはもちろん、映像ストリーミング、さらにはeラーニングやWebアプリケーションの本格活用が進んでいます。
 さらに、顧客とのビジネスもネットワーク上で盛んに行われるようになっています。これまでは製品カタログの表示等、一方向だけの配信だったものが、Webアプリケーションを用いた双方向的なコミュニケーションに変化しており、実際、多くの企業がWebを用いたeコマースを積極的に展開し売り上げ額も順調に伸びているようです。

  今やネットワークが企業のビジネスと経営の根幹を支えるインフラであることに疑問の余地はないですね。こうした中で、ネットワークに求められる要件はどのように変わっているのでしょうか。

野村 これまで以上に品質と信頼性、セキュリティの確保が求められるようになっています。常に良好なレスポンスが得られることに加え、システムダウンや回線障害に際しても迅速なリカバリーが行える仕組みがますます重視されるようになっています。そして、情報漏洩を防ぐためのセキュリティが確保されていることも重要です。これらの前提条件がクリアになったうえで初めて、さまざまなブロードバンドアプリケーションが安定して稼働できるようになるからです。

  ネットワークの信頼性・品質確保のために、御社ではどのような対策を講じていますか。

野村 日々増加するネットワークトラフィックに対応するため、常にネットワーク設備の拡張を行い輻輳や遅延が発生しないように努めています。例えばOCNのバックボーン網では、東京・大阪間の帯域を20Gbpsに増速するなどの高速化を行っており、ブロードバンド時代に対応した国内最大級のネットワークを構築しています。また、対外接続では商用IXで国内初の10Gbpsインターフェース対応のIXサービスである「JPNAP 10Gbpsインターフェースサービス」を先行導入し、4月から本格運用しています。
 また、障害発生時のリスク分散を実現するためネットワークおよび通信機器を二重化し、迂回ルートを確保することでネットワークのダウンを防ぐ仕組みを構築しています。

法人向けOCNでシェアNo.1実現

  ブロードバンドIP事業部が提供する法人向けIPネットワークサービスの概要と現状についてお聞かせください。

野村 ブロードバンドIP事業部では、大きく、(1)ビジネス向けOCNサービス、(2)広域イーサネットサービス「e-VLAN」、(3)企業向け・ISP向けVoIPネットワークサービス―を柱に事業を展開しています。
 はじめにビジネス向けOCNですが、やはり、固定IPを付与した「OCN ADSLアクセス」や「OCN 光アクセス」等、ADSLやFTTH回線を用いたブロードバンド型サービスの人気が高まっています。こうした追い風を受け、昨年からペースを落とすことなく導入実績を伸ばしており、現在では企業向けISPサービスではシェアNo.1を獲得していると自負しています。
 多くの企業が導入している理由は、迅速な故障対応をはじめ“何時でも安心して使える”という信頼性にあると思います。

  ビジネス向けOCNでは、付加価値サービスメニューの拡充も積極的に進められていますね。

野村 おっしゃる通り、顧客のニーズに応じてアウトソーシングやセキュリティ等、さまざなオプションメニューを提供しています。
 最近では、ホスティングサービスが順調に伸びています。小規模企業や小売店でWebを用いてeビジネスを展開したいというニーズが増えており、自らWebサーバーを立てて運用する必要がなく、手軽に構築できる利便性が受けています。
 また、新しいサービスとしては、6月下旬からブロードバンド対応コンテンツ配信サービス「Broadband CDN Powered by Akamai(パワード バイ アカマイ)」の提供を開始しました。
 これは、私どものネットワークと世界のCDN市場でトップシェアを持つアカマイの技術を融合した新たなコンテンツ配信サービスです。ブロードバンド回線の相互接続点にアカマイのコンテンツ配信サーバーを配置することで、国内のエンドユーザーに最も近いサーバーを介した高速のコンテンツ配信を可能とします。さらに、全世界で1万5000台以上のコンテンツ配信サーバーを展開するアカマイのCDNサービスとシームレスに接続することで、快適かつ高品質な配信環境の提供をワールドワイドに実現します。
 大容量コンテンツの配信だけでなく、eコマースやネット予約、キャンペーン等にも活用できます。これを利用することでユーザーはWebページのレスポンスの高速化だけでなく、設備や回線の増強にかかるコストも低減することが可能となります。

広域イーサでも付加機能拡充

  法人向けの回線サービスでは広域イーサネットサービスが昨年から急速に伸びています。2つめの柱となる「e-VLAN」の現状についてお聞かせください。

野村 広域イーサネットサービスは法人向け回線サービスのデファクトスタンダードになっており、私どものe-VLANも順調な伸びを示しています。  e-VLANでは、さまざまなアクセス回線をサポートしたネットワーク構築の柔軟性や拡張性に加え、信頼性の高さが強みになっています。サービス品質を遵守することを明文化したSLA(Service Level Agreement)を実現しています。

  e-VLANでは今後どのような機能拡張を進めていく計画ですか。

野村 1つはマルチキャストへの対応です。

 電子会議やeラーニング、製品カタログの配布等、多くの拠点に対して一斉にデータ配信を行いたいというニーズは増えており、ネットワークの効率的な活用を実現するため、マルチキャスト機能の実装を計画しています。
 また、利便性の向上という面で、ユーザーが自分のPCから帯域幅をコントロールできるようなオンデマンド型の管理サービスも提供していきたいと考えています。  これにより、トラフィックの混雑する特定の期日や時間帯だけ帯域を増やすというような、より柔軟なネットワーク活用が行えるようになります。

  もう1つの柱となるVoIPネットワークですが、まず法人向けVoIPサービスの現状はいかがですか。

野村 これも非常に伸びているサービスです。昨年に引き続き、VoIPは2003年度の重点サービスの一つであると考えています。私どもでは昨年11月より、企業向けIP電話サービス「.Phone IP Centrex(ドットフォン・アイピーセントレックス)」を提供しています。またISP/CATV事業者向けにNTTコムのVoIP基盤ネットワークを提供するプラットホームサービスも展開しています。

  企業のVoIPネットワーク構築では、従来の自営構築型に対して、アウトソーシングを用いるセントレックス型が登場しています。御社でもセントレックス型サービスとして、.Phone IP Centrexを提供していますが、今後、どちらが主流になっていくとお考えですか。

野村 企業のアウトソーシングニーズは非常に高く、セントレックス型に対する引き合いは増えています。しかし、すべての電話ネットワークを一挙にリプレースするという状況にはまだいたっていません。
 まずはデジタルPBXをVoIPバックボーンにつないで、セントレックス型でイントラネットを構築し、次にデジタルPBXの更改時にPBX機能をセントレックス型で代用したり、IP-PBXを導入する等、さまざまなバリエーションでシステムが構築されていくでしょう。VoIPのメリットは、音声通信とデータ通信を統合することで、お客様のトータルコストの削減と新しいビジネススタイルをご提案できることだと考えています。今後はさらに音声・データ統合のメリットを生かす付加価値を高めたソリューションをご提供していきます。

ネットワークとアプリ連携強化

  御社ではネットワークだけではなく、積極的にアプリケーションサービスも積極的に展開されていますが、2003年度はどのようなサービスを重点的に進めていくのでしょうか。

野村 ホスティングサービスとアプリケーションの提供を連携させた事業に力を入れていきたいと考えています。
 それが、米Verio社の技術を用いて専用サーバーよりも極めて低料金で、かつ共用サーバーよりもはるかに柔軟性が高い「仮想専用サーバー」を提供する「OCNホスティングVPSサービス」です。
 これはホスティングとともに、さまざまなアプリケーションやソリューションなどを中堅・中小企業向けに展開するもので、現在では、CRM、EC、eラーニング、Web、グループウェア等をはじめとした17のソリューションカテゴリー別に27社との提携を行っています。

  ブロードバンド時代では、いかに効率よく収益をあげていくかが多くの通信キャリアにとって課題になっています。御社ではどのような施策を進められていますか。

野村 確かに、利用者増に伴う設備投資が増えている一方、データ通信の回線料金は下がっています。また、従来の収益の主軸となっていた音声通話も減少を続けており、逆風が吹いているかのように見えていることは否めないでしょう。しかし新しいIP関連のサービスは着実に成長を遂げており、例えばOCNでは収益を確保できるようになっています。
 また、IT・アプリケーションサービスはまだまだ成長期であり、ブロードバンド化に伴い、従来ローカル側で処理していたものがネットワーク上で処理されるようになります。こうした動向を捉え、ブロードバンド回線とさまざまなIT・アプリケーションサービスを組み合わせて提供し、顧客のアウトソーシングニーズに対応していこうと考えています。
 回線提供以外の新しいアプリケーション・サービスを他社に先駆けて立ち上げ、それをネットワークと統合し国内外の顧客に提供していくことで、十分に収益の増加を実現できると考えています。
(聞き手・伊藤秀樹)
 

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