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2004年3月号
有線ブロードネットワークス 代表取締役社長
宇野康秀氏
光時代到来へ迷いはなかった
集合住宅営業に40年の強み
FTTHで先行する有線ブロードネットワークスは、
都市部に特化し、NTT東西に次ぐシェアを獲得した。
宇野康秀社長は、「効率の良いエリア展開と
垂直統合型サービスで市場での地位を固める」と明言する。
Profile
宇野康秀(うの・やすひで)氏
1963年生まれ、大阪府出身。88年、明治学院大学法学部法学科を卒業後、リクルートコスモスに入社。89年6月、インテリジェンスを設立し、代表取締役社長に就任。98年3月、サイバーエージェント取締役に就任。98年7月、有線ブロードネットワークス代表取締役社長に就任し、現在に至る。現在はサイバーエージェント取締役、インテリジェンス取締役会長、ユーズコミュニケーションズ代表取締役会長、ユーズ・ビーエムビーエンタテイメント取締役、ショウタイム取締役、楽天取締役を兼務
通信市場に参入して4年近くが経過しましたが、日本の通信業界の在り方についてはどう考えていますか。
宇野
大手通信事業者による完全なる独占市場で法規制に守られた業界というイメージを持っていましたし、事実そうでした。そうした競争のない状況を変えていくべきだという強い思いがあり、だからこそ、われわれが参入する意味があると思っていましたし、有線ブロードネットワークス(USEN)の参入をきっかけに自由化が進展すれば、とも思っていました。
幸いだったのは、ちょうどわれわれが参入した頃を境に、監督官庁の考え方も変わってきて、IT戦略会議の時期とも重なったこともあり、当初思っていたよりも障害は少なかったと実感しています。
その後新規参入も相次ぎ、通信業界はかなり自由に競争できる環境になりました。
宇野
ただ、少し過去に比べて逆振れし過ぎたようにも思います。ブロードバンドインフラは、将来の利益のために投資するもので、ある程度将来の利益が計算できる状況の中でこそ投資が可能になります。しかし現実はほとんど統制が利かない状態、つまり必要以上に過剰な価格競争が起こった時期がありました。今はある程度落ち着いてきましたが、やはり最低限の統制は必要なのかもしれません。
生活が変わるインフラを提供する
御社がサービス開始した頃はまだ、FTTHどころかADSLも一般化していませんでした。その時期にあえてFTTHでのサービス提供に踏み切った理由は何だったのですか。
宇野
CATV事業者が行っているように、われわれも既存事業の有線放送で使っている同軸ケーブルを広帯域化してサービスを提供するほうが投資コストは少なくて済みました。しかし、それでは実効速度で数Mbpsしか出ません。当時はそれでも十分な速度でしたが、すぐにより高速化を求められるようになるということは容易に想像できましたので、投資コストを回収する前にサービスが陳腐化してしまうことは間違いないと思いました。
他方でわれわれは、映像配信や遠隔医療等、ブロードバンドインフラでこそ実現でき、世の中や生活が変わるようなサービスを提供したいという思いを抱いていました。その時点で考え得る最高水準のもので、当面はそれ以上のものは出てこないインフラである光ファイバーを選んだわけです。
通信事業は大変な設備産業で、当時はまだFTTHサービスに火がつくかどうかは分かりませんでした。巨額投資への決断には勇気が必要だったと思います。
宇野
確かにその危惧はありましたが、それは時間軸の問題だと思っていました。3年くらいは火がつかないかもしれませんが、10年先を考えた場合、インターネットの常時接続が100Mbpsという高速かつ月額4000〜5000円という低料金で提供できるものに代わっていかないはずがありません。ですから、無駄になる投資ではないと考えました。
インフラまでを自前で引くFTTHキャリアは御社とNTT東西、電力系各社の3つのグループに分かれますが、御社の差別化ポイントはどこにあると考えていますか。
宇野
エリアに対する考え方とサービスモデルです。まず、エリアについては、NTT東西や電力系各社はそれぞれ電話と電力という生い立ちもあり、ユニバーサルサービスの提供を念頭に置いていますが、われわれはそういう縛りがない分、地域を選んだエリア展開ができます。ポイントはやはり、市場性が高く、効率の良い地域に展開するということで、「メトロポリタンアクセスキャリア」というコンセプトを掲げ、都市部に集中したエリア展開をしています。
サービスモデルは、他社はまずインフラありきですが、われわれは有線放送の時も電話線で音楽放送が配信できないので自社で同軸ケーブルを敷設したように、コンテンツなりサービスがまずあって、その配信手段として通信インフラを手掛けるという考えです。そうした違いからNTTと電力系はホールセール型のサービスで、当社は基本的にはインフラからISP、コンテンツまでを一体で提供する垂直統合型サービスとして明確に差別化を図っており、市場で一定のポジションを築くことができているのです。
この差別化が強みとなってライバルに対抗していく戦略なわけですね。
宇野
機関投資家の方からはよく「NTTや電力系に勝てるのですか」という質問を受けます。しかしこの市場では、独自性を保ち、一定のシェアを獲得することで事業として成立することが可能となるのです。
御社のターゲットは集合住宅が中心ですが、それもポジションを固める作戦の1つですか。
宇野
少し誤解があって、われわれは集合住宅をターゲットとしているのではなく、都市部に注力しているのです。都市部の居住形態の内6〜7割が集合住宅ですので、そこをやらずして都市部をやるということは有り得ないということなのです。
有線放送で培った強みを生かす
集合住宅向けはKDDIの参入や東京電力の専用メニュー開始などで、昨年後半から競争が激化してきましたが、先行するものとしてどう強みを発揮していきますか。
宇野
これは当社の歴史とも重なりますが、有線放送サービスは既存のビルや集合住宅へも入線・サービス提供しており、ビルの管理会社や集合住宅の管理組合との折衝や導入工事等の諸問題に対する長年の実績・ノウハウが蓄積されています。まさに、それをFTTH事業にも生かしていくということです。
先行という意味では、集合住宅は特に先行者利益があると思います。最近になって、大規模物件では複数キャリアの回線を引き込むケースが出てきましたが、中小規模物件では、設備の設置スペースの問題等で複数キャリアの設備導入は難しいのが実状です。また、ADSLからFTTHへの移行において他のキャリアへのブランドスイッチはあっても、同じサービスレベル、つまりFTTH同士ではほとんどありません。
われわれが先にお客様と接点を作ってしまえば、他社が後から来られても物件ごと他社サービスに移行することは考えにくいですし、仮に他社が新規にもう1本入線したとしても獲得できるのは数戸レベルで、後続キャリアのメリットはないに等しいでしょう。
関連しますが、NTTの敷設した光ファイバーを他社が借り受けてサービスが行える指定設備問題は、結論が先送りされているだけで、解決はしていません。自前の回線を敷設する一方、一部ではBフレッツ回線も借りている御社としてはこの問題をどう捉えていますか。
宇野
双方の論理が実感できるだけにコメントはしにくいのですが、もっとビジネスライクに考えられないものかと思っています。開放義務の議論は今後しばらく平行線のままかもしれませんが、結局、解決方法は価格ということになるのではないでしょうか。当社もビジネスとして適正な価格で借りてもらえるのであれば他社に貸し出すということも選択肢としては有り得ると思います。「投資コストを早く回収したい」「できるだけ安く借りたい」という双方の思惑がぶつかるところですが、業界としては時間をかけてでも議論を尽くし価格の最適化をしていくべきだと思います。
法人にはより高品質の回線を提供
昨年秋にKDDIが「KDDI光プラス」というインターネット接続とIP電話、放送を一体化したサービスを開始しました。御社も従来のインターネット接続とIP電話サービス「GATE CALL」に加え、スカイパーフェクト・コミュニケーションズと事業提携して放送サービスの準備を進めていますが、やはりこの3つが今後の個人向けサービスの基本になっていくのですか。
宇野
現状はその3つを揃えたサービスのほうがお客様には分かりやすいですし、しばらくこのトレンドは続くでしょう。
しかし、以前より思っていることなのですが、それだけではないようにも思います。今の3つのサービスは、あくまでもわれわれ提供する側が規定したものに過ぎません。お客様がより楽しいコンテンツや便利な利用方法を見つければ、自然とそちらを利用するでしょうから、われわれが思っているほど特定のサービスを使い続けてはくれないのではないかと考えています。大切なのは、お客様の本当のニーズは何なのかと常に耳を傾け、それに則したサービスをいかにして提供していくかなのではないでしょうか。
法人向けでは「BROAD-GATE 02」としてインターネットアクセスとIP電話等の付加サービスを提供していますが、実績は上がっていますか。
宇野
まだ数字的に大きくはありませんが順調に受注を積み重ねており、社内体制を整えている段階です。具体的には、昨年11月に提供エリアを東京、大阪の両都市圏から札幌、仙台、名古屋、福岡の4都市にも拡大し、併せて10月から各都市に法人向け営業グループを新設して営業体制を強化しました。
販売は一貫して直販が中心ですが、最近は代理店の募集も始めていますね。
宇野
当社の営業部隊は、有線放送時代からの長年の経験・ノウハウの蓄積を背景にお客様を開拓していますが、それだけでは不十分で、かつての新電電や現在のADSL事業者のように代理店を上手く活用することも重要だと思っています。われわれの直販部隊はお客様との折衝等で時間がかかるところを担当し、代理店さんにはそれ以外のところで拡販をお願いしたいと考えています。
法人向け営業は、単に回線のことだけでなく、企業ネットワークやシステムについても熟知しておく必要があります。
宇野
確かにそうですが、法人分野でのわれわれのターゲットはSOHOから中堅企業のお客様が中心で「とにかくいいインターネットアクセス回線が欲しい」というニーズが高く、今は高品質の回線を提供することをまず重視しています。
御社やソフトバンクBBは既存の電話キャリアとは異なる「ブロードバンド事業者」という新たなキャリアになると思いますが、どういうキャリア像を描いていますか。
宇野
お客様がキャリアを選択するパターンは2つあると思います。1つはキャリアのブランドイメージに基づき、お客様が自ら申し込まれるパターン。もう1つは地域や集合住宅で、あるキャリアのサービスに一括加入し、お客様自身は「うちのマンションにどこかのFTTHサービスが入ったらしいから、使ってみようか」というパターンです。われわれは後者の戦略、つまり極端にいえばUSENという名前が知られなくてもいいから、お客様自身が「気がついたら身近で使っていた」というキャリアでありたいと思っています。
(聞き手・土谷宜弘)