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2004年6月号

NEC
取締役常務
中村 勉 氏
携帯電話ビジネス構図が変化
海外は中国市場最優先する

NECのモバイル事業が好調だ。
特に海外向け端末の成長が著しい。
モバイル事業ラインの責任者である中村勉取締役常務は、
「堅調な国内に加え、今後は中国を中心とした
海外展開を積極的に進めたい」と語る。

Profile

中村 勉(なかむら・つとむ)氏
1948年6月12日生まれ。1971年3月大阪大学基礎工学部卒業。1971年4月NEC入社。1986年2月NECアメリカ出向。1997年4月モバイルコミュニケーション事業部長。2000年4月モバイルターミナル事業本部 副事業本部長。2000年7月NECネットワークス 執行役員兼 モバイルターミナル事業本部 事業本部長。2002年4月執行役員常務、NECネットワークス カンパニー副社長。2002年6月取締役常務、NECネットワークス カンパニー副社長。2003年4月取締役常務就任、現在に至る

  NECの2003年度決算では、モバイル事業の好調さが目立っていますね。

中村 端末は台数ベースで前年度比66%増、金額ベースではインフラを合わせ前年度比約30%増の約1兆円を売り上げることができました。
 国内シェアも20%以上を確保でき、おおむね計画値を達成できました。全社的にもモバイル事業を成長戦略の要の1つに位置付けておりまして、一層重視していきます。

  携帯電話市場のこの間の推移をどうみていますか。

中村 現在までのところ、日本市場、世界市場とも成長基調を維持しており、予測通り順調に推移しているといえるでしょう。ただ、1つ予測からずれが生じているのが第3世代(3G)携帯電話の普及です。世界的に見て半年から1年程度遅れ気味になっていると考えています。
 しかし、国内市場を見ますと飽和傾向が一段と明らかになってきたようです。昨年の国内端末出荷台数は5000万の大台に届く好調な結果となりましたが、これは3Gへの買い替え需要による「特需」的な側面があります。中期的なトレンドとしては減少傾向に転じることが予想されます。

ビジネスの構図が変わってきた

  これまで順調な成長を続けてきた国内マーケットでもいよいよ、市場の飽和が目前に迫ってきたということですか。

中村 そうです。ここで、注意しなくてはならないのは市場が成熟化するということは携帯電話販売を取り巻くビジネスの構図自体も変貌する可能性があることです。
 現在、日本では通信キャリアが端末価格に販売インセンティブを上乗せし、ユーザーが求めやすい価格で提供することで、買い替えサイクルを短期化し、新サービスに対応した機種の普及を促し、キャリアのARPU(Average Revenue Per Unit)を向上させるという好循環を生んでいます。そのモデルが、市場の成熟化が展するにつれ成り立たなくってしまうのです。いわゆる“1円端末”というものは影を潜めていきます。
 しかし、逆にその時こそがメーカーとしての責務が問われるではないでしょうか。エンドユーザーの購入意欲を刺激する価格帯で魅力ある製品をわれわれメーカーが提供できるかという点がマーケットの動向を左右する重要な要素となっていくことが考えられます。

  販売促進費としてキャリアが潤沢な資金を投入する時代は終わりを告げるのですね。

中村 まだ流動的な要素が残されています。諸外国を見渡すと、端末にインセンティブを付与するモデルを実施した国では、その枠組がなくなった後も価格が安く抑えられる傾向があります。キャリア間の競争によるところが多いようです。日本でもシェア動向によってはキャリア間の競争次第で、今後も端末インセンティブが継続する可能性も残されています。

  直近の国内状況を見ますと、各キャリアが定額制データ通信サービスを打ち出すなど競争が激化しているようです。

中村 NTTドコモのFOMAなどデータ通信に加え音声通信料金が安いプランも出てきました。このまま、価格面での競争が進めば固定網よりも低廉なコストで移動体通信が利用できるという環境もあり得るかもしれません。
 そういった状況下では固定系通信からのシフトが進み、モバイルの利用がさらに拡大する可能性すらあるでしょう。低廉な料金体系により間口が広がり、それに応じて利用形態が多様化すれば狭い意味でのAV的な使い方だけでなく、おのずと多種多様な活用形態が登場してきます。
 企業利用も同様です。使いやすい料金体系を受け、業務内容や業務の流れ、組織構造を分析、最適化するBPR(Business Process Reengineering)を達成するための武器にモバイルを徹底的に使おうという動きも出てきています。企業サイドで不安視するセキュリティの強化などいくつかの課題をクリアすれば、モバイルの企業利用は一気に進むと考えられます。

  市場の成熟化に伴って、メーカーとして打つ手にはどのようなものが考えられますか。

中村 成熟市場化の流れのなかで重要なポイントとなるのが、今後は移動体通信技術だけの殻に閉じこもってはいけないということです。携帯電話はオフィスや家庭といった領域にますます浸透していきます。
 それは、固定網、ブロードバンドの世界です。移動体通信とブロードバンド双方の技術を融合するソリューションが提供できなくては、商品展開が狭められてしまいます。

  複数の要素技術をまとめユーザーに提供するソリューションビジネスの重要性が増してくるわけですね。

中村 幸い私どもでは基礎技術のための研究センターを維持していますので、技術のバラエティ、フレキシビリティを有しています。そういう意味では他の携帯電話メーカーに比べ多様な商品展開が可能です。
 具体的には、各種業務・業種向けシステムと通信ネットワークの一体化を図った「IT・ネットワーク融合」を目指します。その際に必要となるコンピューター側のノウハウを有しているという点は、他の通信機メーカーと比べて私どもの強みになっています。

PC、家電との連携が重要に

  コンシューマー向けでもモバイルECやデジタル家電との連携など新たな動きが出てきました。

中村 コンシューマー市場では、音声機能のみのローエンドモデルと多機能を搭載したハイエンドに2極分化していくことが想定されます。後者については、無線LANやPC、地上波デジタル放送との連携などさまざまな技術アイデアをトライしている段階です。
 家電やPC、PDAなど「デジタルアプライアンス」製品にモバイル通信機能が浸透し、対象領域が大きくなってきます。「携帯電話」という範疇を超え、財布などパーソナルな機能を包含した「生活ツール」に変貌していくでしょう。

  ところで、世界市場でのモバイル事業においてどのような戦略を進めていますか。

中村 成熟しつつある国内市場に代わる成長エンジンとして、海外市場により注力します。GSM、W-CDMAをコアに積極展開していく戦略です。特にGSMについては、2003年を「再起元年」と定め、欧州向けのiモード端末など多数の製品を投入しました。その結果、2003年度の海外出荷台数は、前年度に比べ5倍の水準に成長しており、2004年度にはさらに倍増させたい考えです。

  その中で特に重視している市場はありますか。

中村 中国市場を最も優先すべき市場だと認識しています。中国のユーザーは、日本のユーザーと感性が近いと感じていまして、チャンスがあると捉えています。例えば、モバイル・マルチメディアについてのセンシティブさは世界随一といってよいほどで、SMS(Short Message Service)は老若男女問わずに徹底的に利用されています。

  今まで、日本企業が中国市場で成功するのは難しいといわれていましたが、NECとしての“秘策”はありますか。

中村 これまで、本当の意味で中国という市場の地場に根差すことができなかったという反省があります。国内の製品を右から左に持ってきただけではいけなかったのです。
 昨年末から投入しているモデルについては、中国オリエンテッドな商品デザイン、コンセプトで開発しています。例えば、カード型端末や手書き入力機能など、最先端の技術を惜しみなく生かした製品を投入します。
 上海を中心に立地している生産関連施設を用い、将来的には中国で人気の高かった製品をモディファイし、欧米の市場に投入するといった展開も考えられるかもしれません。
 中国市場での長期目標としては、売上規模を日本市場と同様の水準まで成長させることですね。しかし、これはなかなか難しいでしょうから、当面は国内市場の半分程度の売上に育てることが急務だと考えています。

欧州ではiモード端末中心に

  欧州ではiモード人気がじわじわと高まってきましたね。

中村 iモードはNTTドコモが中心になって、われわれメーカー、コンテンツプロバイダーが「WIN-WIN-WIN」となることができる日本発のビジネスモデル。これを世界に輸出できたことは意味がありました。
 NECとしましては、キャリア向けにiモードサーバーシステムの構築を行います。今まで、基地局を中心としたハードウェアビジネスだったものが、iモードサーバーなどによってソフトウェアビジネスにも踏みこむことができたことは、今後の展開からみても有意義だったと感じています。
 iモードが欧州に入ったことで、ボーダフォンライブ!などの人気も上がっており、2.5G、GPRS普及を後押しすることになりました。こういった高機能端末がユーザーに受け入れられてきたことは、日本の端末メーカーにとって追い風となってきたといえるでしょう。
 イギリスのハチソン3G向けのW-CDMA端末の受注も好調で累計600万台に及んでいます。今年度は他のキャリアでもW-CDMA移行が進むと考えられ、GSMに並ぶレベルに成長させたいですね。

  いよいよ世界市場に向け成長シナリオが具体的に描けてきた印象です。

中村 ここまでの道のりは平坦ではなかったですね。日本の移動体通信の歴史を振り返ると、試練の度に一回り大きく成長してきたと感じています。1985年ごろアナログ式の自動車電話での反ダンピング提訴を受け、部品の世界調達、現地生産という手法を学びました。GSMでは基本技術情報が入手できず苦労しましたが、W-CDMAではNTTドコモをはじめ標準化に積極的に関与し世界標準にし、国内メーカーがイニシアチブを得ることができました。

  今後激しくなる競争の中でどう戦っていきますか。

中村 世界シェアをみると、国内メーカーに比べノキアやサムソンなどが目立っていますが、そう悲観することはないです。チャンスを的確に捉え、自らが戦える土俵を選べば、十分勝機があるのではないでしょうか。
 当面、NECのモバイル事業においては、台数シェアのみを追わない戦略を掲げています。世界的にみてローエンド端末の市場はボリュームゾーンとなっていますが、ここには参入せずハイエンド、ミドルクラスの端末で勝負を掛けたいと考えています。マルチメディア対応市場で世界トップ3に入りたいという願いがいよいよ視野に入ってきたと思っています。
(聞き手・土谷宜弘)
 

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